当記事はnikkei BPnetに連載していたものを再編集して掲載しました。初出は2010年5月27日です。記事の内容は執筆時点の情報に基づいています。

 上司でも商談相手でもいい。苦手な人を思い出してほしい。

 威圧的、頭ごなし、不愉快そう、上から目線、極度の緊張を強いる――。

 相当特異なキャラクター。周囲の人も「え、あの人に会うの!? そりゃあご愁傷様」と、同情するふりをして、自分に災いが降りかからなかったことを密かに喜んだりするような人物。こういう人とはできれば一緒に仕事したくないし、顔も見たくない。とりわけ1対1でのやり取りなんぞ勘弁してほしい。しかし、そうもいかないのがビジネスだ。ではどうするか?

 守秘義務があるから具体的には言えないが、カウンセリングルームにはこういうタイプの人が結構お見えになる。こういう場合のカウンセラーの態度として、「好ましくないもの」としてよく挙げられるのは「なだめすかすこと」。人生の怒りをすべてぶつけてくるようなタイプの人に「まあまあ、そんなに、ムキにならず、落ち着きましょうよ」なんて言って「分かりました。そうですよね、今の言葉で目が覚めました」なんてケースはほぼ皆無だ。

 「怒りや、不満や、緊張といった感情に寄り添え」というのが模範解答だが、具体的にはみんな場数をこなすうちに、相手を受け入れながら怒りや不満の大元を一緒に探していく。そのプロセスの中で感情をほぐし、自分の中の「納得ポイント」にたどり着くお手伝いをする技を身につけていくしかない。

「エリカ様」ともガチで勝負して生還

 沢尻エリカの、新作映画発表試写会での「別に!」発言が話題になったのはもう何年前か?

 この時、舞台司会者が慌ててその場を取り繕おう、沢尻エリカをなだめすかそうと 「そうはおっしゃってもエリカさんはスタッフの皆さんに、手作りのクッキーを配ったりして気遣ったりされたんですよね(作り笑い)」みたいな、取材用リーフレットの撮影こぼれ話にあったような“美談”を持ち出し、何とか取りなそうと試みたのがかえって彼女のしゃくに障り、ふて腐れぶりに拍車がかかった。

 こういう事態は、対人関係を少しでも学んだ者なら予想がつくところだ。サービス精神のかけらもない沢尻エリカももちろん問題だが、事前に「そういう人」と知っていながら、無防備に臨んだ司会者も残念だ。じゃあ、司会者はどうすればよかったのか?

 そのヒントを、日本一のプロインタビュアー、吉田豪さんと私との会話から酌み取っていただきたい。

吉田:あの当時、僕は「事件直前に」沢尻エリカにインタビューした人物として、7つぐらいの新聞や雑誌にインタビューされました。まるで、戦地から無事に帰還した戦場カメラマン扱いですよ。「酷い目に遭ったでしょう、大丈夫でした?」なんて同情されたけど、酷い目に遭うのが面白いから取材したいんですよ。
 戦場カメラマンだって、戦地では弾丸が飛び交うこともあると知って行ってるわけでしょう。わざわざ危ないものを見に現場に行ってるのに、「あんな目に遭わされてひどい」と言わんばかりにあぜんとした女性司会者のほうが信じられない。

 司会者は、好きこのんで沢尻エリカの「ふて腐れ攻撃」のターゲットになろうとしたわけではないので、この点は同情する。しかし、沢尻エリカのこれまでの行状、何度も同じ映画のプロモーションで同じことを聞かれまくって、いつも以上にうんざりしていたこの日の状況を把握していれば、「このお仕事で、自分は沢尻から思わぬ弾丸をぶち込まれるかもしれない」ぐらいな心構えをしておくべきだったかもしれない。