「ゲーム産業は産みの苦しみの中にいて、ブレイクスルーが出てきていない状態。いつ出てくるか、予断を許さない」(画像クリックで拡大)

――一方、業界全体で見た場合、2009年度はどんな年だったと思いますか。

和田氏:まだ生みの苦しみの段階ではないでしょうか。2005年以降、ビジネスモデルの過渡期に入りましたが、そこから誰も抜け出せていないと思います。

 ゲーム業界全体で見ると大きな波を受け、苦労されている企業は少なくないと思います。これは世界全体で言えることです。なかなかブレイクスルーが出ずに、苦しんでいる状態ですね。

――2010年度にそのブレイクスルーは出てくるのでしょうか。

和田氏:まだ分かりません。ただ、伏兵が出てくる可能性は常にあります。まったく新しい企業が出てくるだけではなく、大手パブリッシャーの中にある一部門が伏兵となることもあるでしょう。現に、中国のゲーム企業は非常な勢いで伸びているし、国内でも勢いよく伸びている企業もありますよね。産業のサイズは広がっているから、チャンスはどこにでもあると思います。

 新しいビジネスモデル、新しい生態系が定着するには、これから3~5年かかると思っています。現在、急成長している企業と同じビジネスモデルで、“ヨーイドン”で今日から始めても同じ結果にたどり着くかは疑問です。ビジネス環境は徐々に変化しますが、その変化を先取りした伏兵は、いつ、どこから出てくるかは予断を許さないものです。

――ネットへのシフトはこれからも続くのでしょうか。

和田氏:数年前まで家庭用ゲームビジネスの中に、ネットというものが存在していませんでした。それが要素として加わったから、変化するのは当然です。例えて言うなら、移動手段として鉄道、バスなどの陸上手段しかなかった時代に、“船”という海を移動する手段が新しく加わったというのと同じです。

 ただし、間違わないでいただきたいのは、移動手段すべてが“船”になるというわけではない点です。陸上交通に加えて、船を使った貿易が盛んになる、という意味で考えて欲しい。つまり、ネットが出てきたからといって、すべてをネットにシフトするというわけではないのです。ただ、ネットを考慮しないゲーム産業はもはやあり得ない、という不可逆的な変化なのです。

――ネットによって破壊されるものに対する危惧はありますか。例えば、現在のパッケージゲームソフトの価格帯は高いという消費者意識が出てくることがあり得そうです。

和田氏:そういう意味では、危惧はあまりありません。価格帯の変化はモノによると思っています。例えば、映画館の入場料はそれほど落ちていません。DVDはどうか、レンタルではどうか。ネットの出現によって大きく変化していないと思います。

 つまり、(ユーザーへ届ける)出口のサービスが多様化するという議論であって、すべてがネットの価値観に収れんするということはないのです。これまで映画館で映画を見ていた人が、すべてホームビデオしか見なくなるかというと違うでしょう。

 また、顧客のニーズは変化するけれども、産業としても企業としてもそれに対応して生きていくというのは十分可能です。