2018年3月29日にグランドオープンが迫った、三井不動産が手がける新たな複合施設「東京ミッドタウン日比谷」(関連記事「ミッドタウン日比谷 立ち飲み充実、有隣堂の新業態も」)。地上35階、地下4階、ペントハウス1階で、地下1階~7階の商業フロアにはシネマコンプレックス「TOHOシネマズ 日比谷」を含む60店舗が出店。8階~34階がロビーを含むオフィスフロアとなる。2018年1月30日に竣工式と内覧会が行われ、外観と施設の一部がメディアに初公開された。

「東京ミッドタウン日比谷 日比谷三井タワー」(千代田区有楽町1-1-2)。地上35階、地下4階、ペントハウス1階。敷地面積は約1万700平方メートル、延床面積は約18万9000平方メートル、店舗数は60店舗。高層部は見る角度によって微妙に表情が変わるよう設計されている
「東京ミッドタウン日比谷 日比谷三井タワー」(千代田区有楽町1-1-2)。地上35階、地下4階、ペントハウス1階。敷地面積は約1万700平方メートル、延床面積は約18万9000平方メートル、店舗数は60店舗。高層部は見る角度によって微妙に表情が変わるよう設計されている

 東京ミッドタウン日比谷は2007年に閉館した三信ビルディングと2011年に閉館した日比谷三井ビルディングの跡地に建つ。2つのビルの間にあった道路を廃止して区画整備したことで、広大な敷地が確保できたという。

 施設の高さは約192メートルで、高層ビルが少ない銀座・有楽町方面から来ると、まずその高さに圧倒される。ゆるやかな曲線が重なるガラスファサードが美しく、“ダンシングタワー”というデザインコンセプトにふさわしい外観だ。それと対照的なのが日比谷通りに面した外観で、低層部はアールデコ建造物として評価が高かった三信ビルディングの石張りの壁面イメージを踏襲し、重厚感がある。

 イタリア・ローマのスペイン広場を思わせるデザインの日比谷ステップ広場を眺めながら入り口を入ると、1階から3階までが吹き抜けになったアトリウムが広がる。このアトリウムは日比谷ステップ広場との一体利用も考えているという。都心の一等地でこれだけ広いフリースペースがある商業施設は他にないだろう。

日比谷通りに面した外観の低層部は三信ビルディングの壁面イメージを踏襲しているという
日比谷通りに面した外観の低層部は三信ビルディングの壁面イメージを踏襲しているという
晴海通りから東京ミッドタウン日比谷に向かうと目に入るのが日比谷ステップ広場。約3600平方メートルの広大な円形広場で、ステップ状の階段は歩道と椅子の2つの機能を持つという
晴海通りから東京ミッドタウン日比谷に向かうと目に入るのが日比谷ステップ広場。約3600平方メートルの広大な円形広場で、ステップ状の階段は歩道と椅子の2つの機能を持つという
伝統的な劇場空間を参考に設計したというアトリウムは1 階から3階までの吹き抜け
伝統的な劇場空間を参考に設計したというアトリウムは1 階から3階までの吹き抜け

日比谷はオンとオフがシームレスなエリア

 今回の内覧会の目玉は、新産業創出を支援するビジネス連携拠点「BASE Q(ベース キュー)」だ。ベンチャー企業やNPO、大手企業の新規事業担当者やクリエーターなどが交流する場所として、最大450人を収容するホール「Q HALL」や、会員制コミュニティースペース「Q LOUNGE」などを設けた。そのほかにも、展示会などやホールでのイベント時に控室として使える遮光性と遮音性を兼ね備えたスペース「Q STUDIO」、食に関するイベントやビュッフェ形式のパーティーができるキッチンスペース「Q KITCHEN」など、さまざまなイベントに対応できるような設備をそろえる。

