2015年11月20日、東京・千代田区のベルサール秋葉原で開催される「TRENDY EXPO TOKYO 2015」では、ウエアラブル機器の市場拡大を目指す3人のキーパーソンがセッションを行う。

 今回はそのキーパーソンの1人として、入社2年目で新型スマートウオッチ「wena wrist」の開発を推進する、ソニー 新規事業創出部 wena事業準備室 統括課長の對馬哲平氏をクローズアップする。

支援額が1億円突破! 日本の力を見せつけるスマートウオッチ

 ソニーが2015年に発表した「wena wrist(ウエナ・リスト)」は、スマートウオッチの既存のイメージを覆す、アナログ腕時計らしさ満載のアイテム。実は、スマホと連動するさまざまな機能を時計のバンド部に集約する、今までにない斬新な発想が特徴。見た目こそ普通のアナログ時計だが、FeliCaを活用した「電子マネー機能」、電話やメールの着信などを知らせる「通知機能」、歩数や消費カロリーを計測する「ログ機能」が利用できる。

 本製品はクラウドファンディングで開発への支援を受け付けたところ、受け付け開始2日で、プロダクト系において国内史上最高支援額を更新。最終的には目標額の10倍となる1億円以上の支援を集めた。

 また2015年9月にドイツで開催された世界的な家電見本市「IFA 2015」では、ソニーのプレスカンファレンスで平井一夫社長が新規事業プロジェクトのひとつとして披露するや、日本のみならず世界中から注目を集めた。日本で、今最も注目されるウエアラブル機器の1つと言えるだろう。製品の詳しい解説は「ソニーが出す「スマートなアナログ腕時計」って何だ? 入社2年目の社員が開発、主要機能はバンドに内蔵」をご覧いただきたい。

ソニーの新型スマートウオッチ「wena wrist」
ソニーの新型スマートウオッチ「wena wrist」
wena wristの分解イメージ。バンドの部分の一番大きなピースに入っているのは実は基盤やバイブ、アンテナのみで、バッテリーは中間サイズの2ピースに内蔵されている。パーツを別々のピースに分散することで、1つのピースが厚くなることを防いでいるわけだ
wena wristの分解イメージ。バンドの部分の一番大きなピースに入っているのは実は基盤やバイブ、アンテナのみで、バッテリーは中間サイズの2ピースに内蔵されている。パーツを別々のピースに分散することで、1つのピースが厚くなることを防いでいるわけだ
クラウドファンディングでは1億円を突破する支援を集めた
クラウドファンディングでは1億円を突破する支援を集めた

開発担当者は25歳、大学生のときからPDA大好き

 wena wristは製品自体のインパクトもさることながら、さらなる驚きは入社2年目で25歳の對馬氏が中心となって開発していることだ。

 そもそもwena wristの構想は對馬氏が大学生の頃から温めていたもの。ソニー入社時には、入社試験で「ウエアラブルで生きていく」という決意を既に表明。入社後には有志を集めて業務外活動を開始し、社内のスタートアップ・オーディションを勝ち抜いてwenaのプロジェクトがスタートしたという経緯がある。

 手のひらサイズのモバイル機器が昔から大好きだった對馬氏は、「ガラケーが全盛だった大学1年のころに、ほぼ終息しつつあったWindows MobileやザウルスなどのPDA(Personal Digital Assistant:携帯情報端末)に熱中していた。オーバークロックまでして、何とか使えるようにしようと躍起になっていた」というなかなかのツワモノ。「使いづらかったが、カスタマイズすることで愛着もわいた。すごく楽しかった」と少年のように屈託なく笑う。

對馬 哲平(つしま てっぺい)氏 wena projectリーダー。1989年11月生まれ、大阪府出身。2014年大阪大学大学院工学研究科卒業後にソニーモバイルコミュニケーションズ(株)入社。2015年3月よりソニー(株)新規事業創出部の統括課長としてwena projectの事業開発に邁進中
對馬 哲平(つしま てっぺい)氏 wena projectリーダー。1989年11月生まれ、大阪府出身。2014年大阪大学大学院工学研究科卒業後にソニーモバイルコミュニケーションズ(株)入社。2015年3月よりソニー(株)新規事業創出部の統括課長としてwena projectの事業開発に邁進中

Google Glassを皆が着ける生活をイメージできなかった

 PDAから始まったデジタルガジェットへの偏愛ぶりは、スマートフォンを経て、より小さいウエアラブル機器へと進んでいく。ソニーが2012年に発売した「SmartWatch」も愛用し、自身でいろいろカスタマイズしていたという。

「僕はウエアラブルデバイスが大好き。俗にいうガジェットオタクですよ」と對馬氏は話すが、言葉の端々からウェアラブルに対する並々ならない愛情がうかがえる。

 ウエアラブルへの愛情が強くなりすぎ、ついには「自分が作る側になりたい」と決意した對馬氏。その際に對馬氏が感じたことは「市場にはさまざまなウエアラブル製品が登場しているが、もっと自然な形で身に着けてほしい」という思いだった。

 例えば「朝の通勤風景を見たとき、ここにいるすべての人がグーグルの眼鏡型デバイスである『Google Glass』を身に着けて生活している姿はまだイメージできない」(對馬氏)。もちろん、20年後や30年後にはそういった未来になっているかもしれないが、「少なくとも、次のステージではないのではないか」。つまり對馬氏が目指しているのはSFのようなサイバーチックな世界観の製品ではなく、現在と近未来の間を埋めるアナログ寄りの製品というわけだ。

ウエアラブルデバイスの開発ポイントは「生活の中でのちょっとした手間を減らすことにある」と語る對馬氏
ウエアラブルデバイスの開発ポイントは「生活の中でのちょっとした手間を減らすことにある」と語る對馬氏

對馬氏が考えるウエアラブルの将来像とは?

「wena wristは自分が欲しいものを作っただけ」と對馬氏は謙遜するが、彼の世界観が大きな共鳴を生んだ。クラウドファンディングでは2000人以上が合計で1億円を超える支援をし、多くの声援も寄せられている。

「日本からウエアラブル業界を変えていきたい」と語る異色の25歳は、ウエアラブルデバイスが世の中をどう変えると見ているのか。またウエアラブル製品がヒットするためのキーポイントをどう考えているのか。この続きは對馬氏が登壇する「TRENDY EXPO TOKYO 2015」のセッション(無料)で確かめてほしい。

(文/近藤 寿成=スプール)

11月20日(金)12時~13時に行われる無料セッションの概要と申し込みはこちらから

■変更履歴
本文に誤りがありました。ソニーが2012年に発売した「SmartWatch」について、「ウエアラブル機器の初代製品」と表記していましたが、この表記は誤りでした。お詫びして訂正いたします。該当箇所は修正済みです。 [2015/11/6 12:25]
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