自分がもし死んだら、家族がもし亡くなったら、そのパソコンやスマホのデータ、ネット銀行やSNSのようなオンラインサービスのデータなど、残されたデジタル遺品はどうなってしまうのか? どんな備えをしておくべきなのか? そんな「デジタル終活」について、デジタル遺品研究会ルクシー代表理事の古田雄介氏が解説していく。

 この連載は「最近話題になっているデジタル遺品への備え方について解説してほしい」と声をかけてもらって始まった。確かに近ごろは「デジタル遺品」と口に出しても聞き返されることがあまりなくなったし、一般化してきたのを肌で感じるが、現在はまだ問題の入り口でしかないと思う。これから数年後には、デジタル遺品をとりまく環境はよりシビアになっているだろう。

 理由は3つある。

理由1 高齢者のデジタルツール活用がますます増える

 スマホやパソコンなどを扱うユーザーのボリュームゾーンは、10代後半から働き盛りの50代あたりとなる。60代以上の人の使用率も年々高まっているが、総務省の「通信利用動向調査」にある年代別のインターネット利用状況調査をみると、70代でのネット利用率は2017年時点で5割前後、80歳以上では2割前後にとどまっている。

 また、2017年版の「情報通信白書」によると、高齢者のスマホ使用率は10%で、タブレットは9%だそうだ。これは米国の同世代の使用率に比べて2分の1から3分の1になる。

年齢階層別のインターネット利用状況。総務省「通信利用動向調査」2010~2017年版のデータを基に作成した。
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 終活を考える年代とデジタル環境が、まだ深く重なり合っていないのが現在だ。実際、デジタル遺品研究会ルクシーに届く相談は、故人の年代が分かる範囲でいえば50代以前が大半となる。

 しかし、今後は高齢世代にも急速にデジタル環境は身近な物になっていくはずだ。いまの利用者が年を取るよりも早いペースで浸透していくだろう。

 たとえば、行政や地域包括支援センターなどはスマホ向けのアプリやネットでの情報発信に積極的に取り組んでいるし、お薬手帳も電子版が広まっている。加えて、血圧や脈拍といった日々の健康情報を蓄積する「PHR(パーソナル・ヘルス・レコード)」アプリの使用を推奨している病院や介護施設が全国にあり、急速に普及しつつあるのも大きい。健康情報をデータベース化すれば、専門家は異変に気づきやすくなるし、自分でも自分の体調を長期スパンで知ることができる。