「グランスタ」「キッチンストリート」「黒塀横丁」など、多くの飲食店街が集まる東京駅。そんな東京駅の八重洲口に、2018年6月28日、新たなグルメスポット「東京グルメゾン」が誕生した。全7店舗で、海鮮居酒屋、鉄板焼き、ハイボール専門店など、バラエティー豊かな店を集めている。
東京グルメゾンがあるのは、八重洲北口改札からほど近い商業施設「東京駅一番街」の2階。以前は別の飲食店街があったが、「似たような雰囲気の居酒屋が集まっており、店の選択肢が少なかった」と、東京グルメゾンを運営する東京ステーション開発 営業部営業課の大橋麻衣氏は話す。また、来店客の中心はシニア層だったため、客層を広げる目的でリニューアルを行ったという。
リニューアルにあたり、全7店中5店に個室を設けているのも特徴的だ。「東京駅改札内や構内に個室がある飲食店が少なく、女子会や子ども連れにも使いやすい店が必要と考えた」(大橋氏)という。また、アルコールを提供するにもかかわらず、全店が禁煙というのも珍しいだろう。
女性好みのメニューが充実
実際にフロア内を回ってみると、女性や家族連れを意識した店が多いことに気づく。
エスカレーターで昇ってすぐの場所にある「酒場 シナトラ」は、キッチンをぐるりと囲んだカウンターや壁に貼られたメニューがどことなく懐かしい印象。一見大衆的な居酒屋のようだが、メニューを見ると「クレソンの本山葵和え」「フルーツトマトのナムル」など、女性に受けが良さそうな料理が多い。
その並びにある「カジュアル鉄板 伊達」は、全7店のなかで最も落ち着いた雰囲気。鉄板の前のカウンター6席を除けば、ほぼ全てテーブル席。入り口から少し離れた場所には半個室があり、店の一番奥には最大で10人が入れる完全個室がある。1万円前後のコース料理もあり、家族連れでの食事はもちろん、接待や会食にも利用できそうだ。
全7店のなかで最も席数が多く、明るくて広い店内が印象的な「BEER HOUSE 森卯(もりう)」では、クラフトビールを豊富にそろえている。ザボンに似たかんきつを使った「弓削剽柑(ゆげひょうかん)フルーツエール」(税別1000円)はグレープフルーツのような香りが特徴で、女性から人気を集めそう。クラフトビールの飲み比べセットもあり、ワンコイン程度のつまみも充実しているので、“ちょい飲み”にも向いているだろう。
東京駅八重洲口再開発に合わせた
全店を通して感じたのは、ランチタイムのメニューの充実ぶり。夜の時間帯の価格にはばらつきがあるが、どの店も1000円台のランチを用意している。施設の開発にあたった東京ステーション開発 営業部管理課の笠井俊亮氏は「女性や子ども連れだけでなく、近隣のオフィスワーカーも狙っている」と話す。
東京駅八重洲口付近は再開発が進んでおり、2024年までに40階建て以上の複合ビルが数棟完成する予定だ。今後周辺に移転してくる企業を見越して、今のうちにリニューアルを行ったということだろう。
東京駅にある飲食店街は旅行の行き帰りに立ち寄る客を意識してか「パッと食べてパッと出る」という店が多く、じっくり落ち着いて食事できるところは少なかった。個室が多く、どの店もゆったりとしたスペースを取っている東京グルメゾンは、会社の忘年会や歓送迎会など、これまで東京駅構内では満たせなかったニーズに対応した飲食店街といえそうだ。
(文/樋口可奈子)