日本橋高島屋S.C.新館には、男性向け、または男性も楽しめるショップが多く入っている。ここでは、その多くが入った5階を中心に紹介していく。5階は、フロア中央に大きくスターバックスと、大人の文具店「TOUCH & FLOW」が入り、その周囲に、さまざまな専門店が入っている構造。デンマークの老舗高級オーディオメーカー「BANG & OLUFSEN(バング&オルフセン)日本橋」から、全く新しい発想で本や本棚を扱う「ハミングバード・ブックシェルフ」、さらには紳士のためのリラクセーション理容店「THE BARBER(ザ・バーバー)」まで、従来の男性向けフロアとは全く違うショップが並んだ。フロアのムードはかなり落ち着いた印象となっている。
■ペンの試し書きコーナーが充実の「TOUCH & FLOW」
■高級シャツ生地を使ったハンカチやトランクス「OLD-FASHIONED STORE」
■“喜怒哀楽”でギフトを選ぶのが新しい「BRICK & MORTAR」
■テーマごとのセレクト本と本棚を買う本棚店「ハミングバード・ブックシェルフ」
■憧れのオーディオをじっくり試せる「BANG & OLUFSEN」
■英国式で半個室、でも気軽に利用できる「THE BARBER」
■人気雑貨店もフルラインアップで見られる「BRIEFING」「KONCENT」
ペンの試し書きコーナーが充実の「TOUCH & FLOW」
スターバックスと並んでフロアを二分するのは、デザインフィルによる、“手書きを楽しむ大人のためのステーショナリーショップ”「TOUCH & FLOW(タッチアンドフロー)」。湘南、銀座に続く3店目にして、タッチアンドフローの中では最大の売り場面積を持つ。
日本橋高島屋新館店のコンセプトは「書くことで見つける上品な暮らし」。そのコンセプトを象徴するように、店内中央には3.4メートルのテーブルに、試し書き用紙をブロックのように配した広いスペースを配置。パイロット「カクノ」、プラチナ万年筆「プレジール」などの手ごろな価格の万年筆や、ちょっとペン先が変わったカリグラフィーペン、色が変わる鉛筆、ラミーやペリカンなどのデザインに優れた筆記具などが試し放題。しかも、イスが備えられているので、書き心地や自分との相性をじっくりと確かめられる。タッチアンドフローではおなじみの、ぺんてる「トラディオ・プラマン」の海外発売バージョンも軸色3色がそろっている。
また、ネットで展開している、好きな紙を選んで自分だけのレターセットをオーダーできる「カスタムメイドレター」を、限定的ながら店頭で注文できるサービスも開始。もちろん、ここだけのオリジナル商品も用意されている。今回は、B6サイズ160ページの無罫ノート「DAILY SKETCH」の日本橋限定バージョン(600円)。赤い表紙に白で日本橋の絵が描かれたしゃれたデザインだ。それに、ノートとデザインをそろえた活版印刷の日本橋ポストカード(250円)、ラブレターをかたどった金太郎飴を同じデザインの日本橋パッケージに収めた「ラブレターキャンディボックス」(650円)の3点。
キャンディーの箱は、中の飴を食べた後はペンケースとしても使えるようになっている。その他、デザインフィルの各種文房具や手帳などもそろう。来店先着2000人には日本橋柄の和紙のミニポスターカレンダープレゼントもある。
高級シャツ生地を使ったハンカチやトランクス「OLD-FASHIONED STORE」
ハンカチ専門店の「H TOKYO」や、トランクス専門ブランドの「TOKYO TRUNKS」など、布製品を扱う「OLD-FASHIONED STORE(オールドファッションストア)」が、上野店に続き2号店として登場。
高級シャツ生地を使ったハンカチやトランクスは、手触りがよく、適度にシャッキリとして、とても気持ちよく使える。しかも、イニシャルなどはその場で発注、その場で刺しゅうしてもらえる。少し長めの文字列も5日で出来上がる。ワンポイントになるオリジナル刺しゅうのワッペンも用意されていて、これもその場で付けてもらえる。
