今回は、話題のグーグル製スマートフォン「Pixel 3 XL」をレビューする。OSを提供しているGoogle謹製のスマホなので、触れてみるのを楽しみにしていた。グーグルは以前、「Nexus」シリーズを日本でも販売していたが、「Pixel」シリーズは海外のみの展開で日本では買えなかったから、期待が膨らんでいたのだ。

 ラインアップは5.5インチの「Pixel 3」と6.3インチの「Pixel 3 XL」の2機種。今回は、後者を取り上げる。Pixel 3 XLにはストレージ容量が違う2モデルがあるが、64GBモデルは11万9000円(税込み)、128GBモデルは13万1000円(税込み)と、堂々たるハイエンドモデルの価格だ。

 本体サイズは幅76.7×高さ158×厚さ7.9mmで、幅77.4×高さ157.5×厚さ7.7mmのiPhone XS Maxに近い。重さはPixcel 3 XLが184g、iPhone XS Maxが208gとなっている。

「Pixel 3 XL」は6.3インチの有機ELディスプレーを搭載する
「Pixel 3 XL」は6.3インチの有機ELディスプレーを搭載する
iPhone XS Max(右)と比べてみた。サイズはほとんど同じ。ディスプレーはPixel 3 XLが6.3インチ、iPhone XS Maxが6.5インチ
iPhone XS Max(右)と比べてみた。サイズはほとんど同じ。ディスプレーはPixel 3 XLが6.3インチ、iPhone XS Maxが6.5インチ

背面の仕上げが素敵すぎる

 Pixel 3 XLのデザインで特徴的なのが背面のガラス仕上げだ。カラーは黒、白、ピンクの3色があり、僕が借りたのは「Clearly White」だ。最近のガラスボディーのスマホは、ガラスの裏面から塗装したり、金属フィルムを蒸着することでキラキラとしたミラー仕上げになっているものが多い。iPhoneも裏から色を付けた透明感のある光沢仕上げだ。これらの仕上げはとても美しいのだが、似たコンセプトの製品が多いのでちょっと見慣れた感があった。

 ところが、Pixel 3 XLは色付きのガラスを美しく磨き上げ、一部をエッチング加工にしている。部分的に擦りガラスのような仕上げだ。黒やピンクもいいが、白はまるで陶器のような印象でじっと見ていたくなる。さらっとした手触りも魅力的だ。陶器の釉薬が掛かっていない部分が少しざらついているような感触と言おうか。何度も指先で触れ、感激を味わった。

 デザインのアクセントになっている電源ボタンのグリーンには、見た瞬間にハッとした。米国のガラス食器メーカー「ファイヤーキング」の食器に使われているグリーンのようだと思ったからだ。これはなんとも素敵じゃないいか!

 一方で、ちょっと気に入らないところもある。本体の側面はアルミのフレームにコーティングを施し、背面のガラスの光沢部分と連なるようなデザインにしているのだが、僕が手にした端末はガラスと金属の組み込みの隙間が均一ではなかったのだ。左側の隙間が大きく、右側が狭い。ガラスは金属に比べると歩留まりが悪く、こういうことが起こりがちだ。だから、iPhoneは隙間が空かないようにパーツのサイズをミクロ単位で計測してマッチングさせているという。

 たまたま手にした製品の隙間が大きかっただけかもしれないし、そもそも細かなことを言い過ぎだとは承知している。だが、僕としては10万円クラスの製品なら細部までしっかり作って欲しいと思うのだ。カラーを選ぶときは、黒にしたほうが隙間のバラつきも気にならないかもしれない。

ガラスパネルの仕上げが素敵。白は陶器のような印象だ
ガラスパネルの仕上げが素敵。白は陶器のような印象だ
ツヤの有無をうまく使い分けている。写真では分かりにくいが、本体上部と側面はツヤありだ
ツヤの有無をうまく使い分けている。写真では分かりにくいが、本体上部と側面はツヤありだ
ツヤの有無をうまく使い分けている。写真では分かりにくいが、本体上部と側面はツヤありだ
ツヤの有無をうまく使い分けている。写真では分かりにくいが、本体上部と側面はツヤありだ
こちらはパネルとフレームの隙間がほとんどない
こちらはパネルとフレームの隙間がほとんどない
ところが反対側は隙間がやや大きい
ところが反対側は隙間がやや大きい

解像度でiPhone XS Maxに勝る

 ディスプレーは6.3インチの有機ELで、解像度は2960×1440ドットだ。対するiPhone XS Maxは、6.5インチで2688×1242ドット。比較すると、Pixel 3 XLのほうが緻密だ。

 色合いは有機ELらしく黒の表示が締まっていて、文字もくっきりしているし、写真も美しい。最近のスマホはカメラの画質にこだわったものが多いが、どんなにカメラの性能が良くてもスマホのディスプレーで表示することがほとんどなのだから、ディスプレーが優れている機種のほうが結果として“美しい写真”を見られることになる。僕はもう有機ELのスマホしか使う気になれない。

 もちろん有機ELによる表示がすべて美しいわけではないし、派手すぎて写真が不自然に見えることもある。それでも白バックに黒い文字の読みやすさは液晶を上回っていることは間違いない。スマホはブラウザーなどで文字を読んでいる時間が長い。そういう意味でも、有機ELのほうがいいと思っている。

 解像度ではiPhone XS Maxに勝るPixel 3 XLだが、輝度は負けていると感じた。もちろん、常に最大輝度で使うわけではないのだが、明るい屋外ではiPhone XS Maxのほうが見やすいだろう。

