BS12トゥエルビで放送中の『ザ・カセットテープ・ミュージック』で、80年代歌謡曲の優れた論評をくり広げるマキタスポーツ氏とスージー鈴木氏が、同世代のビジネスパーソンに「歌う処方箋」を紹介するこの対談も、ついに今回が最終回。前回は、クイーンの『Somebody To Love』のなかで、フレディ・マーキュリーがピュアな思いを歌い上げることの中にこそ「希望」がある、とマキタ氏が熱弁した。後半は、スージー氏が名曲『ボーイズ・オン・ザ・ラン』に喚起される「オヤジ世代の永遠の少年性」の中に「希望」を見いだす。

マキタスポーツ(写真左):1970年山梨県生まれ。ミュージシャン、芸人、俳優。2012年、映画『苦役列車』の好演をきっかけに、役者として活躍の場を広げる。文筆家としても鋭い時評・分析を展開。著書『すべてのJ-POPはパクリである 現代ポップス論考』『越境芸人』『決定版 一億総ツッコミ時代』など
スージー鈴木(写真右):1966年大阪府生まれ。音楽評論家、昭和歌謡から最新ヒット曲まで邦楽を中心に幅広い領域で、音楽性と時代性を考察する。著書『イントロの法則80's 沢田研二から大滝詠一まで』『1984年の歌謡曲』『サザンオールスターズ1978-1985』など
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社会の荒波で少年の夢を忘れる

スージー鈴木(以下:スージー):私が「希望」というテーマでお薦めするのは、2000年代につくられた曲の中で、最もいい曲だと思っている馬場俊英の『ボーイズ・オン・ザ・ラン』(作詞・作曲:馬場俊英)ですね。

一同:(ぽかんとしている)

マキタスポーツ(以下:マキタ):ばばとしひで?

――知らないですね。

スージー:いろんな若者がスクールデイズを終えて、世に出ていって、十数年後、大人になった彼らが苦労しているっていう内容の曲です。

マキタ:ほぉ。

スージー:ある男は高校時代、野球をしていて、卒業後は社会の荒波にもまれる。

マキタ:ふぅん。

スージー:もう一人の男は「ゆうじ」という名前で、山梨から東京に出くるんです。

マキタ:それ、俺だよ。山梨で生まれて、地元の高校を卒業して、18歳で東京に出てきた槙田雄司(ゆうじ)だよ!

スージー:歌詞を読みますね。

〽 「これが最後のチャンス」と電話口でささやいて
  祐次は今年32歳 山梨に妻を残し 東京

マキタ:あっ、俺はカミさんと一緒に東京に住んでたから、ちょっと違うな。

スージー:続きを読みます。

〽 ワンルームのマンションから夜の甲州街道を見下ろして
 煙草に火を点けては消し 消してはまた火を点け直し
 「明日のことは誰にだって分かりっこない」って
 せめてつぶやいて
 見上げるのは東京の夜空
 そして今は遠い遠い遠い 山梨の街

――なんだか、情景が浮かんでくるような歌詞ですね。

スージー:何人かの若者たちの物語なんです。で、最後、主人公はおっさんになって、バッティング・センターに行くんですよ。ちょっと読み上げますね。

〽 ところで 今 オレは
 通りがかりのバッティング・センターに入り

で、少年時代のことを思い出して、

〽 時速140キロのゲージで順番を待っている

ここから、だんだん気持ちが盛り上がっていきます。

〽 一体誰があの日オレに一発逆転を想像しただろう?
 でもオレは次の球をいつだって本気で狙ってる
 いつかダイアモンドをグルグル回りホームイン
 そして大観衆にピース!

一同:(「ピース!」の絶叫に圧倒され、無言でスージー氏を見つめる)

『ボーイズ・オン・ザ・ラン』ってどういう歌詞なの?
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