例年に増して波乱が相次いた2018年の携帯電話業界。19年は通信料金や端末、ネットワークなどに大きな変化が起こりそうだが、それらが必ずしも業界にプラスに働くとは限らない。
ドコモの分離プラン導入と楽天の参入で通信料金が下がる
毎年めまぐるしいスピードで変化している携帯電話業界。年号が変わる2019年は、どのような変化が起こるのだろうか。
まず注目したいのは携帯電話の料金プランだ。18年に飛び出した菅義偉官房長官の携帯電話の通信料金値下げ発言を受ける形で、総務省などが大手キャリア(電気通信事業者)に対し通信料金と端末代金を切り分ける「分離プラン」の導入を要求した。その影響が大きく出るのが19年だと考えられるからだ。
分離プランは既にKDDI(au)とソフトバンクが導入しているが、19年春には最大手のNTTドコモが、分離プランを軸とした新料金プランの提供を開始する。その内容によってはau、ソフトバンクもさらに値下げする可能性がある。
もう1つ、通信料金に影響を与えそうなのが楽天の新規参入である。楽天は、子会社の楽天モバイルネットワーク(東京・世田谷)を通じて19年10月に携帯電話サービスを提供する予定になっている。その際、大手キャリアより安価な料金でサービスを提供するとしているため、料金競争のけん引役として期待されているのだ。楽天にとって19年は正念場の年となりそうだ。
端末の新トレンドは折り畳みスマホに!?
2019年は、ディスプレーを折り畳める端末が人気になるかもしれない。“折り畳みスマホ”と聞くと17年にNTTドコモが発売した2画面スマホ「M」が思い浮かぶが、Mは2枚のディスプレーを用いていたため、本体を開いたときに継ぎ目が生じていた。しかし、これから登場する折り畳みスマホは、1枚のディスプレーを折り曲げられる仕様になる。
継ぎ目のない折り畳みスマホは、サムスン電子が19年に提供するとしている。また他のスマートフォンメーカーも、同時期に同様の端末を提供するとの報道もある。登場すれば大きなインパクトを与えるのは確実で、スマートフォンの利用スタイルに一石を投じることになるだろう。
また、カメラの進化も目が離せない。18年夏にはファーウェイが「HUAWEI P20 Pro」などで3つのレンズを搭載して話題となったが、秋には4つのレンズを搭載した「Galaxy A9」をサムスン電子が発表した。19年は、レンズの数を増やして差異化を図る流れが加速しそうだ。
フロントカメラに関しても「ポストノッチ」、つまりディスプレー上部の切り欠きを可能な限り減らす取り組みが進んでいる。18年は、カメラを本体に収納することでノッチをなくした「Find X」をオッポがリリースしたが、19年は“穴”、つまりフロントカメラのレンズ部分だけをくり抜くことで、ノッチをなくしたスマートフォンが登場するのは確実と言っていい。
5G普及の一方で気になる政治の影響
2019年は、次世代モバイル通信規格である「5G」の普及が本格化すると考えられている。5Gは18年から米国で商用サービスが始まっているが、19年には韓国や中国などでも5Gのサービスが開始されるのだ。
もっとも日本では、東京五輪に合わせる形で20年の商用サービス開始を予定していることから、19年中は大きな影響はないだろう。とはいえ、19年9月に実施されるラグビーのワールドカップで5Gの試験サービスが提供される見込みとなっており、注目度が高まるのは間違いない。
その一方で懸念されるのが政治の影響だ。
18年末、日本政府はファーウェイや中興通訊(ZTE)など中国メーカーの通信機器を、実質的に政府調達から除外する方針を示した。5Gの電波免許割り当てに際しては同様の条件が設けられたため、キャリア各社は5Gのネットワーク構築に関して、中国メーカーの通信機器を採用しなくなる可能性が出てきたのだ。
現状、キャリアの基地局などで使用されている通信機器は、中国メーカーの製品が高いシェアを占めている。そうした機器が利用できなくなることは、中国メーカーだけでなく、それらと共同で実証実験などを進めてきたキャリアにとっても痛手となるだろう。
携帯電話のネットワークは、5Gの普及によってコミュニケーションインフラから社会インフラに変わり、より深く生活に根ざすものになる。通信料金に加えて、通信機器にまで政治の影響が及んでいるのが筆者としてはとても気掛かりだ。