他にも、オープン記念で10月16日まで、ハンカチのパターンオーダーも受け付ける(2000円~)。トーマスメイソンなどのヨーロッパの上質な生地を使ったハンカチのサイズや縫製の仕様などをオーダーできるのだ。ハンカチは無地の白から定番のチェック、有名デザイナーのものまで幅広くそろう。気持ちよい生地で作られたトランクスも試してみたくなる。1万円(税別)以上購入した方、先着30人には、ハンカチと同じ生地で作られたブックカバーをプレゼント、日「本」橋、ということらしい。
“喜怒哀楽”でギフトを選ぶのが新しい「BRICK & MORTAR」
日用品、クラフト、プラント、アンティークにアート、それこそ、蕎麦猪口(そばちょこ)からハーブまでそろうセレクトショップ「BRICK & MORTAR(ブリック&モルタル)」。ギフトショップのような品ぞろえだが、面白いのは棚を喜怒哀楽で分けたコーナーだ。
中でも「怒」をモチーフにした、怒りを鎮めるためのアイテムを集めた棚は、香木セットのような定番リラクセーションアイテムから、お経が鳴り続ける「ブッダマシン1(2018年リイシュー版)」(3500円)や、怒りをゴミと一緒に捨てろ!という意味を込めてゴミ箱までが並んでいる。「哀」の棚では、森の中をさまよい続ける気分になれるカードゲーム「FOREST MEMORY GAME」(3000円)が面白かった。
他にも、子供用と大人用を同じデザインでそろえた親子でかぶる帽子「OYACOORDE HAT」、有田焼の蕎麦猪口(そばちょこ)や小皿の検品ではねられた、いわゆるB品を、買う側が値段を決めて購入できる「価格はあなた次第」コーナーなど。一風変わった、しかし見る目が確かな製品がそろったセレクトショップだ。製品に添えられた説明文が詳細で分かりやすいのもうれしい。
テーマごとのセレクト本と本棚を買う本棚店「ハミングバード・ブックシェルフ」
校正会社の鴎来堂が、神楽坂の書店「かもめブックス」に続いて展開する、本棚の店が「ハミングバード・ブックシェルフ」。一見、何の店なのか分からない広々とした店内には、本が詰められた大小さまざまな本棚が並んでいる。
本棚屋だから、本棚が並んでいるのは当然なのだが、面白いのは、本棚と中の本をまとめて購入できること。本棚は、壁一面の大きさのものから、文庫本が3冊程度収まる小さな箱のようなものまでさまざまあるが、それぞれの本棚には、テーマごとの本がすでに並べられているのだ。
「はじめての探偵小説」「旅に出たくなる本」などといった、ハッキリしたテーマの本棚もあれば、サブカルチャーの肝を押さえた本を個人が選んで並べたような、ゆるいくくりの本棚もあって、そのセレクトがなかなか絶妙。「ボブ・ディラン自伝」「ティファニーで朝食を」「不思議の国のアリス」「百年の孤独」「羊をめぐる冒険」と並んでいたりするのだ。趣味も見栄もパッケージングされたインテリアとしての本棚を丸ごと購入できる、恐ろしくもあり、現在の本の売り方として正しいというか、時代はここまで来たのだと思わせる、まさに本棚を売る店なのだ。
中身だけでなく、本棚も外と内で違う色を塗ることができたり、中に入れたい本に合わせて細かくサイズを調整できるなど、お仕着せではない、パーソナルな道具としての本棚を売っていこうという姿勢が見える。
本が入っている本棚に関しては、本自体は値引きができないが、本棚の方を値引きしてもらえるサービスもある。本は古書ではなく全て新刊書なのでギフトにも使いやすい。面白い業態だし、中の本も変化していくわけだから、定期的にのぞきたくなるショップだ。
憧れのオーディオをじっくり試せる「BANG & OLUFSEN」
フロア最奥に位置するのは、あのデンマークの老舗オーディオメーカー「BANG & OLUFSEN(バング&オルフセン)」の現行製品全てを試聴でき、購入もできるショールーム兼ショップ。ショップは手前と奥の2つの部屋に分かれていて、手前にはヘッドホンやイヤフォン、小型のスピーカーなどの機器が展示されている。また、今は生産されていないバング&オルフセンの伝説的名機、例えば、赤い受話器が懐かしい電話機だったり、まるでフルートのようなタイマーが飾られている。
