百貨店から大型セレクト業態へ

 ショッピングモール「LOT10」は、市内を走るモノレールのブキッ・ビンタン駅前に建つ。界隈は「パビリオン」「スターヒル」といった欧米のラグジュアリーブランドも出店する高級ショッピングモールやローカルの商業施設のほか、飲食店やマッサージ店がひしめきあう市内随一の繁華街。 若者に根強い人気があるLOT10には「H&M」「ZARA(ザラ)」が出店している。

 日本を前面に打ち出すイセタン ザ ジャパンストアは6フロアで構成。従来の百貨店とは異なり、新しい概念の店づくりにチャレンジしているのが大きな特徴だ。「雅・粋・繊・素」といった日本人の美意識を軸に、「食べる・暮らす・過ごす・楽しむ・学ぶ」といった5つの展開分類を掛け合わせてフロアや品ぞろえに落とし込んでいる。

 「アイテム別の商品分類で売り場を編集する時代ではなくなった。この店は大型のセレクトショップのようなもの」と話すのは、コンセプト設定から携わってきた三越伊勢丹ホールディングス海外事業本部海外MD部の中川一部長。同店では本物の日本を打ち出すため、あえて顧客像を想定せず、プロダクトアウト型で商品をセレクト。「まずは、日本で取り組んできたジャパンセンシーズで支持されたものやクリエーターを集積した。これが完成形ではなく、これから現地の好みやニーズを取り入れて売り場を進化させていく」という。

 例えば、伊勢丹が得意とするファッションは1階(現地ではGF)「ザ・ミュージアム」と2階(1F)「ザ・スタジオ」で展開。「サカイ」「ヨウジヤマモト」「アンダーカバー」といった海外でも知名度が高いデザイナーブランドをはじめ、次世代を担うモード系の「カラー」「トーガ ブルラ」「マスターマインド」などのストリート系、「6%ドキドキ」など原宿ファッションを代表するブランドもそろえる。なかには、伊勢丹新宿本店より品ぞろえが充実しているブランドもあり、ファッションゾーンの集積は圧巻だ。

 さらに、原宿ファッションの隣にデザイナーブランド「アンリアレイジ」を配置したり、音楽やアートと組み合わせたり、日本とは異なるアプローチを試みている点も見逃せない。「ファッション消費が世界的に変わりつつあるなか、日本での展開そのままでは難しい。いま旬のブランドで、ファッションは楽しむものだという付加価値を提案できるブランドを選んだ」(中川部長)。

 2階ポップカルチャーのコーナーには、ガンダムとコラボしたファッショングッズやマレーシア人のダニー・チュー氏が手がける日本製スマートドール「末永みらい」などが並ぶ。1階には、シンガポールのクリエーティブディレクター、テセウス・チャン氏と日本の老舗とのコラボによるオリジナルのセレクトショップも展開。クールジャパンといってもメイドインジャパンや日本のクリエーターにこだわっているわけではない。日本人の視点だけでは海外でなかなか伝わらないため、グローバルな外国人クリエーターの視点も取り入れ、日本の本物を表現した。

 次回は「食」を主なテーマとして検証したい。

1階のエントランス近くでは、「サカイ」「ヨウジヤマモト」「アンダーカバー」「コムデギャルソンポケット」といった海外でも人気のデザイナーブランドを展開
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1階の「アンダーカバー」のコーナー
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シンガポールのテセウス・チャン氏によるストアオリジナルブランド「WAA WAA」
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原宿ファッションの隣に、デザイナーブランド「アンリアレイジ」を配置するなど、日本では見られない試み
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キュートなキャンドルで知られる「スワティ」は花の香りの効能を生かしたフレーバージュースなどを販売
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日本でも好評だった、ダニー・チュー氏が手がける日本製スマートドール「末永みらい」。同店のユニフォームを着た人形も
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1階イベントスペースではセーラームーンとアクセサリーブランド「Q-pot」のコラボ商品を紹介していた
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次世代を担うジャパンファッションデザイナーのゾーン
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1階ファッションゾーンには「マスターマインド」をはじめ、メンズストリートブランドが充実
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メンズアンダーウエアで唯一出店した「TOOT」もマレーシア初進出
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(文/橋長初代)