建築と広告のプロセスは似ている

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小口: お話を聞いていると、いい意味でハッカー的ですね。ちょっとした工夫で最大の効果を得る。それは、小さい頃からの性分みたいなものですか?

尾上: どうなんだろう、「楽してうまくやろう」みたいのは、この会社に入ってからです。大学時代は建築をやっていたんですが、ずっと変なものばかり作っていたんですよね。建築学科の課題は、最初一戸建てから始まり、集合住宅、大きな複合施設というように、どんどんスケールが大きくなっていきます。学生はそれに応えていき、卒業制作はたいてい空港や都市を作るのですが、それに違和感がすごくあったんです。ずっと家を作ったっていいだろうと。

小口: でかけりゃ偉いのかと。

尾上: スケールが大きくなるにつれて、大味になってつまんなくなってくるし、創作的じゃないと思った。僕は学生のときに家具を自分で手作りしていたのですが、彼ら自分では家具ひとつ作れないじゃないか、という怒りもあったんです。
 そこで僕の卒業制作は、パソコンを木枠の中に入れて、1/25、1/100……というようにスケールを書いた。イメージの中でパソコンがそのサイズに変わることで、住宅になり、さらにスケールを大きくすると複合施設になる。そうなるとパソコン内部の見方も違ってくる。例えばハードディスクは貯蔵庫なので、家では倉庫、複合施設だと博物館、都市だと歴史地区……というように。同じパソコンでもスケールを置くだけで色々違って見えるんです。

小口: パソコンを建築物にみなす。

尾上: これは皮肉でして。パソコンを使って設計はできても、実際に何も作れない連中に対しての皮肉だったんです。それまで真面目にやっていても、ヘンなもの作る人としか見られていなくて、その怒りが爆発して作ったのですが、それが褒められたりして、このやり方でいいんだと、そのとき分かった。

尾上氏の学生時代の作品。スケールによってパソコンの内部の見方が変わっていくのが面白い(画像提供/尾上永晃氏)
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こちらも尾上氏の学生時代の作品(画像提供/尾上永晃氏)
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小口: ひと泡吹かせてやろうという気持ちが、仕事にも入ってくる。

尾上: 日清食品さんを担当することから、ひと泡吹かせてやろうに、さらに「楽しく」が入ってきた感じですね。じゃないと耐えられないっていうのもありますが(笑)。

小口: 建築の道へ行かないで電通に入られた理由は。

尾上: 建築で面白いことばかりしている将来が想像できなかった。かつ、問題のアプローチが建物だけである必要はないんじゃないか、そもそも建てなくてもいいじゃないかと思って。建築の道へ行くと建てなきゃいけないなと。

小口: まあ、建てないとお金になりませんからね。

尾上: そう思っているときに、この会社なら色々できそうだなと。広告と建築のプロセスは意外と似ています。クライアントや施主さんとのオリエンがあって、課題を解釈して、自分なりに提案する、それに対してクライアントや施主さんが修正して実行する。建築でやっていたやり方が、活用されています。建築から広告に来られる方は結構多いんですよ。