オンラインでプログラミングが学べる「コードキャンプ」。2013年の開講からこの秋で丸3年目を迎え、受講者数は1万人を突破した。なぜ今、プログラミング学習に注目が集まっているのか――。TREND EXPO 2016に登壇するコードキャンプの代表取締役で、創設者の池田洋宣氏に聞いた。

池田洋宣氏
池田洋宣氏
コードキャンプ 代表取締役
1985年、石川県生まれ。早稲田大学第一文学部卒業。2009年、株式会社サイバードに入社。WEBディレクターとして、モバイルサイトの企画やモバイル広告の制作を担当。その後、株式会社ビジネス・ブレークスルーにて、日本で2例目となるオンライン大学の広報・マーケティング業務を担当。2012年株式会社トライブユニブを創業し、2013年現役エンジニアによるマンツーマン型のオンラインプログラミング学習サービス「CodeCamp」を提供。2015年コードキャンプ株式会社に社名変更。2016年「CodeCamp」受講生1万人突破

「教育関連のビジネスで社会のインフラを作りたい」

――最初に、コードキャンプを設立した経緯を教えてください。

池田洋宣氏(以下、池田): 私は新卒でサイバードに就職しました。しかし、ウェブディレクターとして入社したため、プログラミングに関する技術研修がほとんど用意されていなかったんです。文学部出身でITの知識がまったくなかったので、独学で勉強しました。参考書だけでは足りず、スクールにも通いましたが、ほとんどが動画中心の指導。物足りなさを感じました。

 インターネットがこれだけ普及して、企業でもeラーニングを取り入れていたりしますよね。でも受講方法はあまり進化せず、ひたすら動画を流しているだけ。そこで、プログラミングについてもオンラインで、マンツーマンで学べたらよいのではないかと考えました。

――サイバードを退職して、すぐに起業されたのでしょうか。

池田: いえ、退社後、文科省認可の大学や大学院の資格をオンラインで取得できるビジネス・ブレークスルーに入社し、約2年間、教育関連のビジネスに携わりました。その後、立ち上げ準備期間を経て、2013年10月に「コードキャンプ」を開講しました。

――もともと教育関連のビジネスに興味があったのですか? 

池田: 学生時代から、いつか起業してみたいという考えは持っていたんです。働きながら「ビジネスをやるならどんな事業を軸にすればいいか」、「自分の興味はどこにあるのか」をずっと考えていました。2010年前後はソーシャルゲームが盛り上がっていた時代。でも私自身、勉強が好きだったこともあり、「教育関連のビジネスで社会のインフラを作りたい」という考えにたどり着きました。

――コードキャンプの主な受講者層について教えてください。

池田: 20代から30代が中心です。学生は全体の1、2割程度で、ほとんどの人が社会人です。

――転職目的の受講者が中心でしょうか。

池田: エンジニアを目指そうとしている人は3割くらいです。残る6割はエンジニアになるわけではないですが、起業であったり、社内での新規事業であったり、エンジニアと一緒にビジネスを作っていくうえで、プログラミングの仕組みを理解したいと考えている人たちが多いです。

 今の時代、どんなビジネスを始めるにしても、ネットとは切り離せないのではないでしょうか。しかし、起業を検討している人の多くが「アイデアはあるもののプログラムを作る技術が足りない」という悩みを抱えています。エンジニアを見つけようにも、人材が不足しているため難しい。そのため、起業自体を諦めてしまうという人も少なくありません。

――それならば、自分でプログラミングの技術も身につけてしまおう、ということですね。

池田: そういうことです。自分でプロトタイプが作れると、ビジネスの可能性は広がります。

プログラミング学習の裾野を広げたい

――コードキャンプのコースについて、具体的に教えてください。

池田: 大きく分けるとプログラミングコース、ウェブデザインコース、スマホアプリ開発コースの3つに分かれています。HTML、JavaScriptなどを一つずつ学べる単科コースもあります。授業は1回40分で、10回で終了するコースもあれば、多いものは100回というコースも。朝7時から夜は23時まで開講しているので、仕事をしている人でも受講しやすい設定になっています。

――講師は現役のエンジニアのみということですが、人材不足の中で確保するのが大変だったのでは?

池田: そこがオンライン講座の強みですね。東京近郊で100~200人集めるのは確かに大変ですが、先生も自宅で教えることができるので、関西や九州在住の方もいれば、海外在住という方もいます。

――生徒側にも講師側にもメリットがあるというわけですね。運営側の池田さんとしては、昨今のプログラミング学習のブームをどのように捉えられていますか?

池田: 確かに受講者は増えていますが、英語学習に比べるとまだまだ一部のアーリーアダプターしか学んでいないという状況だと思います。もう少し、裾野を広げていく必要があります。

――確かに、起業や転職などの目的がない人にとっては、プログラミングを学ぶことに抵抗感があるかもしれませんね。

池田: 自動車関連、物流など、これまでITとは無縁だった業界にもテクノロジーが応用されるようになってきています。すべてのビジネスマンにとって、プログラミングの基礎を理解することは、今後大きなアドバンテージになるのではないでしょうか。

 例えば、ずっと営業をやってきた、金融に関わってきたなど、何らかのプロフェッショナルスキルにテクノロジーの知識を掛け合わせることで、新たな価値が生まれるのではないかと僕自身は考えています。

(文/樋口可奈子、写真/シバタススム)

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