会員制コミュニティースペース「Q LOUNGE」は、「QからAを探索する空間」をコンセプトに設計
会員制コミュニティースペース「Q LOUNGE」は、「QからAを探索する空間」をコンセプトに設計
本格的な厨房施設があり、手元カメラによるライブ中継も可能な「Q KITCHEN」は、実演デモや試食会などのイベントに利用可能。面積は約90平方メートル
本格的な厨房施設があり、手元カメラによるライブ中継も可能な「Q KITCHEN」は、実演デモや試食会などのイベントに利用可能。面積は約90平方メートル
「BASE Q」の名称は基点を意味する「Base」と問いを意味する「Question」の頭文字を組み合わせたものだという
「BASE Q」の名称は基点を意味する「Base」と問いを意味する「Question」の頭文字を組み合わせたものだという

 なかでも注目したいのが、一般利用できるカフェスペースと時間課金制のワークスペースが一体化したカフェ「Q CAFE by Royal Garden Cafe」だ。約100席のカフェは眼下に日比谷公園を見下ろせる開放感のある空間。一方、ワークスペースは落ち着いた雰囲気で、白い壁はホワイトボードを兼ねている。ワークスペース利用者専用に回線速度の速いWi-Fiも提供予定だという。日比谷エリアでの仕事や待ち合わせにも便利そうだ。

「Q CAFE」の時間課金制ワークスペース(約50席)。全席電源付きで、2人掛けの席の壁はホワイトボードになっている
「Q CAFE」の時間課金制ワークスペース(約50席)。全席電源付きで、2人掛けの席の壁はホワイトボードになっている
一般利用できるカフェスペース(約100席)
一般利用できるカフェスペース(約100席)

 三井不動産はこれまでもベンチャー企業のサポートに力を入れてきたが、同社の菰田正信社長は「BASE Qでは大手企業の企業内起業家とベンチャー企業のマッチングに力を入れていく」と話す。日比谷エリアは丸の内や大手町といったビジネス街、官公庁がある霞が関からも至近距離で、周辺に日比谷公園や、複数の映画館、演劇施設がある。菰田社長は「(日比谷は)オンとオフがシームレスでつながっている場所。クリエーティブな仕事ができるのでは」と期待を膨らませていた。

ミッドタウン日比谷の周辺地図
ミッドタウン日比谷の周辺地図

日比谷公園一望のテラスは必見

 内覧会では高層部のオフィス専用スペースなども公開されたが、一般利用者にとって注目度が高いのはBASE Qと同じ6階にあるパークビューガーデンだろう。日比谷公園の豊かな緑が一望できる広々としたテラスで、高さはそれほどではないものの、このアングルから日比谷公園が眺められるのは新鮮。同じ階のQ CAFEを利用したあとにテラスを散策という使い方もできるだろう。「テラスには日比谷公園と同種の樹木を採用し、日比谷公園との一体化を図った」(菰田社長)という。暖かくなる4月以降はさまざまなイベントで賑わいそうだ。

都市と公園の融合を感じさせる6階のパークビューガーデン。周囲に高い建物がないので見晴らしがよい
都市と公園の融合を感じさせる6階のパークビューガーデン。周囲に高い建物がないので見晴らしがよい

 また、地下鉄日比谷駅との連絡通路でもある地下一階の日比谷アーケードは、アーチ型の天井が印象的な空間。かつてこの地にあった三信ビルディングのアーケードをイメージしたものだという。雨に濡れずにアクセスできるのが魅力的で、エスカレーターを上がってすぐの場所にはフードコートもオープン予定。今回はテナントの紹介はなかったが、開業が早くも楽しみだ。

日比谷アーケードの天井部分はかつて日比谷の象徴だった「三信ビルディング」の一部部材を活用し、モダンなデザインで再構築している
日比谷アーケードの天井部分はかつて日比谷の象徴だった「三信ビルディング」の一部部材を活用し、モダンなデザインで再構築している
地下1階の日比谷アーケードは地下鉄に直結しているほか、日比谷シャンテの地下2階にも直結。災害時には帰宅困難者の一時退避場所としても利用できるという
地下1階の日比谷アーケードは地下鉄に直結しているほか、日比谷シャンテの地下2階にも直結。災害時には帰宅困難者の一時退避場所としても利用できるという

(文/桑原恵美子、写真/高山透)

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