調理する過程に意義を感じる消費者

 1996年、日清食品から「日清のラーメン屋さん」シリーズが発売された。久々のスープ別添袋麺で、コンビニではなく主にスーパーに置き、家族の食を考える主婦層を狙った商品だった。その狙いは当たり、5食入りパックでもよく売れているロングセラー商品へと育っている。また、東洋水産からは「昔ながらの中華そば」が発売され、後にカップ麺にもなって同じくロングセラーになっている。2008年、エースコックはワンタンメンの3個入りパックを発売。「家族構成や食事の時間によって、5つでは多い、余る、足りない、という層がけっこうある」(松山さん)。この3個パックはよく売れているという。味など商品本来の進化は来るところまで来ている袋麺だが、商品数、有名店など、売るための戦略はますます緻密になりつつあるようだ。

日清食品「日清のラーメン屋さん」。発売時のパッケージ(画像クリックで拡大)

現行の日清食品「日清のラーメン屋さん」。5食入りパックもよく売れている(画像クリックで拡大)

東洋水産「昔ながらの中華そば」(画像クリックで拡大)

 このように歴史を振り返っても、カップ麺の登場以来、袋麺の商品展開数が減少してきていることはよく分かる。だが、袋麺自体の売り上げが減少しているわけではないようだ。「当社に関して言えば袋麺の売れ行きはむしろ好調」(サンヨー食品マーケティング部・山田健洋課長)との言葉も聞かれた。では、今、袋麺を下支えするものは何なのか。相次ぐ値上げでカップ麺に割高感が高まっていることから、カップ麺を離れ袋麺を買う層が増えていることもあるだろう。だが、実際に店頭の動向をつぶさに観察しているサンヨー食品・山田課長によると、価格以上に大きい要因は「消費者が感じている食の不安」らしい。相次ぐ食の問題から、できるだけ自分で調理して食べたいと考える消費者が増えているというのだ。「特に家族に食べさせる料理として作る場合、そのまま作って出すのではなく、野菜を入れて食べさせたいと思う母親は増えている」(山田健洋課長)。カップ麺と違い、調理する過程にこそ、袋麺の意義があるというわけだ。元々、手間要らずのインスタント商品として生まれた袋麺だが、カップ麺の誕生により、その役割は少し変わりつつあるようだ。

(文/折野冬葱)