昨年、小麦の高騰によって伸び悩んだ即席麺市場に対して好調だったのが、レトルトカレー。その影響もあってか、2月には各メーカーから新機軸商品が相次いで登場。もともとレトルトカレーの主要ターゲットは主婦層。「主婦が自分一人の昼どきに“手抜き”のメニューとして利用することが多かった」と各社は声を揃える。“新感覚レトルトカレー”は、成熟したマーケットにどう切り込むのだろうか。

プロ野球選手の発言から生まれた“朝カレー”
温め不要の「手軽さ」、スパイスは控えめ

 ハウス食品は「めざめるカラダ 朝カレー」と銘打ち、これまで「昼食や夕食で食べるもの」というイメージの強かったカレーに新たな摂食シーンを提案する。CMには楽天イーグルスの田中将大選手を起用した。企画のきっかけも、あるプロ野球選手がテレビ番組で「特に試合当日は朝からカレーを食べる」と発言したことだったという。元々社内にあった「カレーを食べるシーンを拡大したい」という狙いが、これと結びついた。

 夕食用に作ったカレーを次の日の朝食で食べることはそれほど珍しいことではない。ただ、「レトルトカレーを朝に食べることは、これまであまりなかったのではないか」(ハウス食品)。朝にカレーを食べたくなるようにするには、と考えた時に、一番に挙がったのは慌ただしい時間帯でも食べられる「手軽さ」だったという。

 「めざめるカラダ 朝カレー」には、75gの袋が2つ入っている。75gは、ちょうど茶碗1杯のごはんにかけるのにぴったりの量だ。さらに、炊きたてのご飯などにそのままかけて食べることができ、電子レンジなどで温める手間がいらない。これは、「熱すぎても口に運ぶ時には冷ます手間となってしまう」という、忙しい朝の時間への配慮でもあるという。

 「温めずにそのまま食べることを推奨するカレーを販売するのは初めてだったので、ノウハウの蓄積がなかった」と、同社レトルト・低温食品部ブランドプランナーの船越一博氏。実は、レトルトカレー商品のほとんどは温めずにそのまま食べても衛生上の問題はない。だが、温めないと滑らかさが失われるなど、食感や風味の点で問題がある場合があった。

 通常使用する動物性油脂は低温では固まってしまう。そこで、「めざめるカラダ 朝カレー」では常温でも液状で滑らかな口当たりの植物性油脂を使用。また、通常のレトルトカレーはとろみをつけるためにデンプンを使用するが、デンプンは低温だと固まる傾向があるため、多くは使えない。このため、りんごペーストや食物繊維などでとろみをつけた。

 味の面でも工夫がある。「朝起きてすぐは嗅覚が一番敏感な時間帯。通常のカレーでも刺激を強く感じてしまうので、スパイスなどは控えめ。刺激を抑えながらもカレーらしさは残すというバランスに気を使った」(船越氏)。具を小さくしたのも、食べやすさを重視したためだ。

 同販売企画マネージャーの榎本宏氏は、「短期的に成果を出すことが求められるなか、流通関係者からは『新しいところに切り込んでいる』という評価をいただいている」と話す。初年度は10億円を見込む。

 「レトルトカレー市場は成熟したマーケットといわれているが、『朝』というカテゴリを設けることで、新たなシーンを提案できれば」(榎本氏)。これまで低価格の「カリー屋カレー」シリーズ(120円)や女性をメインターゲットとした「カレーマルシェ」(275円)など、ターゲットを絞った商品で売り上げを伸ばしてきた同社の新たな挑戦といえる商品だ。

(左)「めざめるカラダ 朝カレー」<野菜キーマ中辛>(75g×2、オープン価格。予想実売価格198円)。(右)「めざめるカラダ 朝カレー」<中辛>(75g×2、オープン価格。予想実売価格198円)(画像クリックで拡大)