『哲子の部屋』『ブレイブ 勇敢なる者「硬骨エンジニア」』など、独自の切り口のテレビ番組を企画・制作するNHKエデュケーショナルの佐々木健一氏が展開するコンテンツ論の第33回。今回はドキュメンタリー『たけし誕生~オイラの師匠と浅草~』の制作過程から、クリエイターが作りたいものを作ることの重要性を考える。

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 「作りたいものを作って生きていく」

 ものづくりに携わるクリエイターなら誰もがそうありたいと願うが、現実は甘くない。例えば、日本の映画界で映画制作だけでメシが食えている監督は、わずか数人に満たないという。

 そうした現状もあり、国立映画アーカイブ(東京・京橋)で開かれている「第40回ぴあフィルムフェスティバル(PFF)」でのスペシャル講座に、なぜかテレビ業界から旧知の稲垣哲也さんと私が登壇し、対談することになった(2018年9月16日17時15分から)。

 映画業界を志す人に向けた講座にテレビディレクターである我々が呼ばれた背景には、「映画監督になりたい」という夢や憧れを抱いても現実的には99%の人がなれない、あるいは、なんとか映画が撮れても映画制作を“生業(なりわい)”として続けていくことが極めて困難だという現実がある。

 その一方で近年、大学や専門学校には次々と映像系学科が立ち上がり、その講師に仕事がない映画監督が就任して、そこからまた食えない映像作家の卵が量産されるという、悪夢のような構図も存在する。

 子どもの「なりたい職業」にランクインするYouTuberなども、生計が立てられるほど成功を収めている人はほんの一握りだ。誰もがスマホなどで動画撮影し、映像の編集・加工も可能な現代だが、趣味で行うのとプロとして活躍するのでは話が違う。

 では、テレビ業界はどうか。映画業界ほど狭き門ではないが、「作りたいものを作って生きていく」という点でいえば、決してたやすくはない。ほとんどの人が、視聴率や売り上げ、自分の立場などを考えながら、どうにかこうにかやっているのが現状だ。