2018年3月に迫った新商業施設「東京ミッドタウン日比谷」の開業(関連記事:ミッドタウン日比谷 立ち飲み充実、有隣堂の新業態も)。実はその向かいにある日比谷シャンテも、30周年を迎えてリニューアルを進めている。
その第1弾とてして、2017年10月6日に1階東京宝塚劇場側に「キハチ カフェ」ほか4つの新店舗をオープン。既存店もリニューアルし、華やかな雰囲気になった。続く第2弾として、2017年12月7日、地下2階のレストランフロアが全面的にリニューアルオープンした。
東宝不動産経営部 東宝日比谷ビル営業室の長野行秀営業課長によると、今回のレストランフロアリニューアルの理由は2つあるという。一つは老朽化が進んだ厨房設備の一新。そのため、地下2階のレストランフロアを8月20日から全面クローズし、本格的な改修をしたという。
もう一つは、客層の変化への対応だ。現在、日比谷シャンテに一番近い東京メトロの出口は東宝ツインタワービル。出口から徒歩30秒程度とはいえ、駅には直結していない。だが、2018年春には日比谷シャンテ地下2階と東京メトロをつなぐ連絡通路が完成予定で、日比谷シャンテにも連結しているシアタークリエにも雨に濡れずに行くことができるようになる。「これまでの日比谷シャンテのレストランフロアは観劇帰りの女性客が中心。メニューや空間もそれに合わせて構成していた。だが、地下鉄と直結することや向かいに東京ミッドタウン日比谷ができることにより、オフィスワーカーの利用が増大することが予想される。そのため、店舗作りの見直しが必要だと考えた」(長野課長)。
そこで全体的に、これまで弱かったアルコール類を強化。おつまみやランチ、テイクアウトメニューも増やしたという。今回のリニューアルでは新店舗として「She(シー)」「RingerHut TOKYO PREMIUM(リンガーハット トーキョープレミアム)」「梅梅(メイメイ)」「五穀(ゴコク)」の4店が新たにオープンし、既存店8店のうち3店舗が新業態に生まれ変わった。フロア全体もシックな色合いにして、昼と夜とで照明を変えるなどの雰囲気づくりをしているそうだ。はたして、日比谷ウォーカーの心をつかむ店をそろえることができているのか。
初出時、「地下2階のレストランフロアはテイクアウトのフードが食べられるフリースペースもできた」と記載していましたが、飲食は控えてほしいとのことで、削除いたしました。該当箇所は修正済みです。[2017/12/14 17:50]
目玉はイカゲソ入り“プレミアム”ちゃんぽん
新規オープン4店舗のうち、注目は長崎ちゃんぽん リンガーハットの新業態「RingerHut TOKYO PREMIUM(リンガーハット トーキョープレミアム)」。ここでは都内の通常店舗より100円高い「プレミアム長崎ちゃんぽん」(税別690円)を店舗限定で提供する。
“プレミアム”な理由は、健康志向に対応してスープの塩分をやや控えた代わりに、野菜のうまみとコクをアップさせた特製スープを使っていること。さらに、具にイカゲソを使っていることだ。「イカゲソを加えるとスープの味わいが深まるが、最近はイカゲソが入手困難で全店で使用することが難しい。ぜひここでしか食べられないプレミアムな長崎ちゃんぽんを味わって欲しい」(リンガーハット 営業戦略部 堀江純平部長)。同店ではこのほかに「プレミアム長崎皿うどん」(税別720円)など合計12種類のプレミアムメニューを提供する。
また、紅虎餃子房を運営する際コーポレーションの中華料理店「梅梅」は1号店の金沢に続く2店目で、東京初出店だ。ランチメニューや定食メニューの種類が豊富で、ボリュームもたっぷり。男性オフィスワーカーの人気を集めそうだ。
オーガニックレストラン「She」は、全国の50を超える生産者から届く無農薬野菜や銘柄肉を、ジャンル限定せずさまざまな調理法で提供するという。また、「五穀」ではその日に店頭で精米した新潟産コシヒカリを提供するのが売りだ。
観劇帰りの女性向けやエスニック料理で飲める店も
リニューアルオープンでは既存の8店舗中3店舗が新業態に転換した。丼とそばがメインだった「家族亭」は新業態「日比谷別亭 花旬庵(かしゅんあん)」として、女性好みのセットメニューを中心に提供する。
観劇帰りの女性客をターゲットにした、その名もズバリ「観劇御膳」はバラエティに富んだ内容で人気メニューになりそう。家族亭との違いは、そばよりもうどんに力を入れていること、特注した鮮やかな朱色の有田焼を使用するなど、女性をターゲットにした戦略が徹底している。
同店は、東京のクラフトビール「TOKYO BLUES」やワイン酵母で仕込んだ日本酒「越後鶴亀」といった通好みの酒に加え、「おだしだきじゃがいも×チーズ」(税別320円)など手ごろなおつまみも豊富にそろえているので、使い勝手が良さそうだ。
一方、カレー専門店「「おいしいカレー工房ひつじや」は席数を増やし、系列の「ビストロひつじや」(代々木)のメニューも食べられる「タンドール料理 ひつじや」に業態変更。カレーのほかに肉料理などエスニックな一品料理もそろう。アルコールも提供しているので、“カレー飲み”できる店として喜ばれそうだ。
「パスタ 壁の穴」は、ピッツァも提供する新業態「パスタ&ピッツア 壁の穴」に。同ブランド初の試みとのことで、パスタとともに、石窯で焼いたピッツア10種類ほどを提供する(従来からピザを提供している「元祖 壁の穴」とは別会社)。
日比谷シャンテから皇居方面に向かうエリアは宝塚劇場、シアタークリエ、帝国劇場、日生劇場、国際フォーラムがあり、名実ともに日本一の劇場街を形成している。日比谷シャンテはそれらの劇場からアクセス抜群ながら、地下2階のレストランフロアはやや地味でパンチに欠けるラインアップだった。そのため筆者も観劇帰りの食事は少し歩いてもコリドー街や銀座方面に行くことが多かったが、今回のリニューアルでがらりと印象が変わった。オフィスワーカーだけでなく、観劇帰りの女性客の利用もさらに増えるのではないだろうか。
30周年リニューアルは2018年3月下旬の第3弾をもって完了する予定。第3弾ではシャンテ前新広場や1階のメインエントランスを改装し、1階に新店舗がオープンする予定だ。
初出時、「日比谷別邸」と記載していましたが、正しくは「日比谷別亭」でした。お詫びして訂正いたします。該当箇所は修正済みです。[2017/12/14 19:06]
(文/桑原恵美子)