世界的に有名なレストランガイド『ザガット・サーベイ』に6年連続で掲載され、“ステーキの聖地”といわれるニューヨークで今最も勢いがあるといわれている「エンパイアステーキハウス」。その日本1号店が2017年10月17日、東京・六本木にオープンした。同店は産地直送黒毛和牛一頭買いの肉店「Beef Garden」、肉バル「Salt」などを運営するTFM(静岡県藤枝市)が運営する。
すぐ近くの六本木五丁目交差点周辺には「ウルフギャング・ステーキハウス 六本木店」(2014年2月オープン)「ベンジャミン ステーキハウス六本木」(2017年6月オープン)というニューヨークの人気ステーキハウス2店がすでに出店している。しかもオーナーはいずれも伝説的なステーキハウス「ピータールーガー」出身。その3店がくしくも遠く離れた東京の六本木交差点徒歩3分圏内に店を構えているのだ。
なぜ、ニューヨークの人気ステーキハウスがこぞって六本木に出店しているのか。そしてどれくらいの価格帯で、どのような料理を提供するのか。
赤身肉なのに、ナイフの重みだけで切れる
エンパイアステーキがあるのは、六本木交差点アマンド横の芋洗坂を下った三差路。「カンデオホテルズ東京六本木」(詳しくは後述)1階にあり、赤をアクセントカラーに用いた高級感のあるエントランスがひときわ目をひく。入口を入るとバーカウンターがあり、右手に100席ほどのホール、その奥が個室だ。ステーキハウスというと重厚感があり、男性的でクラシックなイメージのインテリアが多いなか、同店は1930年代にオペラハウスだった建物を改装したニューヨークのイースト店のイメージに近づけているとのことで、アールデコ調の華やかなイメージだ。
ニューヨークスタイルと呼ばれるステーキの特色は、上から高温の直火が当たる専用オーブンで焼き上げること。900度以上の高温になる特注オーブンで一気に焼き上げているため表面が香ばしく、中はジューシーに仕上がる。
同店の自慢は、USDA(米国農務省)格付け最高位のプライムグレードのブラックアンガスビーフを、冷凍ではなくチルド状態で輸入していること。その最高級グレードの牛肉を専用熟成庫で21~30日間ドライエイジングし、うまみが最高潮に達したタイミングで厚切りにカットして焼き上げるという。
人気のステーキメニュー「プライム ポーターハウス ステーキ」は、フィレとサーロインの両方が一度に味わえる「Tボーンステーキ」のなかでも、フィレが全体の3分の1以上を占めるもの。しっとりした繊細な肉質のフィレと脂がのった肉のうまみたっぷりのサーロインの両方を味わえるので、ボリュームが多くても食べ飽きない。皿の上にたまった肉汁をかけながら食べると、ソースなどいらないくらい濃厚なうまみが感じられた。
同店でしか食べられないオリジナルメニュー「エンペラーステーキ」は、牛1頭から600~800g(1~2皿分)しかとれない希少部位にして最上位部位のシャトーブリアンとサーロインが同時に味わえる。シャトーブリアンは脂がほとんどない赤身肉で、味わいは意外にあっさり淡泊。ナイフの重みだけでカットできるほどの軟らかさに驚いた。
ビジネスパーソンが独りカウンターでステーキ!?
気になるのは価格だが、ステーキメニューは5種類あり、うち3種類(「プライム ニューヨーク サーロイン ステーキ」「プライム リブアイ ステーキ」「プライム フィレミニオン」)は9800円、「プライム ポーターハウス ステーキ」が1万6000~3万2000円。「エンペラーステーキ」は2~3人分で2万4000円なので、3人でシェアすれば、1人8000円だ。
同店自慢のメニューがひと通り味わえる「エンペラーステーキコース」は1万5800円。日本限定メニューとして、「厳選シャンパーニュ飲み放題付きスペシャルランチコース」(9800円※税・サービス料込み)も提供。ランチタイムなら「エンパイアステーキバーガー」(3800円)「プライム フィレミニオンステーキ(150g)」(4800円)といった手ごろなメニューもあり、コースならサラダまたはスープ、デザート、コーヒーまたは紅茶が付いて8800円からステーキが味わえる。
またバーカウンターで気軽に頼める「シャトーブリアン カツレツ サンドイッチ」(3800円)などのフードメニューもあるので、それを試してみる手もある。ニューヨークの本店では独りでバーカウンターに座ってステーキを食べる出張中のビジネスパーソンもよく見かけるという。
日本ではステーキハウス=高級店のイメージが強いが、ニューヨークでは家族や仲間内でちょっと奮発して食事を楽しみたいときに行くのがステーキハウスだそうだ。「日本でも肩肘張らずに楽しめる“ステーキハウス文化”を広めていきたい。だから上品すぎるイメージの銀座や丸の内ではなく、カジュアルでエネルギッシュな六本木を選んだ」(同店を運営するTFMの小柳津競介社長)。
また、六本木には多くのステーキハウスがあるが、近隣に競合店が多いことは必ずしもマイナスにならないという。「同じ『ピータールーガー』出身でも、それぞれの店で肉や熟成方法、焼き方が違うし、店の雰囲気も異なる。消費者にとって多くの選択肢があることがプラスに働き、ステーキ文化が日本により浸透していくと思う」(小柳津社長)。
欧米人観光客の多いホテルとのシナジー効果にも期待!?
さらに同店の特徴は、外国人宿泊客が見込める「カンデオホテルズ東京六本木」の1階にあることだ(関連記事:ホテル業界の異端児がUSJ公式ホテル参入)。
2017年7月に開業した「カンデオホテルズ大阪なんば」はアジアからの観光客がほとんどを占めているのに対し、東京六本木では欧米からの予約が多いという。「東京六本木の顧客構成のうち約50%は日本のビジネス客・観光目的の宿泊客で、残り約50%が欧米とアジアからの訪日観光客と見ている」(カンデオ・ホスピタリティ・マネジメントの倉地恵太取締役)。
カンデオ・ホスピタリティ・マネジメントの穂積輝明会長兼社長は、「欧米人に人気の高いエンパイアステーキハウスが1階に出店していることは当ホテルにとっても大きなメリット」と、エンパイアステーキハウスの集客効果に大きな期待を寄せていた。
(文/桑原恵美子)