2015年11月20日、東京・千代田区のベルサール秋葉原で開催される「TRENDY EXPO TOKYO 2015」では、ウエアラブル機器の市場拡大を目指す3人のキーパーソンがセッションを行う。

 今回はそのキーパーソンの2人目として、リストバンド型活動量計の世界的ブランド「JAWBONE」を展開するAliphCom Inc. DBA Jawbone日本代表の岩崎顕悟氏をクローズアップする。

JAWBONEの活動量計「UP」シリーズのフラッグシップモデル「UP3」。実勢価格は2万7000円程度
JAWBONEの活動量計「UP」シリーズのフラッグシップモデル「UP3」。実勢価格は2万7000円程度

心臓の健康を測り、レム睡眠の質も高められる

 JAWBONEは以前、ヘッドセットやポータブルスピーカーなどで知られる米国のオーディオ機器ブランドだった。しかし、2011年にリストバンド型活動量計「JAWBONE UP」を発売してからそのイメージは一変。この市場のリーディングブランドとして世界中で製品を展開し、日本でも2013年からいち早く市場を開拓し業界をけん引している。

 UPシリーズのフラッグシップモデルは「UP3」。手首に着けていれば歩数や運動、睡眠などを計測は当然のこと、心拍数の測定にも対応することで心臓の健康をチェックすることも可能だ。

 Apple Watchをはじめ最近のウエアラブルデバイスでも、心拍数の測定に対応する製品は多い。しかし、UP3はLEDで血流を測定する一般的な光学式センサー(Apple Watchで採用)ではなく、微小な電流に対する皮膚組織の抵抗値を測定するバイオインピーダンスセンサーを採用。小型化と省電力化により、最大7日間というバッテリーの連続動作時間を実現している。

 これにより、寝ている間(安静にしている時)を含めた心拍数を一日中把握可能に。心臓の健康度合いを測れるのがメリットだ。

 充電のために手首から毎日外さなければならないApple Watchとは違い、着けっぱなしでも1週間作動し続けるリストバンド型活動量計。同製品の重要なポイントとなるのは睡眠状態の測定だ。

 JAWBONEのUP3でも、心拍数から睡眠の状態を高い精度で感知できる。睡眠の状態は「浅い眠り」「深い眠り」「レム睡眠」という3つのステージで判別されるが、特に睡眠の質に大きく関わっているのがレム睡眠。「理想としては睡眠全体の20〜25%あるといいと言われている」(岩崎氏)。このレム睡眠の量が増えれば、気分がすっきりして仕事の効率も高まるなど、生活のクオリティーを大きくアップできる可能性が高い。

 日々のストレスやライフスタイルのせいで、このレム睡眠の割合が著しく少ない人にとって、それを改善するために役立つのが専用アプリ。「寝る前にカフェインを取っていないか?」などをチェックし、レム睡眠の量が増えるようなアドバイスをしてくれる。

なぜ欧米ではリストバンド型活動量計が売れているのか

 このように、頭と体をより健康にしてくれるウエアラブル機器としてリストバンド型活動量計は欧米で普及が進んでいる。特に米国は「今年の市場規模は年間1000万台に達する可能性がある」(岩崎氏)ほどの巨大市場。またオーストラリアでも普及が著しい。

 こうした国々で普及が進む大きな理由は「医療保険の違い」だと、岩崎氏は分析する。日本と違って公的医療保険の整備が遅れている両国では、医療費が高額になるリスクは米国やオーストラリアのほうが高い。「だから消費者は健康を保つための投資を惜しまず、我々の製品を欲しがる」と岩崎氏は分析する。

 ただし日本でも医療費の問題は年々大きくなっている。また消費者の健康を保つ意識も高くなっている。「日本ではまだ男性のアーリーアダプターが購入しているガジェットだが、これからアーリーマジョリティへの認知が進んで市場が広がっていくだろう」(岩崎氏)。

岩崎 顕悟(いわさき けんご)
岩崎 顕悟(いわさき けんご)
AliphCom Inc. DBA Jawbone のGeneral Manager (日本代表) 日系音響機器メーカーに入社後、海外駐在員を経て英国でGeneral Managerとして現地法人を立ち上げ。2007年に日本へ帰国後、米国プロ用音響機器メーカーの代表取締役社長に就任し、民生用機器事業を成功・急拡大させる。2013年より現職

Apple Watchはライバルにならない。その理由は……

 先述のように、近年はApple Watchのようなスマートウオッチでもヘルスケア関連のデータが計測できるようになった。この状況を踏まえれば、JAWBONEにとっては「ライバルが増えている」と考えるのが一般的だろう。しかし、岩崎氏は「スマートウオッチが競合関係になっている印象はない」と見ている。

 岩崎氏によれば、アクティビティトラッカーは「アスリート向けのハイエンドモデル」「Apple Watchのような腕時計型端末」そして「JAWBONEのようなリストバンド型」の3カテゴリーに分類できるという。この3つの違いは「利用時間」にある。

 ハイエンドモデルは専門性の高い製品となるため計測精度こそ高いが、計測時間は数時間程度と短い。腕時計型の端末は日中利用がメインとなり、夜の睡眠の計測には対応していないケースが多い。表示機能や光学式の心拍センサーを搭載するため、バッテリー持続時間は1〜2日といったところだ。

 その一方で、JAWBONEなどのリストバンド型は、24時間の活動や心拍数、睡眠をすべてモニターできるうえに、1週間もバッテリーを持続できる点が大きな特徴。「こうした時間軸で見ると、Apple Watchはカテゴリー的にバッティングしていない」と岩崎氏は話す。

UPシリーズとしては、心拍計を省いた下位モデル「UP2」(左)やクリップ式の「UP MOVE」(右)などをラインアップ。UP2は最大10日間、UP MOVEに至っては最大6カ月間もバッテリーが持続する

日本でヒットする? そしてウエアラブル端末の未来は?

 日本と欧米とでウエアラブル機器の市場が大きく異なるのは、ユーザーの「男女比」だと岩崎氏は語る。例えば、米国やオーストラリアでは、リストバンド型活動量計のユーザーの男女比が5:5。フランスでも女性ユーザーが多い。それに対して、日本では圧倒的に男性の方が多く、女性ユーザーを開拓できていない。だがこれを裏返すと、女性の市場を開拓できれば、日本でもウエラブル端末市場が本格的に立ち上がることを意味する。

米国などで女性が多い理由を岩崎氏は、「単純な健康管理ツールとしてだけではなく、ダイエットや美容にも効果があると認知されつつあるから」と分析する
米国などで女性が多い理由を岩崎氏は、「単純な健康管理ツールとしてだけではなく、ダイエットや美容にも効果があると認知されつつあるから」と分析する

 このような状況にあって、JAWBONEは日本でどのような戦略に打って出てリストバンド型活動量計をヒットさせるのか。さらに、その先にあるウエアラブル端末の進化予想図とは?。この続きは岩崎氏が登壇する「TRENDY EXPO TOKYO 2015」のセッション(無料)で確かめてほしい。


(文/近藤 寿成=スプール)

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