 それからPixel 3 XLはノッチ(切り欠き)深いのだが、これは全く気にならない。確かに美しくないが、ノッチをなくすために帯のように全てつぶしてしまうよりは表示領域が広いほうがありがたいからだ。そう考えると、Pixel 3 XLではノッチよりも画面下部のフチのほうが残念に感じた。

左がPixel 3 XL、右がiPhone XS Max。Pixel 3 XLのほうが解像度で勝っているが、画面下のフチが気になる
左がPixel 3 XL、右がiPhone XS Max。Pixel 3 XLのほうが解像度で勝っているが、画面下のフチが気になる
斜めから見たときに、いずれも表示がくっきりしている
斜めから見たときに、いずれも表示がくっきりしている

専用のスタンドでワイヤレス充電

 「Pixel Stand」は、Pixel 3シリーズ用のワイヤレス充電スタンドだ。スマホを平置きするのではなく、立てかけるので、位置が決まりやすく、ずれにくい。専用のアプリで充電中にスライドショーを画面に表示したり、Googleアシスタントに話しかけて操作したりすることもできる。

 アップル製のiPhone用充電パッドがいつまでたっても発売されないだけに、純正スタンドがあるのはうれしい。デザインもシンプルで製品の出来は良い。

専用のワイヤレス充電パッド「Pixel Stand」で充電中
専用のワイヤレス充電パッド「Pixel Stand」で充電中
Googleアシスタントに話しかけてニュースを音声で聞くなどの操作ができる。スマートスピーカーのような使い方だ
Googleアシスタントに話しかけてニュースを音声で聞くなどの操作ができる。スマートスピーカーのような使い方だ

性能は文句なしでバッテリーも保つ

 プロセッサーはSnapdragon 845で、現時点では最速だ。メモリーは4GB。ベンチマークのスコアは圧倒的だし、ブラウザーで新しいページを開くだけでもレスポンスの良さが体感できる。

 気になるのはストレージが64GBか128GBしか選べないこと。microSDカードで増設できないので、動画を大量に保存したり、4Kビデオを撮ったりすると足りなくなる。Pixelシリーズのユーザーは、Googleフォトに元の画質で無制限に静止画・動画を保存できる無料のサービスが付いているのだが、クラウドにアップしたデータを視聴するには通信料がかかるからデータは手元に置いておきたいという人にとっては物足りないと言わざるを得ない。iPhone XS Maxなら512GBも選べるのだ。

 バッテリーは3430mAhで十分な容量。18Wで急速充電できる充電器とUSB Type-Cケーブルが付属するので、何も買い足すことなく急速充電ができる。

ベンチマークのスコアが優れている
ベンチマークのスコアが優れている

カメラの性能に大満足

 最近では、デュアルカメラ(デュアルレンズ)やトリプルカメラなど複数のカメラを搭載することがトレンドになっている。新製品ではシングルカメラのほうが少ないくらいだ。こうなると「複数のカメラを使っているほうがシングルカメラより美しい写真が撮れるのでは」と思ってしまうが、Pixel 3 XLを使うとそんな思い込みは払しょくされる。iPhone XS Maxと画質を比べてみたが引き分けといった印象だ。背景をぼかした「ポートレート」モードもきれいに撮れた。

 難点を挙げるなら、一見してカメラが1個だと「古いスマホを使っている」と周囲に思われかねないところだ。Pixel 3を知っているガジェット好きはそう思わないだろうが、一般のユーザーにはAndroidスマホをよく知らず、「iPhone」と「それ以外」くらいにしか思っていない人もいる。

Google レンズに舌を巻く

 Pixel 3 XLでは、商品などにカメラを向けることでその商品を検索できる「Googleレンズ」が搭載されていた。Googleレンズはアプリとして既に提供されているのだが、日本語には現時点で未対応だ。Pixel 3シリーズの発売に合わせて日本語化されるようなので、いずれ他のスマホでも使えるようになる。Pixel 3 XLで使えたので試してみた。

 これが信じられないほど楽しい。すべてを完璧に認識できるわけではないのだが、商品名が表示されているものは概ね検索でヒットする。ミネラルウォーターを買おうと思って認識させたら異物混入のニュースが出てきて、思わず買うのをためらって笑ってしまうこともあったが、とにかく認識率には舌を巻いた。

 面白いのは、自分で名前すら分からない物を認識させても商品を探せることだ。手元にあった用途不明のテープを認識させたら、同じカテゴリの商品が見つかった。また、温度で結晶が変化するオブジェも見つかった。

 グーグルが素晴らしいのは、Googleマップをはじめとする極めて便利なアプリを他社やiOSにさえ無料で開放していることだ。GoogleレンズもPixel 3シリーズだけの機能ではなくなると思うが、とにかく楽しいので、ぜひ使いたいと思っている。

商品名が表記されているものは当然のように正解する
商品名が表記されているものは当然のように正解する
用途不明のテープも検索できた
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名前を知らないオブジェも大正解
名前を知らないオブジェも大正解
植物の名前も分かってただただ圧倒された
植物の名前も分かってただただ圧倒された
■変更履歴
記事タイトルを「高性能で長く使えるPixel 3 XL iPhoneに劣るのは細部の仕上げ」から、「GoogleのPixel 3 XLをレビュー評価 細部の仕上げはiPhoneに劣る」に修正しました。[2019/12/27 11:00]
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