北林優…マニア職種もの

女性作家が描く女性鑑識係

 警察小説のなかでも、鑑識係を主人公にした作品は比較的珍しい。ましてや主人公が女性で、書き手も女流というのはかなりレアだ。

 北林優が描く「警視庁鑑識課」シリーズは、松原唯という女性鑑識係が主人公。しかも女だてらに班長を務めている警部なのだ。男社会の警察のこと、そこには当然、ねたみややひがみ、あるいはセクハラまがいの行為といった不快な言動が発生する。そんな現実にさらされながら孤軍奮闘する松原唯の姿を描いている。

 作者の北林優は、元病院勤務の薬剤師だった。薬物や化学の知識に長けているだけあって、ちょっとした手がかりから犯人に迫っていくロジックは精巧なもの。また、鑑識活動の描写はじつに緻密でリアルである。もしかしたら、実際に鑑識活動をしたことがあるか、間近で見ていた経験があるのではないだろうか。このリアリティこそ、北林の最大の特徴だろう。

 沖縄出身で、地元が舞台の作品も多い。デビュー作の『0と1の間』(角川春樹事務所)は、沖縄県警の鑑識課が舞台。また、『シュガー・ザ・キッドの兄弟』(徳間書店)も沖縄県警の刑事と少女とのドラマだ。

 女流作家だからかどうかは分からないが、警察小説でありながら文学作品のような叙情的記述が多いのも特徴といえるかもしれない。好き嫌いが分かれるところなのだが。もう1つ、あえて難点をいえば、脇役の刑事が人を殴りすぎ。上司が部下を、また部下が上司をこんなにボカボカ殴るのはちょっと現実味がない気がするのだけれど。あなたはどう思う?

北林優(きたばやし ゆう) 1955年沖縄生まれ。琉球大学物理学科中退、徳島大学薬学部卒業。沖縄県庁、沖縄県立病院薬局勤務を経て、2000年に作家デビュー。08年に52歳で急逝。