奥は、リビングを模した試聴ルームになっていて、部屋に組み込む形での音響空間としてのバング&オルフセンのオーディオシステムを体験できる。今や、音楽を聴くのはオーディオルームではなくリビングなので、試聴ルームがリビングを再現しているのは、納得だ。
面白い製品としては、オーディオシステムを部屋に応じて好きに組み換えつつ、それを壁面にまるでオブジェのように設置できる「BeoSound Shape」。36×32cmほどの六角形のシステムが、それぞれスピーカー、パワーアンプ、音響ダンパー、BeoSound Coreになっていて、それらを好きに組み換えたり追加して、その空間に最適な音響システムを作るのだ。
バング&オルフセン日本橋には、そのシステムをデザインしたデザイナーが自分のオフィスで使っている、そのままの構成の製品が壁に設置されていて、その音を楽しむことができる。試聴ルームも含め、ふらりと立ち寄れるようになっているので、あの憧れのバング&オルフセン製品をじっくり味わえるのだ。
英国式で半個室、でも気軽に利用できる「THE BARBER」
デパートの中に美容室があるのは当たり前の風景だが、新館には、理容店が入っている。その名も「THE BARBER(ザ・バーバー)」。働く男性向け、リラクセーションを兼ねた理容店として都内8店舗、米1店舗を構える、ヒロ・マツダのプロデュース店だ。
英国のパブやカフェをイメージしたというクラシカルな雰囲気の店内は、ゆったりと時間が流れるようで、半個室の中に設えられた大きな革の椅子に座るだけでも、リラックスできてしまう。超高級店のイメージだが、カット&シャンプーで5600円だから、町の理容店と大きく変わるわけではない。もちろん、各種ヒーリングメニューを全部含むコースは1万7000円と、それなりの価格だが、スーツを着て、自らがビジネスマンの髪形のモデルとなるように考えられた理容師の方々(中には美容師の免許も持っているスタッフもいるそうだ)に、髪形なども提案してもらいつつ、リラクセーションに身を任せるのはかなり心地よさそうだ。
奥様の買い物に付き合うついでに、髪を切ってリラクセーションでさっぱりするという使い方も良いし、文房具を買いに来たついでに、ふらりと立ち寄るのも良い(空きがあれば予約なしでもオッケー)。おしゃれすぎる理容店は入りにくいものだが、デパートの中にあると思えば、あまり抵抗なく入れるのも良い。クイックヘアカット(25分~)3400円というコースもあるので、本当に気軽に使えるのだ。
人気雑貨店もフルラインアップで見られる「BRIEFING」「KONCENT」
他には、なかなかフルラインアップを見ることが難しい「BRIEFING(ブリーフィング)」の直営店が入っているのも魅力的だ。やはり注目度も高いのか、日本橋高島屋新館への出店を記念して製作したバッグは予約で完売したという。人気の3Wayバッグを革バッグにリデザインした限定仕様だ。
さらに、靴のオーダーメイド、リペア、メインテナンス、もちろん既製品まで、靴に関するサービスをこのショップのみで完結できる「三陽山長」のプロショップ、個性的ながら新しい時代のオーセンティックを感じさせるメガネの「コンティニュエ」などにも注目したい。
また、5階ではなく4階だが、アッシュコンセプトの直営店「KONCENT(コンセント)」が入っている。デザインと機能が良質なアイデアで結びついた製品を次々と発表するアッシュコンセプトの新製品がいち早く手に入るショップだ。人気商品の一つ、革製のミニポーチの新色も、他店に先駆けてここで発売中。食器、文房具、カバンにゴム鉄砲まで、実用と遊び心に溢れる雑貨がそろうアッシュコンセプトの製品が一望できるのだ。ギフトショーでも話題になった、コンパクトなショルダーバッグが大きなトートバッグへと変形する「Topolopo」も、新色を含め販売されている。
(文・写真/納富廉邦)