回線の分断には移動基地局車と可搬型基地局

 基地局が物理的に壊れてしまった場合など、よりスポット的な対策が求められるケースでは、移動基地局車や可搬型基地局などが活躍する。これらは大規模なイベントなどで目にすることが多いのだが、災害時には一時的な回線の復旧にも用いられる重要な存在だ。

 移動基地局車や可搬型基地局は、光ファイバー回線が分断されてしまった場所でも通信ができるよう、衛星回線を利用したり、近隣の基地局とマイクロ波で接続することで通信を確保する。あくまで一時的な復旧手段ではあるものの、東日本大震災のときのように本格復旧に長い時間を要するケースもあったことから、状況に応じて移動基地局車や可搬型基地局を入れ替えて利用するなど、柔軟な対応ができる体制を整えているのだ。

衛星回線を利用する、ソフトバンクの可搬型基地局。基地局自体が破損した場合はこうした基地局を活用して一時的な復旧を推し進めている。写真は2016年3月9日に実施された、ソフトバンクの「社内公募型災害時復旧要員の取り組みと災害対策装備についての説明会」より
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 またKDDIは、移動基地局車だけでなく、船上で運用できる「船舶型基地局」を保有(関連記事:海保の巡視船にケータイ基地局を搭載、「船上基地局」に取り組むKDDIの狙い)。2018年9月8日には、KDDIグループが保有するケーブルシップ「KDDIオーシャンリンク」にこれを搭載し、北海道・日高沖に停船させて海上からエリアをカバーしている。

KDDIが2014年5月24日に鹿児島県志布志市で実施した「携帯電話基地局の船上開設に関する説明会」より。船に基地局を搭載し、海からエリアをカバーするという施策は今回の北海道地震で初めて実現した
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 大規模災害時には携帯電話網だけでなく、Wi-Fiスポットが利用できることも覚えておきたい。通常は有料サービスであったり、特定キャリアの利用者専用だったりするWi-Fiスポットが、災害時に無料で開放されるのだ。

 具体的には、被災した地域で「00000JAPAN」というSSIDに接続すると、無料で通信ができるようになる。通信が暗号化されていないので、個人情報の入力などには注意する必要があるものの、携帯電話網が利用できない状況であっても情報収集ができるわけだ。

携帯電話網が利用できない場合には、無料で開放されるWi-Fiスポット「00000JAPAN」に接続するのも手だ。写真は2014年5月27日に無線LANビジネス推進連絡会が開催した「公衆無線LANの利活用に関する説明会」より
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 キャリアの災害対策の現状を知れば、停電から4時間で携帯電話がつながらなくなるといったデマに惑わされることはなくなるはずだ。

著 者

佐野 正弘(さの まさひろ)

 福島県出身、東北工業大学卒。エンジニアとしてデジタルコンテンツの開発を手がけた後、携帯電話・モバイル専門のライターに転身。現在では業界動向からカルチャーに至るまで、携帯電話に関連した幅広い分野の執筆を手がける。