BS12 トゥエルビで放送中の『ザ・カセットテープ・ミュージック』で、80年代歌謡曲の優れた論評をくり広げるマキタスポーツ氏とスージー鈴木氏が、同世代のビジネスパーソンに「歌う処方箋」を紹介するこの企画。「お金」をテーマとした対談の前半戦は、スージー氏の「アラフィフは、お金をかけずにもっと発信しよう!」というメッセージのあと、マキタ氏の「人間は単なる“うんこの通り道”」という問題提起によって、一気にヒート・アップ! 対談の後半戦では「お金」と「うんこ」の類似性に触れながら「オヤジ世代の理想の“お金の使い方”」へと議論が深化する。

時代の価値観は“所有型”から“フロー型”へ

――アラフィフのオヤジ世代にとって「お金をためることが必ずしも“いい選択”ではない」ということでしょうか。

マキタスポーツ(以下:マキタ):なんか「いい消費」っていうか、自分にとって「いい買い物」とかしてるほうが、経済の中で「自分がお金の通り道」だと実感できて、健康的な感じがするんですよ。

スージー鈴木(以下:スージー):確かになぁ……。

マキタ:僕、そんなにうまくいってるほうではないですけど、うんこにはゴボウとマイタケがすごくいいですよね。

一同:(笑)

スージー:ほぉおー。

マキタ:食物繊維の塊みたいでお薦めなんですけど、あれを食べるとね、ほんとに「自分がうんこの通り道」だって、実感できるんです。

スージー:なるほど、なるほど。

マキタ:「金は天下の回りもの」っていうけど、「人はうんこの通り道」っていう標語も、広めたいですね。

スージー:確かに七五調で、座りがいいですよね。

マキタスポーツ(写真右):1970年山梨県生まれ。ミュージシャン、芸人、俳優。2012年、映画『苦役列車』の好演をきっかけに、役者として活躍の場を広げる。文筆家としても鋭い時評・分析を展開。著書『すべてのJ-POPはパクリである 現代ポップス論考』『越境芸人』『決定版 一億総ツッコミ時代』など
スージー鈴木(写真左):1966年大阪府生まれ。音楽評論家、昭和歌謡から最新ヒット曲まで邦楽を中心に幅広い領域で、音楽性と時代性を考察する。著書『イントロの法則80's 沢田研二から大滝詠一まで』『1984年の歌謡曲』『サザンオールスターズ1978-1985』など
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――先ほど、マキタさんの「うんこが俺を脱いだ!」っていう発言に対して、スージーさんが「実存的だ」とおっしゃいましたが、考えてみると、実存主義者のサルトルが1938年に書いた最も有名な著作は『嘔吐(おうと、原題:La Nausée)』であることも、ただの偶然とは思えませんね。

スージー:おぉ、そうか、そうか。実存主義だ。でも、確かに50歳を超えたら、何にお金を使うか、何で大人買いするかが、大切になってきますよね。

――というと?

スージー:これまでの時代では、お金について“ためる概念”しかなかった。あるいは、何か“いいもの”を所有することに価値が置かれていた。けれど、現代は「車も所有しなくていいんじゃないか」「カーシェアリングとかでいいんじゃないか」となってきた。

――そうですね。

スージー:車とか、家とか、今までステータス・シンボルだったものが、どんどん、どんどん、所有しなくてよくなってきた。フロー型とでもいうか、クラウド型とでもいうか……そうなってくると、本当に「何を大人買いするか」で、オヤジ世代の人生が決まることになってくる。

――なるほど。

スージー:音源も、最近、所有しないじゃないですか。サブスクリプションサービスのほうに移行して。

マキタ:そうですね。

スージー:昔はレコードを大人買いしたもんです。「陳列ケースのこっから、ここまで!」って。今、それもあんまり意味がなくなってきた。そう考えると「何を大人買いするか」っていうことで、その人の審美眼が問われるわけです。