いまだに「THS II」ってちょっと謙虚すぎません?

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豊島: もちろん3代目はハイブリッドを広めるという役目のためにも良かったのです。地球環境にも良いことはたくさんしていて、初代から2代目までで100万台売れ、3代目はもっと短い期間に250万台も売れ、トータルで350万台。その台数が削減したCO2量は、東京都3つ分の面積に生えた杉の木が吸収する量に相当するそうです。

小沢: それはすごい。

豊島: これまでプリウスはずっと他に先駆けてきました。そして自分の担当となり、「次の先駆け」とは何かを考えたときに、「クルマをトータルして見たときに、プリウスは先駆けなのか?」と。クルマとしてもちゃんとしていれば、次のハイブリッドの先駆けになれるのではないかと考えたんです。
 もちろん、燃費は捨てませんよ。そこはトップクラスでいくと決めながら、足りない部分を上げていければ次の世界に行けると思ったんです。ハイブリッドのライバルは弊社の中にもたくさんいますが、そこでも勝てるんじゃないかと。

小沢: ライバルはウチにありだと。

豊島: それから社長が「もっといいクルマをつくろうよ」と言っていますが、われわれにとって「もっといいクルマ」にするには、「もっといい部品」を搭載することも意味するのです。従って、部品の良し悪しを見極めて、より良い部品をつくることを追及しています。
 ただし、プリウスは「ひとり勝ちですよね」と言われてしまうため、競合車がない状態。燃費で一番を目指すのは明らかですけど、それ以外を見ると「これ、いいんじゃない?」「ここも?」「ここも?」と直していくことになるんです。

小沢: 確かに同じ250万円で、現行のフォルクスワーゲン「ゴルフ」と比べたときに、「いいモノ感」は正直ゴルフの方が上だなって。内装の感じとか、特にドアの開け閉めはかなり違うので。

豊島: とはいえ3代目も後期モデルは改善しているし、4代目についてはドアの音にも、社長が1回ポンと閉めただけで、「おお、良くなった」と言ったほど。

小沢: 改良してるんですね。

豊島: よく「4代目の世界初の新技術はなんですか?」と聞かれるますが、「申し訳ないけど、全く新しいのは色だけです」と言ってます。「サーモテックライムグリーン」という熱くならないボディーカラーだけ。ただ、「もっといいクルマとしての改善」と言われたら、普通は100~200カ所かもしれないのに、新型プリウスでは全部品を改善しています。どの部品もみんなが「もっといいクルマ」を考えながらすべて作り変えたんです。そういう意味でいえば、改善の塊です。

小沢: だからエンジンもモーターもトランスファーもイチから設計し直してるのにトヨタ・ハイブリッド・システム・ツー、つまり「THS II」のままなんですね。正直、ボクはこれが不満で、たとえばこれがアップルのiPhoneだったら絶対「THS III」どころか「THS III S」とか名付けたと思うんです。これはちょっと謙虚すぎるんじゃないかと思うんですが。逆にユーザーも「III」と名付けてくれたほうがうれしい。

豊島: そうでしょうか。ボクはそうでもないと思っています。THS IIは、モーターの電源電圧を「昇圧」させるシステムのことをそう呼んでいて、今回そこは変えてない。トヨタのハイブリッド車はたくさんあるので、作った分だけ新しくなる呼び方だと考え方としては複雑になるし、間違えているということになります。

小沢: でも、次回以降作られるアクアのシステムも、おそらくプリウス同様トランスファーからCVTを1つ減らした新世代型で作り直すことになりますよね。そうなると、世代が1つ変わると思うんですが…。そもそも昇圧という概念すら一般的にはかなり分かりにくいもので。

豊島: ただ、プリウスだけが新しくなって、ほかが旧世代になってしまうというのもね。

小沢: なるほど。逆にそういう弊害を気にしてる部分もあるのか。アップルとは逆の戦略ですね。

豊島: お話を戻しますと「もっといいクルマ作り」の集合体というふうにやってきたものですから、中身は全部変わっているとはいえ「3代目でようやくさなぎ、4代目で成虫」という意識なんです。

小沢: つくづく謙虚ですねぇ(笑)。

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