BS12 トゥエルビで放送中の『ザ・カセットテープ・ミュージック』で、80年代歌謡曲の優れた論評をくり広げるマキタスポーツ氏とスージー鈴木氏が、同世代のビジネスパーソンに「歌う処方箋」を紹介するこの企画。今回のテーマは「孤独に負けない歌」。部下との世代間格差で、日々、寂しさをかみしめるアラフィフには、迫り来る定年の向こう側で新たな「孤独」が待ち受けている……そんな過酷な今を生きるオヤジたちに、マキタ氏とスージー氏が「孤独の克服法」を伝授する!

80年代の青春を描くオヤジ世代の胸キュン映画

――今回のテーマは「孤独に負けない歌」ということで、我々アラフィフの孤独感を癒してくれるような、あるいは孤独感に打ち克つのに役に立つような歌をご紹介ください。

マキタスポーツ(以下:マキタ):僕からいかせてもらっていいですか?

スージー鈴木(以下:スージー):どうぞ。

マキタ:僕が今回紹介したいのは、『Drive It Like You Stole it』(作詞・作曲:Gary Clark)です。

一同:(ぽかんとする)

――すみません。この連載で初めて知らない曲が出てきたのですが……。

マキタ:この曲は『シング・ストリート 未来へのうた(原題:Sing Street)』(脚本・制作・監督:ジョン・カーニー)という青春モノの音楽映画の挿入歌なんです。

スージー:うわあーっ! 『シング・ストリート』、大好き!!

マキタ:まあ、一部、すごく熱狂的に支持された映画なんですけど。

スージー:抜群でしたねぇ。

マキタ:2016年に公開されたんですが、その舞台がもう僕らオヤジ世代の青春期そのもの。80年代が舞台で、映画の中で流れる音楽も当時のヒット曲ばかりっていうアイルランド映画なんです。

スージー:そうでしたね。

マキタスポーツ(写真左):1970年山梨県生まれ。ミュージシャン、芸人、俳優。2012年、映画『苦役列車』の好演をきっかけに、役者として活躍の場を広げる。文筆家としても鋭い時評・分析を展開。著書『すべてのJ-POPはパクリである 現代ポップス論考』『越境芸人』など
スージー鈴木(写真右):1966年大阪府生まれ。音楽評論家、昭和歌謡から最新ヒット曲まで邦楽を中心に幅広い領域で、音楽性と時代性を考察する。著書『イントロの法則80's 沢田研二から大滝詠一まで』『1984年の歌謡曲』『サザンオールスターズ1978-1985』など
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マキタ:ストーリーとしては、ティーンエイジャーの男の子がいて、お父さんの事業の都合でパブリック・スクールに転校する。で、夫婦仲がよろしくなくて、両親が離婚するとか、そういう状況の中で自分の生活も変わっていく。新しく転校した学校は勝手が違って、すごい体罰を受けたり、イジメに遭ったりする中で、好きな音楽で仲間を集ってバンドを組む。

スージー:はい。

マキタ:そこに気になる女の子が登場して、彼女が年上のいけすかない不良な兄ちゃんと付き合ってる。その女の子も不良なので、主人公の男の子には「自分はいけてない」っていう気持ちがあるんですけど、バンドを始めて、どんどん強くなっていくっていう。

スージー:そうそう。

マキタ:この映画を知ってる人は少ないと思うのですが、こんなにいい映画を知らないまま、がむしゃらに働いているアラフィフは孤独だなぁって、そう思うんですね。

――そうきましたか。

マキタ:日々、新しく、面白いものが発信されているのに、知らないなんてもったいない。とにかく、一度、この映画を観てください。そして、この曲を聴いてください、と。『Drive It Like You Stole it』っていう曲のタイトルは「自分の人生なんだから、自分でハンドルを切って、自分で運転していこうよ!」っていう意味なんですね。

スージー:そうそう。

マキタ:これを僕が好きな長渕剛さん風に言うならば、(長渕剛の口調で)「おまえが舵(かじ)を取れぃ!」ってことです。

――なるほど。