「South by Southwest(サウス・バイ・サウスウエスト、SXSW)」は、毎年3月中旬に米国・テキサス州オースティンで開催される、音楽と映画、最新技術の複合イベント。展示会をはじめセミナー、ライブ、上映会、コンテストなど数千もの催しが行われ、80カ国以上から8万人以上もの来場者を集める。今回はそのなかでも、世界の最新技術とベンチャー企業が集まる「インタラクティブ」部門を取材。世界に打って出る日本企業の動きと、驚くようなアイデアを提示する海外の注目ベンチャーの動きを、現地からリポートする。

WeWork、オースティン・コングレス通り店のエントランス
WeWork、オースティン・コングレス通り店のエントランス

「インタビューの件、場所はWeWorkの会議室でどうだい?」――。SXSWで海外のベンチャー企業の個別取材を取り付けると、しばしばこう提案される。

 WeWorkは、ニューヨーク発のコワーキングスペースの名前だ。2010年に創業するや、瞬く間に米国の14都市にまで店舗網を拡大。今やイスラエル、イギリス、カナダ、オランダ、ドイツにも店舗を抱える、世界を代表するコワーキングスペースチェーンに成長している。

共用のラウンジスペース
共用のラウンジスペース

 契約形態にもよるが、会員は自分が普段利用している店舗に加えて、出張時などに世界のWeWorkを利用できる。今回のSXSWでも開催地・テキサス州オースティンの店舗を、多くのベンチャー企業がプレゼンやインタビュー用のスペースとして活用している。

 定期的なイベントで会員企業同士のつながりを深める取り組みを行っている他、会員のみが使えるSNSを提供しているのも特徴だ。他の業種のベンチャー企業とつながるだけでなく、WeWorkを利用しているグラフィックデザイナーやエンジニアを雇用するためのツールとしても使われている。さらに、労務管理サービスの優待、保険やジムの優待など、会員向けの優遇サービスも充実。こうした、今や他のコワーキングスペースも導入しているサービス内容の多くは、WeWorkが先駆けとなって導入してきたものだ。

共用のミーティングスペース。写真内、左奥が共用デスクのスペース
共用のミーティングスペース。写真内、左奥が共用デスクのスペース
キッチン。コーヒーは自由に飲める
キッチン。コーヒーは自由に飲める

 SXSWの“前線基地”として活躍する、オースティンのWeWork。今回はその内部の様子をお届けする。

個室のオフィスが1人で借りられる

会議室は大小さまざま
会議室は大小さまざま
内装も会議室によって変えてある
内装も会議室によって変えてある

 オースティン市街地の中心部、コングレス通りに位置するこの店舗は、大型オフィスビルの2フロアをまるまる占有する。米国南部でも起業文化の根付いた街として知られるオースティンでは、コワーキングスペースの需要は高く、WeWorkは近日中に新たな店舗を追加でオープンする予定だ。

 料金プランはさまざまなものがあるが、共用デスクのみを借りる場合は月400~750ドル。1人用のプライベートオフィス(個室)は月600ドル、3人用は月1700ドル、5人用は月3050ドルなど(オプションの備品等は含まない料金)。会員は会議室(予約制)やコピー機なども利用できる。

こちらはプライベートオフィスのスペース
こちらはプライベートオフィスのスペース
1人用から10人を超えるオフィスまで、さまざまなサイズがある
1人用から10人を超えるオフィスまで、さまざまなサイズがある
窓際のプライベートオフィス
窓際のプライベートオフィス
空いているプライベートオフィスはほとんどなかった
空いているプライベートオフィスはほとんどなかった
コピー機やベーシックな文房具は自由に使える
コピー機やベーシックな文房具は自由に使える

将来は日本にも上陸?

授乳室もある。多様な働き方を受け入れる米国の起業文化ならでは
授乳室もある。多様な働き方を受け入れる米国の起業文化ならでは

 自身もベンチャー企業であるWeWorkは、14年に投資家から3億5500万ドルもの資金を集めている。投資家の間では、UberやAirbnbなどと同様、いわゆる「シェアリングエコノミー」に関連する企業群として捉えられ、起業やノマドワーカーといったトレンドがなくとも、今後の成長余力は高いとみられている。企業価値は約50億ドルにのぼるとの見方もあるほどだ。

 直近では韓国、中国、香港への出店を表明するなど、アジアにまで勢力圏を広げる計画。将来的には日本への上陸の可能性も十分にあるだろう。

電話会議用のフォン・ブース
電話会議用のフォン・ブース

(文/有我武紘=日経トレンディ)

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