「テレビなんてオワコン(終ったコンテンツ)」といわれて久しい。思えば、インターネットの登場以降、度々そういわれてきた。視聴率はもとより、番組の質や放送文化という面から見ても、「テレビは以前に比べて良くなっていない」と皆がなんとなく感じている。

 NetflixやAmazon、AbemaTVなどの勢いが増す中で、ネットニュースには毎日のように“テレビの斜陽”を伝える記事が躍る。テレビは、ネットという新しく自由なメディアに比べて、窮屈で旧態依然とした“オールドメディア”と位置づけられている。

 だが、かつての勢いを失いながらもテレビはいまだ健在で、影響力が大きいことも事実だ。検索ワードランキングやTwitterのHOTワードは、テレビ番組やテレビタレントの話題が上位を占める。YouTubeで100万回再生された動画が話題になる一方で、約100万人が番組を見てもテレビの視聴率ならわずか1%程度に過ぎない。出版業界なら、100万部も売れる本は年に1冊出るかどうかという大ヒットだ。

 なぜ“オワコン”と揶揄されるテレビは、終わらないのか――。「今は過渡期」「時間の問題」と見る向きもあるだろうが、以前からネットがテレビに取って代わると予測した人はたくさんいた。だが、大方の予想に反して20年以上もテレビはしぶとく生き残っているのだ。そこには、テレビというメディアの特性が関係しているのではないかと思う。

 私がテレビ業界に入った16年前、放送のデジタル化に伴い、業界ではこんなことが語られていた。

「これからのテレビは“双方向”がキーワードだ」

 従来の放送と違い、「データ放送やネットとの連動で、番組の送り手と受け手がやり取りできたほうが視聴者の意見も反映でき、面白い」などと盛んにいわれていた。新人研修のとき、「高画質・高音質・多チャンネル化」に加え、「“双方向”がテレビの未来だ」と耳にしたことを今でも覚えている。それは、明らかにネットという新興メディアの存在を強く意識した動きだった。

 従来のテレビはいわゆる“受動メディア”で、視聴者は番組から一方的に送られる情報を受け取るだけ。一方、ネットは自分で検索ワードを入力し、クリックする行為を通じて情報にアクセスする“能動メディア”の要素が大きい。自分の意志や考えを反映でき、テレビに比べて圧倒的に自由度も高く、直接、相手とのやり取りも可能だ。

「一方通行で、受動メディアのテレビ」「双方向で、能動メディアのネット」

 こうして並べると、テレビはいかにも古くさく、制約だらけで、押しつけがましい感じがする。それ故、テレビでもネットのような“双方向性”を付加価値として持たせようとする取り組みが行われてきた。

このコンテンツ・機能は有料会員限定です。

この記事をいいね!する
この記事を無料で回覧・プレゼントする