ずっと出演しているからできる役作り

――川原さんは、相棒が始まった当初の土曜ワイド劇場枠のころからずっと出てますよね。

 そうですね。初期の伊丹は本当にひどい男ですよ。いっさい笑顔もないし、荒っぽいんですよね。人間味が薄いっていうか、特命係への見下し方が半端じゃない。

――ところが、出世魚のように連続ものになっちゃった。

 2時間で終わるスペシャルものは脚本から読み取れるものを基に役作りができます。けど、1時間枠のドラマになってからは、作家、演出家、監督によって、伊丹刑事の役割のニュアンスがちょっと違う。だから、自分でこうだと決められないんです。

 もちろん伊丹の役割については僕自身が一番理解しているつもりです。ただ自分でこういう役だと決めたところで、脚本が変わればそれに合わせなくてはいけない。だから伊丹のイメージはいつもニュートラルにしておきます。そこから少しずつ足したり引いたりといった作業をして今に至っている感じですね。

 例えば場合によっては、伊丹が意図なく消極的に書かれてる場合があるんですよ。同じ捜査一課で一番年上の三浦信輔 (大谷亮介)が先にバッと出て行って仕切っちゃったり。作家さんの気まぐれなのか「伊丹はどうした?」と思うときもあるんですよ。

 するとそこで引くかっていうと、台詞がなくても伊丹として前に出た役作りはできるんです。逆に今まで作ってきたものがありますから。

――役者さんとしてはかなり難しい役回り?

 いや、そうでもないですが…。単発の1時間番組で「相棒」の脚本をポンと渡されたら、これはなかなか肉付けが難しいですね。ヒントが少なすぎますから。出ているシーンが8シーンなら、8シーンの中で人格を作らなくてはならないので難しい。「相棒」の場合は長く積み重ねてきているので、そこは大丈夫なんです。

――「相棒」の現場を職場としてみたらどうでしょう?

 座組っていうか、言ってしまえば若干劇団に近いというか。会社でも居心地のいい職場とよくない職場があるでしょうけど、「相棒」は居心地いいですね。

 スタッフも含めてほとんど固定メンバーで続けていますから、撮影現場ではあまり出すぎず引っ込みすぎずという距離感をいつも考えるようにしています。

――川原さんは元々舞台中心で仕事をされてきました。テレビ出演と舞台出演をこなす仕事のバランスは今どんな感じですか。

 バランス悪いですよ。「相棒」をやってるときに結構オファーがあるんですよ。で、スケジュール的に無理なので全部断っちゃう。4月に出演する舞台「容疑者Xの献身」はタイミングがよかったのですが、これまでなら3月末から7月いっぱいっていう「相棒」オフ期にいい感じの仕事が来なかったんです。「相棒」の仕事が1年のうち7カ月。今年は舞台が1本入ってますから、年内はあらかた埋まっちゃってるんですね。いや、あくまで次のシーズンもあるとしたら、の話ですけどね(笑)。

(文/折野冬葱、深川岳志、写真/稲垣純也)