ソフトバンクは、新料金プラン「ウルトラギガモンスター+(プラス)」と「ミニモンスター」を2018年9月6日から開始する。例年、新iPhoneの発表を待って新プランを発表していたソフトバンクがアップルよりも先に動いたのには、ある政治家の発言が影響しているのではないかと筆者はみている。

大手キャリアの先陣を切ってカウントフリーを採用

 ソフトバンクは2018年8月29日、9月6日から提供する新料金プラン「ウルトラギガモンスター+」と「ミニモンスター」を発表した。これらは音声通話とウェブ使用料を含む「通話基本プラン」と、高速データ通信の「データ定額プラン」で構成されているのだが、注目したいのは「ウルトラギガモンスター+」のデータ通信サービスだ。

 「ウルトラギガモンスター+」は、月当たり50GBの高速データ通信ができる現在の「ウルトラギガモンスター」に、特定のウェブサービスを利用する際の通信量をカウントしない「カウントフリー」を加えたもの。対象となるサービスは「YouTube」「AbemaTV」「TVer」「GYAO!」「huru」「LINE」「Instagram」「Facebook」の8つだ。

ソフトバンクが発表した新料金プランの1つ「ウルトラギガモンスター+」は、50GBのデータ通信容量に加え、特定のウェブサービス利用するときのデータ通信を通信量に含まない仕組みも備える。画像は2018年8月29日の“ソフトバンク”の新サービスに関する記者発表会・プレゼンテーション資料より
ソフトバンクが発表した新料金プランの1つ「ウルトラギガモンスター+」は、50GBのデータ通信容量に加え、特定のウェブサービス利用するときのデータ通信を通信量に含まない仕組みも備える。画像は2018年8月29日の“ソフトバンク”の新サービスに関する記者発表会・プレゼンテーション資料より

 ソフトバンクは2018年9月6日から2019年4月7日にかけて、「ウルトラギガモンスター+」の契約者に対し、全てのデータ通信のデータ容量を使い放題にする「ギガ使い放題キャンペーン」を実施するとのこと。さらに月額500円のオプション料金を支払えばテザリングも使い放題になるという。

ソフトバンクも分離プランにかじを切る

 「ウルトラギガモンスター+」に関して、もう1つ注目したいのが料金プランの仕組みだ。

 「ウルトラギガモンスター+」では、2年契約の月額利用料は7480円。だが、「1年おトク割」と「おうち割 光セット」を適用すれば月額5480円になる上、同プランに加入している家族がいれば、「みんな家族割+」を適用することで2人なら月額4980円、3人なら月額3980円、4人以上なら月額3480円になる。

家族が新料金プランに加入者していると対象になる「みんな家族割+」を適用すると、家族4人以上なら月額3480円で「ウルトラギガモンスター+」が利用できる。画像は2018年8月29日の“ソフトバンク”の新サービスに関する記者発表会・プレゼンテーション資料より
家族が新料金プランに加入者していると対象になる「みんな家族割+」を適用すると、家族4人以上なら月額3480円で「ウルトラギガモンスター+」が利用できる。画像は2018年8月29日の“ソフトバンク”の新サービスに関する記者発表会・プレゼンテーション資料より

 なお、ソフトバンクの今回の新プランでは、端末を24回払いの月賦で購入したときに受けられた割引サービス「月月割」が適用されない。KDDI(au)の「auピタットプラン」やNTTドコモの「docomo with」と同様の仕組みを採用したわけだ。この種のプランは、端末代と月額利用料を切り離した「分離プラン」と呼ばれるもので、従来は端末代の値引きに割り当てていた部分を、サービスの拡充に振り替えているのは言うまでもない。

 総務省はかねて、端末代の大幅な値引きは問題があるとして、キャリア(電気通信事業者)に分離プランの導入を求めていた。端末代の値引きに力を入れる傾向があったソフトバンクだが、今回の新料金プランでようやく分離プランの本格導入にかじを切り、総務省の要望に応える姿勢を見せたと言えそうだ。

iPhoneの新モデルより気になる官房長官の発言

 これまでを振り返ってみると、ソフトバンクは毎年、アップルがiPhoneの新モデルを発表した直後に新料金プランを打ち出していた。実際、2017年の「ウルトラギガモンスター」の発表も、アップルが「iPhone X」などの新モデルを発表した直後だった。

 大手キャリアの中でもiPhoneユーザーの占める比率が高いといわれているソフトバンクだけに、iPhone商戦を重視して新しい施策を導入してきたのは理解できる。にもかかわらず、今年は新iPhoneの発表前に新料金プランを発表したのはなぜか。

 筆者は、8月21日に菅義偉官房長官が「日本の携帯電話料金は4割程度引き下げる余地がある」と発言したことが大きく影響していると考える。実際、この発言を機に、総務省は情報通信審議会を開き、携帯電話料金の在り方などについての議論を開始した。

 2015年にも安倍晋三首相の携帯電話料金引き下げ発言を受けて、総務省は有識者会議を開催し、端末の実質ゼロ円販売を事実上禁止するガイドラインを提示した。今回の菅官房長官の発言からも、行政がキャリアに対して何らかの厳しい措置を採るとみられているため、ソフトバンクとしては先手を打って新料金プランを提示したのだろう。

 ここ数年、総務省と公正取引委員会は携帯電話業界に対して厳しい目を向けており、2018年に入ってからも総務省によるキャリアへの行政指導があったほか、公正取引委員会も独占禁止法の疑いでアップルを調査したことを公表した。キャリアの戦うべき相手は当面、ライバルのキャリアではなく行政ということになりそうだ。

ソフトバンクのもう1つの新料金プラン「ミニモンスター」は、1GBからの4段階制を採用した、あまりデータ通信を利用しない人向けのプランだ。画像は2018年8月29日の“ソフトバンク”の新サービスに関する記者発表会・プレゼンテーション資料より
ソフトバンクのもう1つの新料金プラン「ミニモンスター」は、1GBからの4段階制を採用した、あまりデータ通信を利用しない人向けのプランだ。画像は2018年8月29日の“ソフトバンク”の新サービスに関する記者発表会・プレゼンテーション資料より
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