BS12 トゥエルビで放送中の『ザ・カセットテープ・ミュージック』で、80年代歌謡曲の優れた論評をくり広げるマキタスポーツ氏とスージー鈴木氏が、同世代のビジネスパーソンに「歌う処方箋」を紹介するこの企画。前回(オヤジたち、孤独の向こうの“新たな世界”に旅立とう参照)、どうせ誰もが孤独なのだから、しっかり引き受けて、新たな世界に挑戦しよう! とエールを送ったマキタ氏に対して、スージー氏は、井上陽水の名曲から得られる“悟りの境地”によって、孤独の向こう側へと誘う。

他人の孤独を知り、己れの孤独を癒す

――スージーさんの「孤独に負けないための歌」は何でしょうか。

スージー鈴木(以下:スージー):私はシンプルなストラテジーで、孤独になったら、もっと孤独な歌を聴いて「自分はまだましや」と慰めようということで、井上陽水さんの曲を紹介したいと思います。

――おぉっ!

スージー:しかも、2曲あります。

一同:おぉ!

スージー:この連載の1回目で「定年退職で傷付いた心を癒せる処方箋」として『傘がない』(歌・作詞・作曲:井上陽水)を紹介しましたが、今回も井上陽水で、曲は『心もよう』(歌・作詞・作曲:井上陽水)です。

マキタスポーツ(以下:マキタ):いいねぇ。

スージー:この歌の一番孤独なパラグラフはここです。

〽 あなたの笑い顔を不思議なことに
 今日は覚えていました
 19才になったお祝いに
 作った歌も忘れたのに

マキタ:うん。

スージー:『心もよう』を聴けば、自分より孤独な人がいるんだなって思えて、十分慰められるんですが、さらに僕が提唱したいのは、その先にある「孤独というものに慣れ親しんでいくと、新たな境地に立てるんじゃないか」ということです。

マキタ:ほぉ。

スージー:その境地の曲とはですね、1973年にリリースされた井上陽水のアルバム『氷の世界』に収録されて、1974年には小椋佳がシングルとしてリリースした『白い一日』(作詞:小椋佳、作曲:井上陽水)です。

マキタ:『白い一日』か。

スージー:ここまでくると、人間は孤独も喜びも何もないんじゃないかっていう(笑)。アラフィフが到達すべき、ある一つの仏教的な境地なんです。

マキタ:あっはっは!

マキタスポーツ(写真左):1970年山梨県生まれ。ミュージシャン、芸人、俳優。2012年、映画『苦役列車』の好演をきっかけに、役者として活躍の場を広げる。文筆家としても鋭い時評・分析を展開。著書『すべてのJ-POPはパクリである 現代ポップス論考』『越境芸人』など
スージー鈴木(写真右):1966年大阪府生まれ。音楽評論家、昭和歌謡から最新ヒット曲まで邦楽を中心に幅広い領域で、音楽性と時代性を考察する。著書『イントロの法則80's 沢田研二から大滝詠一まで』『1984年の歌謡曲』『サザンオールスターズ1978-1985』など
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