「鉄道好き」で知られるホリプロのマネジャー・南田裕介氏。当連載では南田氏の手ほどきを受けながら、アナウンサーの安田美香氏が鉄道のいろはについて学んでいく。今回は国内有数のジオラマ制作現場へ見学に行った。

 「安田さん、ジオラマバーで見た作品を制作した職人さんに会いに行こう」と南田氏に誘われ、訪れたのは東京・秋葉原にある制作スタジオ「ポポプロ」。全国に40店舗以上の鉄道模型販売店を展開するポポンデッタのグループ会社で、前回の記事(「銀座のバーで鉄道ジオラマ!? 職人技に圧倒される」)で紹介した、「バー銀座 ChouChou POPON(シュッシュポポン)」のジオラマを制作しています。「プロのジオラマ職人として食べている人は100人いない」(南田氏)といわれる厳しい世界ですが、ここには国内有数のジオラマ職人が在籍しています。

 ジオラマの制作は、発注内容に応じた設計図を作り、さらにイメージパースやCGを作成。この図面などを基に作業するという流れです。最初に行うのは、「レールの敷設」。実際の建設工事では地形造成が優先されますが、鉄道ジオラマでは鉄道建設を優先するとのこと。その後、それぞれの得意分野ごとにジオラマ職人が分業して山や川、トンネル、駅、踏切などの各パーツを作っていきます。 制作期間は畳1畳程度の小さいもので約1カ月、ミュージアムなど大きいものだと1年がかりになることもあるそう。

ポポプロの作品は2014年から2年連続で「鉄道模型コンテスト」の企業クラブコンテスト部門の最優秀賞を受賞(写真は2015年の受賞作品「ウチの近所(万世橋)」、受賞当時の社名はポポンデッタクラフト)
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営業マンから「趣味を極めて」転職

 今回私たちを案内してくれたのは、同社プロダクション本部 製造課 第一製作事業部の矢幅貴至チーフ。子どもの頃から鉄道が大好きで、鉄道ジオラマ制作のなかで最も重要とされるレールの敷設は必ず担当しているとのこと

 自らの作風を「こってりと背脂が乗った感じ」と表現する矢幅チーフ。確かに、従来の博物館のジオラマと比べると、矢幅チーフの作品ははっきりとした色使いとLEDを使った光と影のコントラストが特徴的。また、「デッドスペースに面白い仕掛けを作る」のも矢幅チーフが決めていること。鉄道模型を走行させるジオラマを作ると四隅や端がデッドスペースになってしまうことが多く、矢幅チーフはそのスペースにLED電球を置いて蛍のように光らせたり、街灯を点滅させたりしてジオラマに余白を作らないようにしているそう。

シュッシュポポンで南田氏が注目した「20世紀初頭のアメリカ東海岸の工業地帯」の端にも、矢幅チーフの手によって店舗から漏れる明かりという光の演出が
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 実は矢幅チーフの前職は医療衛生用品を扱う企業の営業。平日はほぼ定時で仕事が終わり、土日が休みだったため、オフは趣味のジオラマ作りに没頭。とある鉄道模型メーカーのコンテストで受賞したことをきっかけにジオラマ職人としてプロデビューしたそうです。「どこの芸術大学を出たのかとよく聞かれるが、ポポプロのジオラマ職人は独自に技術を磨き、趣味を極めてになった人ばかり」(矢幅チーフ)。