しょうゆメーカーのキッコーマンが2018年11月1日、東京・有楽町に体験型レストラン「KIKKOMAN LIVE KITCHEN TOKYO(キッコーマン ライブキッチン東京)」をオープンした。有名料理人が開発したコース料理を目の前で調理し、その内容は即座に20カ国語に翻訳されて客席のタブレットに表示される。日本人だけでなく、訪日客にもライブ感を体験してもらうことが狙いだ。

2018年11月1日にオープンした「KIKKOMAN LIVE KITCHEN TOKYO」(東京都千代田区有楽町2-2-3 ヒューリックスクエア東京地下1階)。完全予約制で、レストランの営業時間は18:30~22:30。不定休。物販コーナー、カフェ&バーを併設している。席数は70

 コンセプトは「食文化の国際交流を体験できるレストラン」。メニューはコース料理1種類のみ。和食や洋食、中華などのジャンルを問わず、国内外で活躍する料理人2〜3人が共同で開発したコース料理を提供する。

 レストランは完全予約制だが、併設のカフェ&バーは予約不要。喫茶として利用できる他、17時からは同社が手掛ける国産ワイン「マンズワイン」や日本酒などの酒も提供する。入り口近くに設けた物販コーナーでは、一般販売していないもろみなどの限定商品も取り扱う。

和食をベースに、フレンチ、イタリアン、中華などを組み合わせたコース料理を約1カ月ごとに変更しながら提供する。価格は税込み1万〜1万5000円(ドリンク代は除く。別途サービス料10%がかかる)。11月1日から12月7日までは京都の老舗料亭「菊乃井」の村田吉弘氏、東京・四ツ谷のフランス料理店「オテル・ドゥ・ミクニ」の三國清三氏、中国料理店「Wakiya 一笑美茶樓・Turandot」の脇屋友詞氏が開発したコース料理を税込み1万2000円で提供

料理の実演内容をタブレットで翻訳

 ユニークなのは、コース1種類のみというメニュー構成だけではない。特設のキッチンステージで調理する料理人の話す内容を音声認識で20カ国語に翻訳し、リアルタイムで客席にあるタブレットに表示するという。日本人だけでなく、訪日客にもライブ感を体験してもらうことが狙いだ。そのために富士通のテキスト翻訳ソフト「LiveTalk」を採用。LiveTalkが国内の飲食店で導入されるのは初めてという。キッコーマンの堀切功章社長は「しょうゆは和食だけでなくどんな料理にも合うということを、日本の情報発信基地である東京・銀座から世界に伝えたい」と話す。

 同レストランのアドバイザーで、学校法人服部学園理事長の服部幸應氏は「訪日の目的の一つに『日本食の体験』を挙げる外国人は多く、すき焼きなどしょうゆと砂糖を組み合わせた料理も人気が高い。訪日外国人客にはこのレストランで体験したことを自国に持ち帰ってもらいたい」という。

左から、キッコーマンの堀切功章社長、「Wakiya 一笑美茶樓・Turandot」の脇屋友詞氏、「菊乃井」の村田吉弘氏、「オテル・ドゥ・ミクニ」の三國清三氏、学校法人服部学園理事長の服部幸應氏

「しょうゆの可能性を広げたい」

 現時点では営業期間を20年までとしているが、これは19年に開催されるラグビーワールドカップ日本大会、20年に開催される東京五輪による訪日客の増加を見据えてのこと。ただ、同レストランは訪日外国人客だけをターゲットにしているわけではない。好評であれば東京五輪終了後も運営を続ける予定だという。

 「このレストランを通じて、これまでキッコーマンが海外でやってきたことを国内外の人に体験してもらうのが狙い」と堀切社長。同社は約60年前に北米に進出。当時、米国でなじみの薄かったしょうゆの認知度を高めるため、しょうゆと肉の相性の良さを訴求。スーパーマーケットの店頭などで肉にしょうゆをかけて提供するなどのデモンストレーションを行った。「世界100カ国以上にしょうゆを輸出しているのはキッコーマンだけ」(堀切社長)というように、世界各国でキッコーマンはしょうゆの代名詞として知られている。今や同社の売り上げの約6割が海外だ。

 一方、日本国内では食の欧米化などに伴ってしょうゆの消費量は年々減少している。「米国ではステーキにもサラダにもしょうゆを使っているし、そうした食べ方は日本にも逆輸入されている。他にも、欧州ではチョコレートにしょうゆを入れるなど、世界各国で日本人があっと驚くようなしょうゆの使い方をしている。日本の人にもしょうゆの可能性をもっと知ってもらいたい」(堀切社長)。

 レストランを通じてさまざまな料理としょうゆの相性の良さを認知させ、利用シーンを広げることも狙いのようだ。

11月1日から提供されるコースの前菜。しょうゆの風味がはっきり感じられるものや、言われなければしょうゆを使っていることが分からないものまであり、バラエティーに富んだ構成だった

 レストランを直営することで、消費者と直接コミュニケーションが取れるというメリットもある。「客からの反応を商品開発に生かすこともあり得る。今までやったことがなかった体験型レストランという事業を通して、新しいニーズが掘り起こされることを期待している」(堀切社長)。

客席からは厨房も見渡せる

(文/樋口可奈子)