当記事はnikkei BPnetに連載していたものを再編集して掲載しました。初出は2008年7月10日です。記事の内容は執筆時点の情報に基づいています。

 NHK「ニュースウォッチ9」。2年前に始まったときの印象は、スタジオのセットもキャスター(柳澤秀夫解説委員と伊藤敏恵アナウンサー)の服装やしゃべり方も地味。ナレーションも「だ」「である」と古めかしく、「どうなんだろうなあ」と引いて見ていた。が、気がついたらすっかりファンになっていた。

(イラスト:freehandz/PIXTA)
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「前例」にはない自然な演出

 まず、「ニュースショウ」的な派手なCGやBGMを際立たせない演出が気に入った。そして、両キャスターのいかにもNHK的なあか抜けなさが、うまく誠実さにつながっていることも好ましいと感じた理由だ。

 しかし、私が特に「いいなあ」と思ったのは、いかにもNHK的でありそうで、実はまるでNHK的ではないキャスター2人のしゃべりにあった。

 かつてNHKのニュース番組で気になっていたのは、男女2人がキャスターとして登場する場合のやり取りが、お互のセリフをあらかじめ台本上で割り振っておく「わり台詞」のようになっていたことだ。

女性キャスター「この問題、大きな波紋を広げそうですね」

男性キャスター「はい、そうですね。関係者の今後の対応に注目が(なぜかこの「が」を上げる報道記者⾵イントネーション癖が出てしまう)集まりそうです」

女性キャスター「では、次です。(ここで笑顔を作る)上野動物園でマントヒヒの赤ちゃん誕生です」

(VTR流れる)

女性キャスター「かわいいですネ」(男性キャスターを見るが、男性はカメラ目線のまま)

男性キャスター「上野動物園では1985年春以来の23年ぶり。世界でも温暖化の影響もあってか(「あってか」なんてニュース原稿の常とう句を普段の会話に持ち込んでどうする!)珍しい誕生となりましたね(無理やりな笑顔をつくり、「あ、ここは目線を女⼦アナに向けるんだ!」と気づき女性キャスターに不⾃然に顔を向ける。表情までト書き通り)

 このように、2人の細部のコメントまであらかじめ台本にしておくやり方を「わり台詞スタイル」という。

 ニュースそのものはもちろん、コメントから表情まで、プロンプター(カメラにカンペが出るシステム)に書いてあるんじゃないだろうかと、疑いたくなるときもあった。ぎごちなさがリアリティーを打ち消してしまう。

 ところが、「柳澤・伊藤コンビ」は、実に自然にニュースを伝えた。笑ったり、怒ったりの大げさなパフォーマンスは⼀切なく、段取りにとらわれる様子もなく、ひたすら淡々と視聴者に向け「自分の言葉」で話しかけてきた。