NTTドコモは10月17日、2018年から2019年にかけて発売する冬春モデルの新製品発表会を開催した。ハイエンドモデルが独自性に欠ける一方で、「カードケータイ」「ワンナンバーフォン」が注目された今回の発表からは、キャリアの端末戦略の重心が変わりつつある様子がうかがえる。
独自性に欠けるハイエンドモデルの品ぞろえ
冬春に向けた新製品発表が相次ぐこの時期、既にKDDI(au)が2018年10月11日に秋冬モデル5機種を発表、ソフトバンクも同日にシャープの「AQUOS zero」を独占販売することを発表した。
そして17日にはNTTドコモが新商品発表会を開催。スマートフォン7機種など合計11機種を発表した。他社が端末に関する発表会の規模を縮小する中、ドコモだけは芸能人を招くなど、新端末・新サービスのPRに力を入れている。
とはいえ、改めてラインアップを見ると、やはり寂しさを感じるのが筆者の正直なところである。新機種の目玉となるハイエンドモデルのうち、サムスン電子の「Galaxy Note9」とソニーモバイルコミュニケーションズの「Xperia XZ3」は、いずれも既にauが発表したもの。グーグルの新端末「Pixel 3/3 XL」もあるが、こちらもソフトバンクが販売するほか、グーグルも独自にSIMフリーモデルを扱う。2017年の「M」のような独自性の強いモデルはなく、目新しさに欠ける印象だ。
独自性を強く打ち出したフィーチャーフォン2機種
今回の発表会でオリジナル性の強いモデルとして注目されたのは、ハイエンドなスマートフォンではなく、シンプルなフィーチャーフォンのほうだ。ドコモは、携帯電話の新しい利用スタイルを提案する、音声通話を主体としたフィーチャーフォン2機種を発表した。
まずは「ワンナンバーフォン」。これは1つの電話番号をスマートフォンと共有する「ワンナンバーサービス」に対応した端末で、Android端末の子機として利用できる。従来の折り畳み式の携帯電話からキーの部分だけを取り出し、音声通話に特化したデザインとなっている。
「ワンナンバーサービス」に対応している端末は、これまで「Apple Watch」のみだったが、このサービスを普及させるべく、ワンナンバーフォンを開発するに至ったようだ。スマートフォンの画面を見ながら通話したいときなどに役立つという。
そしてもう1つは「カードケータイ」。こちらは文字通り、財布や名刺入れに収まるカードサイズの携帯電話。ワンナンバーフォンとは異なり、単体で使用する。
カードケータイは約47gと非常に軽量な上、ディスプレーに電子ペーパーを採用することで省電力を実現。さらに4Gのネットワークが利用可能で、VoLTEによる高音質通話やウェブアクセス、Wi-Fiテザリングも利用できる。
また月額1500円の値引きが受けられる「docomo with」が300万契約を突破するなど好調なことを受け、ドコモは対象機種のラインアップを強化してきた。2018年冬春モデルに追加された3機種のうち「Galaxy Feel 2」「らくらくスマートフォン me」はドコモのオリジナルモデルとなっている。
ハイエンドモデルは今後つまらなくなる?
ハイエンドモデルがグローバルモデル中心となり、機種数も減少傾向にある中、低価格モデルやフィーチャーフォンで独自性を打ち出すというドコモの動きは、auにも共通しているものだ。実際auは、秋冬モデルとして、オリジナルのフィーチャーフォン「INFOBAR xv」に加え、初心者向けのスマートフォン「LG it」も用意した。
ドコモが低価格モデルやフィーチャーフォンの強化に動いていることには、端末の販売動向が影響していると考えられる。
従来の端末販売における主要顧客であったハイエンドモデルの利用者は、「iPhone」を選ぶ傾向がある。加えて行政の指導によって端末の大幅値引きが難しくなり、ユーザーの買い替えサイクルも長くなっていることから、ハイエンドモデルに力を入れても収益を上げにくくなっているのだ。
一方で、シニアを中心としたフィーチャーフォン利用者のスマートフォンへの乗り換えは、期待ほど進んでいない。そうした現状では、ハイエンドモデルよりも低価格モデルやフィーチャーフォンのほうが伸びしろが大きい。またそうした端末は、ハイエンドモデルよりも開発コストが安く済むのに加え、端末の形状などで独自性を出しやすい。
しかも最近では、スマートフォンの“使い過ぎ”の問題が世界的に取り沙汰されており、機能制限付きのフィーチャーフォンが再び注目されつつある。個性的な端末が受け入れられる土壌が育ち始めたとみて、フィーチャーフォンの開発に着手する企業が増えたのだろう。
現状、iPhone人気や行政の端末値引きに対する厳しい姿勢が大きく変わることは考えにくい。それだけに、低価格モデルやフィーチャーフォンが増える一方でハイエンドモデルが減り、その独自性も失われるという傾向は、今後さらに強まりそうだ。