ソニー、ディズニー、AOLなど国内外の名だたる企業で経験を積み、米アップルの本社で副社長も務めた前刀禎明氏。「本は読まない」という前刀氏が「思考の刺激やきっかけになる」というのがアニメ。その理由とは?

前刀禎明氏

 「お薦めの本は何ですか」と聞かれることが度々ありますが、僕は本をほとんど読みません。文章をざっと流し見して要点をつかむのは得意で、子どもの頃から国語や現国の成績は良かったのですが、好きかどうかでいえば、あまり好きじゃなかった。今でも、本を頭から読み進めるより、雑誌をめくって好きなページを眺めるほうが好きです。

 自身の成長のきっかけや仕事のヒントを求めて本を読むなら、自分なりに物事を観察したり考えたりしてから読むのがいいと思います。本に一から十まで教わるつもりで受け身的に読んだのでは、どんなにいい本でも、その内容が血肉になることはありません。自分でよく考えた末に、視点を変えてみるきっかけをもらったり、自分の考えの答え合わせをしたりするのに本を使うと効果的です。僕も大学時代に「成功は幸運のたまもの。失敗は自分のせい」と考えていて、松下幸之助さんの著書に同様の内容を見つけたとき、とてもうれしくなりました。

 思考を助けてもらうという意味では、必ずしも本である必要はありません。ドラマでも映画でも、もちろん人と会うのだっていいでしょう。僕の場合は講演の機会が多いので、講演会場での質疑応答から新しいアイデアのヒントをもらうこともあります。

 同時に良い素材だと思っているのがアニメ。僕はよく「子どもにも分かるように説明してみて」と言います。物事の本質はシンプルで、商品や宣伝のコンセプトにしても、平易な言葉で表せるはずなんです。逆に、どんなに難しく言ってみたところで、シンプルな言葉に置き換えたときに魅力が伝わらないなら、それはそもそも魅力がないということ。普段から、子どもも好んで見るようなアニメに引きつけて物事を考えてみるのは、よい思考のトレーニングになると思います。