当記事はnikkei BPnetに連載していたものを再編集して掲載しました。初出は2008年5月8日です。記事の内容は執筆時点の情報に基づいています。

 どの業界でもそうだが、放送芸能業界は特に「忙しい人物」に仕事が集中する。例えば、番組企画会議の中心話題は、いかに忙しい人物をブッキングするか。

プロデューサー(以下P):「最近、エド・はるみ出まくってるね」

放送作家:「ええ、数字持ってますから(出演場面で視聴率表の数字が上昇すること)」

P:「うちの番組にも呼べるか? 」

放送作家:「普通は無理ですが、おれ、事務所の担当とは10年来のダチ(親友)なんで、30分ぐらいなら何とか引っ張り出せると思います」

P:「収録は3時間回してるから、どこでもいいから突っ込んで。時間で飛び出しOKだから。海パンの小島、まだ忙しい? じゃあそれも押さえといて」

 この業界では「忙しい」ということが価値なのだ。「お宅の番組に出演するため、芸をみっちり鍛え上げてきました。スケジュールを空けてお待ちしています。よろしくお願いいたします」なんていう芸人のところには、間違っても誘いの電話は入らない。

 超忙しい一握りに仕事が集中するから、どの番組を見ても同じ顔が並ぶことになる。批判の声もあるが、寝る間もなく忙しく、局から局へ渡り歩いている人たちからは、画面を通じ「忙しい者が持つ独特のオーラ」が見える。話のやり取り、しぐさの一つひとつが輝いて、ぶっつけ本番の芸でも、やっつけの笑いでも、なぜかその旬な感じに巻き込まれ、腹を抱えて笑ってしまう。

「忙しい」ということは価値なのだ(写真:EKAKI/PIXTA)