2018年10月11日、台湾の人気ソフトクリーム店「蜷尾家/NINAO(ニナオ)」の日本第1号店が東京・三軒茶屋にオープンした。李豫(リ・ヨ)氏が12年2月に台南市で開業したソフトクリームの専門店。日本1号店である三軒茶屋店が初の支店であり、海外初出店となる。
ニナオは、「列が途切れない店」として台湾中に広く知られており、海外からを含めた多くの企業からコラボ依頼が殺到しているという。そのニナオと日本での独占販売契約を結んだのは、マッシュセールスラボ。ファッションブランド「スナイデル」「ジェラート ピケ」やコスメ関連ブランド「コスメ キッチン」などを展開し、フードビジネスにも積極的に進出しているマッシュホールディングスのグループ企業だ(関連記事「ヒットブランド連発 マッシュ社長が大事にする『瞑想』」) 。
マッシュホールディングスは台湾に複数の店舗を出店しているため、社員が同地を訪れる機会が多いという。ニナオのソフトクリームの味と同店の人気に衝撃を受けたマッシュホールディングス側が提案したのをきっかけに、17年に同ホールディングスが展開するカフェの台北店で期間限定のコラボレーションを行った。その際、ニナオのオーナーの李氏とマッシュホールディングスの近藤広幸社長が意気投合したことから日本へ出店する運びとなった。
ニナオのソフトクリームは、「すっきりした甘さ」が人気を集めているという。それを表現するために同ホールディングスが考案したキャッチコピーが「スキアマ」だ。いったいどんな味なのだろうか。
ひとくち食べて「スキアマ」に納得
ニナオは三軒茶屋駅の南口から徒歩数分の場所にある商店街のほぼ中央に店舗を構えている。周辺は平日の日中でも地元の人々の姿が多く見られ、街のシンボル的な商業施設「キャロットタワー」付近とは異なるにぎわいが感じられる通りだ。
庶民的な飲食店が多い通りのなかでも、濃い藍色ののれんがかけられたニナオはかなり目立っている。平日の午後なのに訪れる客が途切れず、イートインスペースは満席だった。
李氏が開発したフレーバーは100種類以上。三軒茶屋店では週替わりで2種類のフレーバーを提供する。フレーバーが切り替わるのは毎週水曜日だ。取材当日は、日本限定フレーバーの「包種茶(ほうしゅちゃ)」と、本店にもある「小豆」の2種類だった。
通常のソフトクリームに比べると甘みがあっさりとしているので、乳製品本来の甘さやそれぞれのフレーバーの繊細な香りがはっきり感じられる。ソフトクリームとしてはやや固めの食感ですぐには溶けないことも、フレーバーをしっかり感じられる理由だろう。溶けたあとに舌に粘りや甘さが残らない軽い後味も特徴的だ。なるほど、「スキアマ」とはこういうことかと納得した。
同店では牛乳や生クリームなどのシンプルな材料のみを使い、イタリア製の高級マシンを使って店舗内でソフトクリームベースを一から手作りしている。そのため、甘さを自由に調節できるのだという。フレーバーは細かく粉砕した原料のみで香料を加えていないという点も、すっきりした味わいにつながっているのだろう。
目指したのは「散歩がてら立ち寄れる店」
日本1号店を三軒茶屋に出店した理由は、クリエーターやファッション関係者など感度が高い人が多いからだという。また、「わざわざ都心に食べに行くというよりは、家や学校の近くにある身近な存在として、散歩がてら立ち寄ってソフトクリームを楽しめるような店を作りたいと考えた」(同店広報)。
都心のトレンドスポットを訪れる客は比較的若い層が多い。だが、取材当日の同店には家族連れや若い男女、シニア層など、商店街を歩いていて目に留まったとみられる幅広い層の客が訪れていた。同店によると、オープン直後は商品がすべて売り切れてしまい、閉店時間前に閉めざるを得ないこともあったという。クチコミで噂が広がれば遠くから訪れる客も増えそうだが、まずは地域密着型店舗として定着しそうだ。
(文/桑原恵美子)