やらなくていい仕事が多すぎる

小口: 今後されたいことはありますか。

尾上: 池上線の1日無料乗り放題のときも思ったんですけど、外に向かって宣伝するのはお金もかかるし大変だけど、1日無料にするだけだったらそんなにコストをかけずに認知度を高めることができる。なるべく大変なことしないでうまくいく方法を見つけたいとは思っていますね。

小口: そこは根底にありそうですね。

尾上: 色々作るのは好きなんですけど、やらなくていい仕事が多すぎるとは思いますね。とりあえずこの時期にこのCM枠買っちゃったから作ってください、というような依頼が多い。なぜ枠を買うところからなんだよと。CMそのものも人気があるんだったら、それをずっと流していればいいのに、なぜ期間ごとに変えなきゃいけないのとか。予算が付くから使わなきゃいけない、作らなきゃいけないのは、僕らもあくせく働かされるし、良くはないんじゃないかな。

【意識低いポイント】「予算が付くから使わなきゃいけない、作らなきゃいけないのは、僕らもあくせく働かされるし……」
昔なら、勤労意欲が低いと怒られそうだが、生産性の意味でも、働き方改革的にも今の時代この考え方が正しいと思われる。楽して成果を出したいは、意識低い系マーケティングの最重要テーマです。


小口: すごくコスパがいいし、仕事に対する考え方が従来の広告代理店と違うのは、尾上さんの世代的なものも関係していそうですね。

尾上: 予算がいっぱいあった幸せな時代もかつてはありましたけど、幸いそういう時代じゃなかったので頑張ることができているのかもしれない。「予算あるからハワイに行くぞ!」という時代に対するアンチもある。お金のない時代に入社したので、従来の方法で彼らにかなうはずがない。あと20年は上の人たちが、おいしい仕事を手放さないでしょうし……。なので、こちらはお金かけないでやるしかない。それで喜ぶ人もいることですし。

小口: とはいえ、とんでもなく大きな予算の仕事が降ってきたらどうします?

尾上: そしたら、きちんと使って、期待以上の成果を出したいです(笑)。予算はやはり品質に直結しますし、なんでも安くできるっていうのも違うと思うので。

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(写真/稲垣純也)

小口覺(おぐち・さとる)

IT&家電ライター・コラムニスト。SNSなどで自慢される家電製品を「ドヤ家電」と命名し、日経MJ発表の「2016年上期ヒット商品番付」前頭に選定された。現在は「意識低い系マーケティング」を提唱中。