――SL人吉以外にも、昨秋には宮崎―南郷間を走る、積み木の玩具のような観光列車「海幸山幸(うみさちやまさち)」をデザインした。ここで目指したものは。

水戸岡:伝統的なものと最先端の技術を組み合わせるという考え方は、海幸山幸も同じだった。海幸山幸では、照明はLED、空調システムも最新のもの、窓のガラスではUVカットをするなど、先端技術を取り入れている。そのうえで、車両の内装や外観には、地元に昔からある素材「飫肥杉(おびすぎ)」を使った。

 これまで杉は電車の家具や外装にはそぐわないと思われてきたが、飫肥杉は耐久性が高く、油や水にも強くて軽い。そこで鉄道車両の素材にも向くと感じて、車両の床や壁、家具、外装などのあらゆるものに飫肥杉を使った。

 「杉を使うと和の風合いが強くなる」と懸念する声もあったが、実際に完成してみると何てことはない。今、まさに人々が求めている和洋折衷の“懐かしくて新しい”モダンな移動空間が出来上がったと実感している。

「海幸山幸」は、宮崎―南郷間を日豊本線・日南線経由で、土日曜・祝日などに1日1往復運行する特急。2両編成で定員は51人(うち自由席9席)。指定席特急料金は大人1000円(宮崎―南郷間)。地元産の飫肥杉を外装にも張り付けているのが面白い(画像クリックで拡大)

内装にも木材を多用している。明るくて開放感のある車内だ(画像クリックで拡大)

車両最先端と最後部からも景色が楽しめる。乗車中には、スタッフによる紙芝居などがあり、親子で楽しめるサービスも多い(画像クリックで拡大)