中国で約600店舗(近日オープン予定含む)の直営店舗を展開するライスヌードルチェーン「阿香米線(アーシャンライスヌードル)」。2018年4月26日、その海外1号店が埼玉県越谷市のイオンレイクタウンmoriにオープンした。
同チェーンが提供するのは100年以上前に中国の雲南省で誕生し、現在は屋台などでもよく食べられている「土鍋米線」という料理。土鍋で鶏肉を煮込み、米線(ライスヌードル)を入れて食べるもので、鶏肉の油が浮くので時間が経っても冷めにくいのが特徴だという。同店では独自に開発した特殊な土鍋を使って、100年以上前の食べ方を再現している。
アーシャンライスヌードルの創業者である阿香日本の何勇(カ・ユウ)会長は、「化学調味料無添加で、肉も野菜も麺も食べられるので栄養バランスが良い。さらにヘルシーでおいしく、自分のオリジナルの食べ方で楽しめる」とその魅力をアピールした。日本ではなじみのない麺料理だが、いったいどんなメニューなのだろうか。
麺料理というよりも“1人鍋”
メニューはスープの味違いで全4種類。食べたのは最もスタンダードで伝統的なスープという「米粉麺 豚鶏ダブルスープ」だ。テーブルに運ばれてきたのは、1人用の土鍋に入った熱々のスープと小皿に入った具材、そしてライスヌードル。テーブルの上で鍋のスープの中に自分で具や麺を入れて食べるので、麺料理というより“1人鍋”のようだ。
鶏の骨と豚骨をじっくり煮込んで完成させた秘伝のスープは一見しつこそうに見えたが、食べてみると意外にあっさり。香辛料の香りや味もそれほど強くない。
圧倒されたのは14種類ものトッピング。どこから手をつけていいのか迷ったが、卓上にあった「食べ方」の注意書きどおりに、まず豚肉、次にキャベツを投入。その後は好きなように入れていいとのこと。豚肉とキャベツだけで味わってみたところ、確かにおいしいのだが想像した通りの味。なぜこの麺が中国全土で人気を集めているのかは謎のままだ。
次にどの具を入れようか迷いつつ、近くに座っていた何会長のテーブルを見ると、そこには衝撃的な光景が。豚肉とキャベツが煮えたあとは、全てのトッピングと麺を一度に投入しているではないか。「だったらキッチンで、最初から入れて出してくれればいいのでは?」と謎が深まるばかりだ。とりあえず真似をして全部乗せてみた。その後、個々の具と麺、汁を椀によそっていく。あとで気づいたが、最初に具を全部投入することで具が温まってスープがほどよく冷めるので食べやすくなるようだ。
また、食べ進むうちに、トッピングが別添えなので何通りもの食べ方ができることにも気がついた。 “全部乗せ”して豪快に食べるのもあり。豚肉とキャベツ、麺だけを入れて麺料理として食べ、トッピングをおかずにするのもあり。トッピングの特製肉味噌、高菜、卓上のラー油や酢を入れれば、スープの味も変化するのでさらに飽きない。スープが冷めにくいので、食べ終わった頃には体が温まって大量の汗が出た。
目標は「日本のすし店」
具もたっぷり入っていて値段は1000円弱。都心に出店すればすぐにファンが付きそうな気がする。なぜ海外1号店として越谷を選んだのか。
何会長は、「2000年にライスヌードルの事業を始め、店舗数が400を突破してから、海外進出のオファーを多く受けるようになった。だが、1号店は日本、しかもイオンが運営するショッピングモールと決めていた」と話す。その理由はアーシャンライスヌードルの約9割がショッピングモールへの出店であること。
同チェーンの拡大は2000年以降の中国のショッピングモールの発展とぴったり重なっているという。さらに、中国国内でイオングループが展開する商業施設にも32店舗(うちイオンモール17店舗)出店している。出店を通してイオンと信頼関係を築いたことも大きいそうだ。「日本式のマネジメントのきめ細かさなど、イオンから多くのことを学んだ。今回の海外1号店進出にあたり、イオンのショッピングモールのなかでも特に越谷レイクタウンの人気が高いと聞き、ぜひ出店したいと考えた」と何会長は振り返る。
アーシャンライスヌードル創業のきっかけも日本と深く関わりがある。何会長は、中国でも急増しているすし店を見るたびに、「世界中で受け入れられているすしのような料理を中国からも発信したい」と夢見ていたという。「日本進出はその夢の第1歩。海外出店を加速させ、世界中の人にアーシャンライスヌードルを届けたい」(何会長)。2018年12月には日本で2号店をオープン予定だ。
(文/桑原恵美子)