“キャッチ&リリース”依存から脱却し、継続サービスへ

――そうした大型ゲームに対し、ソーシャルゲームは少ないコストとスタッフで開発できるので、いろいろ実験できる市場なのではありませんか。

「ただ物を作って売るだけではなく、継続的なサービスが不可欠」とゲーム企業の変革について話す辻本氏

辻本氏:そうですね。大型タイトルをソーシャルゲーム化したのとは違った、エッジの立ったタイトルが生まれる可能性があります。資金、人数が少なくてすみ、開発期間も短く、大がかりなゲームシステムを活用する必要もありません。極端に考えると、若手クリエイターでもアイデアが面白ければチャレンジできます。

 携帯型ゲーム機も高機能になって、タイトルも大作化が進んでいる近年、ゲームソフト業界では若手に挑戦する機会をなかなか与えられませんでした。ですので、若い人たちがゼロからゲームを立案して、アイデア次第では「それ、やってみたらどう?」とチャレンジできる機会ができたのは大きなことです。

 さらに、若手社員はソーシャルゲームのある環境に既に馴染んでいる人も多いですしね。iOSの場合、App Storeにゲームを上げておけば、世界中で評価してもらえます。その書き込みを見れば、どこが評価されたのか、またダメだったのかを検証できる。そう考えるとソーシャルゲームというのは、ゲーム業界にとって人材育成の観点からも非常に有用と言えると思います。

――ソーシャルゲームでは現在、カードバトル系がはやっています。その前はロワイヤル系が人気だったりと、ゲームのライフサイクルが短い気がします。すぐに飽きられて市場が縮小する「アタリショック」のようにならないかと懸念する声もあります。

辻本氏:そういうトレンドはどの業界も同じで、ブームやヒットの波はあります。ただ、それに臆することなく、新しいものに投資を続けていかなくてはなりません。新しいコンテンツ、ゲーム、サービスを提供していくことが企業であり、これは我々の宿命です。

 人気のあるソーシャルゲームのジャンルに、手を出すこともあるでしょう。でも、それは企業として身になるものだから参入するわけで、そこで蓄積したノウハウを、他に活用するためです。

 だからソーシャルゲームについても単に収益性が高いからではなく、ソーシャルゲームでたくさんの人が遊んでいるという現象があるから取り組んでいるのです。ユーザーのニーズを常に考えながら、そこで得られたものを他のゲームに展開し、さらに多くのユーザーに支持されるゲーム作りを目指しているのです。

――ソーシャルゲームなどでは「開発原価」という考え方が変わってきていますよね。サービスを継続する費用といった、新たなコストについてはどうですか。

辻本氏:サービスを継続するコストといいますが、それができるのは「望ましいこと」じゃありませんか。

 今までは、「ある商品を2年の期間と数十億円の費用をかけて作ります、仮に、ヒットしたとしても、続編はまた2年後に…」というビジネスを繰り返してきました。しかし、ユーザーが2年間、ずっと待ち続けてくれる保証など全くありません。

 その間に別のヒット商品が出て、ユーザーがそちらに流れていくこともあります。にもかかわらず、ゲームソフトメーカーは、2年間もリスクを抱えた状態で開発投資を続けなければならなかったのです。

 しかし、例えば『モンスターハンター』を買ってくれたユーザーに対して、発売後もサービスを提供することでビジネスが継続できるなら、企業としてありがたいことです。ユーザー自身にとっても、より長くプレイを続けられるメリットがあるはずです。

 実際、『モンスターハンター』の続編はいつ出るのか、新しいモンスターを提供してください、とよく言われます。ユーザーは『モンスターハンター』で長く遊べることを望んでいるのですから、それを拒むことは企業としてナンセンスです。

 そうしたニーズに応えるため、いつ、どのようなタイミングで新しいモンスターやクエストを届けるかといったことが、これからのゲームにおける“サービス”なのです。ゲームビジネスがB to Cにより近づくなら、ただ物を作って売るだけではなく、継続的なサービスが不可欠です。ユーザーにいかに長く遊んでもらえるが、ビジネスの成功につながってくるでしょう。

 こうした継続性のあるビジネスをどう構築していくかに、企業価値が問われています。だから、ゲームソフト業界も“キャッチ&リリース”ではなく、新しいゲームビジネスの開発によって、ゲーム業界全体の価値向上が図れると思います。