当記事はnikkei BPnetに連載していたものを再編集して掲載しました。初出は2010年5月13日です。記事の内容は執筆時点の情報に基づいています。

 今、テレビでモテモテおじさんと言えば元NHK記者で「週刊こどもニュース」の「お父さん」だった、池上彰さん。

 お笑い芸人や、アイドル、ベテラン俳優など、かつての池上さんとはあまり接点のなかった、当代の人気者を生徒に見立て、知りたいけどややこしいニュースを「目から鱗」のように分かりやすく説明してしまう。

 「中東情勢」から「国際金融」「司法制度」など、およそ、ゴールデンタイムで話題にすることは「あり得なかった」ネタを俎上にあげ、しかも確実に2ケタの視聴率をとっている。

(写真:Kirill_M/PIXTA)
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 これは、ここ数年のテレビ界では特筆すべき「ビッグニュース」と言っていい。

 これまでもこの手の「授業もの」はあった。今でも人気のNHKの「ためしてガッテン」や、フジテレビ系で放映されていた「発掘!あるある大事典」はその類だ。しかし、それらは扱うネタが「ダイエット」「成人病予防」「老後資金」といった、誰でも身近で関心の高い「見れば直接生活に役立つ得する話」がほとんどだ。

 ところが池上さんの「そうだったのか! 池上彰の学べるニュース」(テレビ朝日系)では「検察審査会」「教科書改訂」など「地味」な話題を、「10秒に一回笑わせてくれないとチャンネルを変える、こらえ性のない人が見る時間帯」とも揶揄されるゴールデンタイムに、ひたすら講義するだけだ。

「説明の天才」、その秘密に迫る!

 番組ホームページでは「普段、気にもしていなかったニュースの本当の姿を知る」とある。「気にもしないで通り過ぎ、知らないまま一生をスゴしても何ら問題のないネタ」など、「ゴールデンでは扱ってはいけない代物」というのがかつての常識だ。その常識に挑戦状をたたきつけたのがこの番組だ。

 そんな乱暴な番組を成立させているのが、池上彰さんという類まれな「説明の天才」だ。ビジネスパーソンは彼のバラエティーでの話しぶりから、商談のコツ、プレゼンのスキルを学ぶべきであると思い、彼の“語り口”を以下に分析してみる。

 参考教材は、上で挙げた番組のスペシャルの一部「そうだったのか! 北朝鮮の核開発問題」。放送を見ながら、ノートに走り書きしたものをベースにフィクションを交えて、池上さんの「説明のスタイル」のすごさをよりリアルに伝えることに重きを置いた。

 池上さんの“説明”の3大特徴は「直接話法」の多用、と「擬人化」そして「受講生に質問させる技」である。北朝鮮が世界中から「やめろ!」と言われながらも、なぜ「核開発」を続けられるのか? についての池上さんの説明はこんな感じだ。

池上:「私の生まれた今から60年前、朝鮮戦争という戦争がありました。古いですねえ。その時北朝鮮は韓国を一気に攻め落とせる、と思いました。しかし、その後、アメリカが韓国に味方して、北の方に押し戻されたんですね。それ以来38度線という所で、北と南が分かれているわけなんです」

受講生・宮崎美子:「ああ、南北会談でニュースに出る板門店の所ですね」

池上:「その通り! さすが、クイズ女王! あれもう60年も前からなんですね(※受講生の『知っていること』を刺激し授業に巻き込むために、質問したくなる話を用意する)」