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 よく耳にするものの、改めて「演出って何?」と問われたら、どう答えるだろうか。一般的には、「映画やドラマで、役者に演技指導すること」などをイメージする人が多いかもしれない。

 確かにそれも演出に違いないが、脚本やシナリオがあるフィクションに限らず、生身の人間のリアルな姿を捉えるドキュメンタリーにおいても歴として「演出」は存在する。というと、「ヤラセ」のような、ないものをあるかのごとく捏造する行為と結びつけてしまうかもしれないが、もちろんそうではない。

 演出とは、より正確に言えば「さまざまな技術や工夫を凝らし、より効果的・魅力的に見せること」だろう。実際、演出という行為はエンターテインメント業界に限らず、一般の人も日常生活の中でよく行っている。

 例えば、恋人への“サプライズ演出”。普通にプレゼントを渡したり、プロポーズしたりするよりも、いつものデートとは違う状況をあえて作り、驚きという“差異”を伴ってより相手の感情に訴えるものだ。そうした演出には手間や準備もかかるので、相手に自分の誠意を感じ取ってほしいという願いも込められている。

 これは、演出する側が相手の反応を予測しながら、ある状況を意図的に設定し、準備を念入りにして行うもの。すると、演出は次のようにも捉えられるだろう。

 「演出とは、“状況設定”である」

 これは、ドキュメンタリーでの撮影対象に対する演出にも通じる。脚本やシナリオがあるわけではないので、ドキュメンタリーの被写体が実際にどう動くか、どんな話を語るか、どういった変化や成長を見せるかを正確に想定することはできない。しかし、だからといって何もせず、ただ“ありのまま”を撮影していても、面白い作品になるかといえばなかなか難しい。そこで鍵になるのが“状況設定”なのだ。

 長年、テレビ業界にいると、テーマや撮影対象がどうであれ、「ちゃんと撮れる作り手」と「あまり撮れない作り手」に分かれるという厳然たる事実を目の当たりにする。両者の違いは“運”によるものなのか。あるいは、一口に“経験や実力の差”と片付けられてしまいがちだが、具体的には何が違うのだろうか。