さて、今回は、英語学習のプロフェッショナル、安河内哲也先生に「英語にまつわる素朴な疑問」を伺いました。どうしても、克服できなかったこと、日ごろからちょっと人に聞くのは恥ずかしいけど、「なんでだろう?」と思っている疑問のほか、日常的に簡単にトライできる練習法はないか、などをぶつけてみました。その回答には、勇気をもらえるばかりでなく、今日から実践できるノウハウも詰まっています。ぜひ参考にしてみてください。

安河内哲也(やすこうち てつや)。上智大学外国語学部英語学科卒。東進ハイスクール、東進ビジネススクール英語講師。通訳案内士。『英語は「体」で勉強しなさい!』(中経の文庫)他多数
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Q:長文が聞き取れないのはなぜ?

 「短い文章なら、聞き取れるのですが、長文になった途端、訳が分からなくなってしまいます。それはなぜでしょう?」(40代会社員男性)

A:まず、最初に言っておきたいことがあります。TOEIC満点の人でも、海外生活が長い人でも、実は相手の言っているすべてを理解できているわけではありません。第2回目(「英語が『聞き取れない』理由とその最短克服法」参照)でも言いましたが、英語が聞き取れない理由には2つの側面があります。

 一つは音声的側面で、そもそも音が聞き取れない。これに関しては自分の発音を正しい発音に直して、その音を耳に覚えさせることが鍵になります。ネイティブの正しい音を自分でも発音できるようになると、その音を耳が覚え、相手の会話も正しい音として認識できるようになります。耳を慣らすには、発音を正しくする、という方法が効果的。

 もう一つは意味的側面の問題。単語の意味が分からない、という場合です。そもそも知らない単語は理解のしようがないので、単語は覚えるしかありません。単語を覚えるには、英単語帳とにらめっこするのもいいですが、ゲーム的要素を取り入れて楽しみながら勉強するなら、「mikan」という無料アプリ(一部有料)などを使うのも手です。ネイティブの発音も聞けるし、簡単なテストもあり、なかなか楽しめます。もちろん、スマホに英和と和英辞書をダウンロードしておき、分からない単語に出合ったら、即その場で調べる習慣を身に付けるのは大事。

 また、音声的側面と意味的側面の両方がからむ場合もあります。それを克服するには、単語を覚えて、発音を直していけば解決します。

 単語を覚え、発音を矯正し、ある程度、聞こえるようになりました。でも、「長文が追いつかない」という場合は、別の観点から考える必要があります。その際に大事なのは、コンテキスト(文脈)から推測する能力を鍛えることです。映画やドラマ、実生活でも同様ですが、人は会話をしているとき、無意識に話している人がどういう立場の人間で、どういう目的で話しているのか、今、どこにいるのか、その人がどういう外見をしているのか、その人の置かれた状況はどういうものなのか、など、相手の背景を捉えながら、会話をしています。日本語でも同じです。このように、英語の文章だけに集中するのではなく、相手の背景をマクロ的に捉えて、前後の文脈から内容を推測していく。この作業がとても大事なんですね。

 たとえば、NYの書店のレジで、「Are you a member of ○○ bookstore?」とペラペラ~~~と早口で聞かれたら? 「え! 何言っているか分からない」となっても不思議ではありません。相手は毎日何百回も同じことを言っているので、猛烈な早口で話すはず。ネイティブでさえ、聞き取れない確率も高いのです。でも、レジで最初に聞かれるのがこの質問だな、と推測して、YesかNoと答えています。

 私たち自身もコンビニで、レジの人にペラペラ~と日本語で何かを聞かれて、え? と思うことありますよね。でも、一度経験すると、「○○カードはお持ちですか?」と言われているんだ、と学習することによって、聞き取れなくても答えることができるようになります。英語も同じ。相手が話す内容を推測して理解する、という作業はとても大きな意味があるのです。

 長文の場合もこの推測を利用します。全文の一言一句聞き取ろうとすると、集中力が続きません。そこで、大事なところが聞こえればいいと割り切り、相手が強調しているところや、話の筋などをつかみ取ることに意識を向けます。大量の文章から特定の情報を抜き出すスキャニングという拾い読みのテクニックを使うわけです。

 この練習には、8回目(「訓練から実践へ! 使える英語を身に付ける最後の極意」参照)でも紹介した、TOEICのリスニングテストが有効です。先に問題を読んでからリスニングに入り、問題の回答を探しながら聞く、という訓練です。これを続けると、どんな場面でも自然に相手の英語をスキャニングする力がつき、長文にも追いついていけるようになるはずです。

一言一句聞こうとせず、内容を推測することが聞き取り上手になるコツ(写真:123RF)
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