タニタのグループ企業であるタニタ食堂が運営するレストラン「丸の内タニタ食堂」が、6年ぶりに全面リニューアルを行った。
これまではランチタイムとカフェタイムのみの営業だったが、2017年11月29日よりディナータイムの営業と、8種類の新メニューからなる「タニタの洋食ごはん」の提供を始める。価格は950円~1400円で、平均客単価は従来の900円から200円程度アップし、1100円程度になるという。
また全国29カ所のタニタ食堂で初めて、アルコールの提供も開始。ビール(税込み550円、以下、価格は全て税込み)、グラスワイン(赤・白ともに500円)などをそろえる。
同食堂は周辺オフィスで働くビジネスパーソンが社員食堂のように利用できるレストランを目指し、2012年にオープンした。タニタ食堂の上木知規社長によると、リニューアルの最大の狙いは顧客層の拡大。「2018年の1月でオープンから6年になり、のべ約40万人の利用者があったが、40~50代が中心。男女比では女性が多かった。若い層や男性に人気の洋食メニューを投入することで、さまざまな層の利用機会を増やしたい」と上木社長。また、タニタ ブランディング推進部の山本耕三部長は「ヘルシーな食事イコール味気ない、わびしい、おいしくない、というイメージが強い。今回のリニューアルでそのイメージを払拭したい」と意気込む。
同社によると、今回のリニューアルのポイントは「食事は楽しみの一つ」という観点だという。当然のことにも思えるが、確かに従来の同店のメニューは見た目にも薄味風でボリュームが少なく、あまり食欲をそそらないものもあった。今回のリニューアルは、健康に重点を置くあまり、食に楽しみを求める層への訴求が不十分だったことへの見直しでもあるのだろう。
だが、タニタ食堂はこれまで定食で「エネルギー500kcal前後、塩分3g以下、野菜150~250g使用」を守ってきた。はたして洋食メニューで、どこまでこの“おきて”を守りきれるのか。
“タニタメソッド”で洋食をカロリーオフ
リニューアルの目玉となるタニタの洋食ごはんは、一般にカロリーや塩分が高くなりがちな洋食メニューをタニタ食堂のメソッドでアレンジしているのが特徴。洋食のしっかりした味付けやボリューム感を損なうことなく、一般の洋食メニューよりもカロリー、塩分ともに2~3割程度のカット(「日本食品標準成分表2015年版(七訂)」より)している。1食あたりのカロリーを800kcal以下、塩分を4g以下に抑えているという。
ランチタイムには従来の「日替わり定食」(880円)と「週替わり定食」(1100円)に加え、タニタの洋食ごはんの中から3種類(「ローストビーフ バルサミコと赤ワインのソース」「ピリ辛煮込み野菜カレー」「ポークカツレツ フレンチ風マスタードソース」)を提供。ディナータイムには日替わり定食1種類(ランチタイムと同じメニュー)とタニタの洋食ごはん全8種類を提供する。
ポークカツレツ フレンチ風マスタードソースは、見た目はカツレツそのもの。違いは液体のソースではなく、トマトを使ったフレンチ風マスタードソースを添えていることくらいだ。ただ、揚げるのではなくオーブンで焼くことで油の吸収によるカロリーを抑え、デミグラスソースに塩を使わない代わりに豚肉にマスタードで下味をつけて薄味に感じさせないようにしているという。ナイフでカットした断面は脂身がまったくなく、切るのも苦労するほどの厚み。油を吸った衣特有のコクがなく、脂身がないため肉がややパサつくのは否めないが、デミグラスソースとフレンチ風マスタードソースにしっかり味がついているので、塩分をカットしている物足りなさはあまり感じない。野菜が多いせいかボリュームもたっぷりで、これならディナーとしても不満はないと感じた。そのほかの洋食メニューにも、カロリーと塩分カットのためのこまごまとした工夫がされているが、どれもおいしそうで、若い層や男性にも受けそうだ。
だが、スープとサラダはかなり薄味で、特にサラダは後半、ほとんど塩気が感じられなかった。自分では特に濃い味好みと思ってはいなかったが、この食事が塩分の適正量だとしたら、ふだんの食事ではかなり塩分過多だということになる。そうした“気づき”を与えるのも同食堂の狙いなのだろう。
タイマーをセットして“早食い”に気づく
もう一つ気づいたのは、自分の食べるペースの速さだ。セルフサービスでご飯を盛り、おかずなどを載せたお盆を持ってテーブルにつくと、テーブルにはタイマー が置いてある。タイマーは「1食に20分かけてゆっくり食べる」ための目安で、タイマーをセットしていつものペースで食べたところ、10分ちょっとで終了。自 分が“早食い”であることにも気づかされた。ちなみに、ご飯茶わんの内側には、二つの目盛りがついている。単なる模様かと思っていたが、下のラインが100g、上のラインが150gを指している。テーブルの脇にかかっている小型スケールにご飯茶わんを乗せるとカロリーが表示されるしくみだ。「ここまでやるか!」と驚いた。
来春から弁当の宅配もスタート
リニューアルオープンと同時に、大手町・丸の内・有楽町エリアで働くビジネスパーソンをターゲットにしたデリバリーサービス「タニタスマートチャレンジ」もスタートさせる。法人単位で利用でき、契約している法人の従業員は1カ月間タニタ食堂を利用し、食堂内のカウンセリングルームにある業務用周波数体組成計で体の変化を細かくチェックし、体重と体脂肪率の適正化を目指すことができる。
さらに、2018年春からはケータリング弁当「オフィスでタニタ食堂」の提供も予定している。こうしたサービス拡大のために、同店では厨房スペースを従来の約1.5倍に増やした。今後は1日の提供食数を現在の300食から500食(ディナータイム100食、ケータリング弁当100食の概算)にする計画だ。また同店でのノウハウは今後、全国に29店舗あるタニタ食堂でも取り入れていく予定だという。
(文/桑原恵美子)