――急成長している中国に対して、どのような対応をしていくのでしょうか。

和田氏:中国市場全体の成長に合わせて、中国ゲーム産業、企業も急成長しています。そういう意味では、中国人に享受させようという中国政府の政策は成功したわけです。我々は、10億人市場のホームグラウンドを持った企業と戦わなければならないというのが事実でしょう。

 ただし、グローバルの競争下で、中国のゲーム企業が勝ち残れるかという議論は、また別の話だと思います。中国企業の成長率を見ると脅威かもしれませんが、これは堅牢な産業障壁を作って、外資を規制した状態で、中国国内の経済成長と合わせた“伸び”なのです。売上高が急成長しているからといって、米国で勝てるか、日本で勝てるかというと、それは別の話です。

 我々にとって重要な視点は、中国企業と競争することではなく、中国市場とどう向き合うかという点にあると思います。現在、中国市場に参入しようとするならば、中国企業と提携せざるを得ないというシチュエーションにあります。ここで初めて中国企業が登場し、協業することで、新たな市場を切り開くことができると考えています。

 2010年には、中国市場に対する動きについて決着をつけたいと考えています。中国市場の特徴を捉えて、基本はオンラインゲームに関連した内容になると思います。

――中国政府が成功したように、日本政府にも期待するべきことがありますか。

和田氏:日本政府にお願いしたいのは、「コンテンツを作る能力を育てるために、日本の土壌を耕すこと」と「きちんとした外交戦略」の2つに絞られると考えています。

 コンテンツを作る能力、人材を育てないと、日本のコンテンツ産業の地盤は沈下します。ここでコンテンツを作る能力と言っているのは、ゲームを開発するという狭い話ではありません。ソフト産業というのは、単なる機能としてアプリケーションソフトを作る産業ではありません。ソフトの本質は、感性です。機能重視ではなく、感性に訴えかけるモノが商品の付加価値となっている時代なのですから。そういう脈絡で、日本のコンテンツ産業について議論してほしい。

 日本の課題は、このソフトを作る力を強化することです。携帯電話だって、単純な機能だけで買うわけではないでしょう。どんなデザインで、どんなサービスが利用できるか、というソフトの魅力が鍵となっています。機能だけで見れば、世界中の多くの製品が及第点を取っている時代。技術の下支えだけが、日本の優位ではなくなっています。日本ならではという「ソフト」を作り上げなければならないと思います。

 外交戦略については、周辺国を見据えた動きが必要になると思っています。あまり後手に回るようでは、民間企業のチャンスを奪いかねないのではないでしょうか。新しい市場を開拓できるという意味では、日本企業にとって大きな意味があります。しっかりとした戦略を期待しています。

――政策面でお手本となる国はありますか。

和田氏:ゲーム産業でいうと、カナダのケベック州ですね。モントリオールをモデル都市として、コンテンツ産業を重点的に支援する産業と位置づけました。ちょうど15~20年前のモントリオールは人口減、財政赤字に悩む都市でした。ケベック州政府は成長させる産業を絞って、振興策を実施しました。その中の一つが、コンテンツ産業だったのです。コンテンツといっても、ゲーム、映像、デザイン、ミドルウエアなど相互に事業が関係する分野(産業クラスター)全体に対して補助を与えました。

 事実、円ベースで考えたときのクリエーターのコストは、モントリオールがずば抜けて安い。1人/月で60万円ぐらい。東京だと90万円だし、北欧では100万円を超えています。ところが、モントリオールで働くクリエーターや、ソフトウエア産業のエンジニアが受け取る給料は高い。その理由は政府が補助を実施しているからです。

 企業もこれにより低コストで優秀な人材を活用できるわけです。そして企業はさらに投資に動けます。結果、一級の人材がモントリオールに集まり、そこでコミュニティが形成されるという好循環になったのです。会社が成長すれば、企業からの納税も結果的に増えます。地域ではクリエーターが家族で移り住むことで、コミュニティが強まり、子供が地域の学校にいくようになり、その地域の地盤がさらに強化される。そういう経済循環が働いているのです。

 政府ができることは本当にたくさんあります。適確な政策を実行できるリーダーシップがあれば、大きな効果が出ると思う。政治の力でできる事はたくさんあるのです。ケベック州の例もそうですが、税の優遇措置というのは、単なるお金のバラマキではありません。簡単な話、出世払いのシステムなのです。お金をばら撒くだけだったら、効果は疑わしいと思っています。

「(コンテンツ産業に対して)政府ができることは本当にたくさんあります」(画像クリックで拡大)