縮小する文芸市場で、なぜ今春創刊ラッシュ?

 老舗文芸誌「オール讀物」(文藝春秋)の印刷部数は現在7万3000部強だ(JMPAマガジンデータより)。これに対し新参の「Story Seller」が5万部とは強気ともとれるが、もちろん新潮社に勝算がないわけでもない。

 例えば同社が2006年に創刊した「yom yom」は、vol.1からvol.5まですべて増刷がかかっており、累計で37万4000部を発行している。2008年2月に出たvol.6は初刷7万8000部でスタートし、発売初日に2万2000部の増刷が決まって10万部の大台に乗った。この実績が、“斜陽”の文芸誌でも作り方、打ち出し方によってはちゃんと売れるという証になり、「Story Seller」創刊の追い風になった。

 「Story Seller」は新井さんの一人編集だ。つまりそこに集められた7人の作家は全員、新井さんのセレクト。新井さんが面白いと思う作家たちである。そうして編集者個人のカラーを全面的に出すのがこの雑誌の狙いだった。なぜなら「この中の誰か一人の作品を目当てに買ってくれた人なら、私が面白いと思う他の作家さんも好きになってくれる可能性は高いと考えたから」だ。

 編集者が面白いと思う作品を集めて雑誌を編み、手に取った読者がさまざまな作家の作品に出会ってその中からまた新たに好きな作家を見つける。これこそ単行本や文庫にはない雑誌ならではの楽しみであり、文芸誌の原点と言っていいかもしれない。

 作家たちがさまざまなカテゴリーを軽々と越境しているように、文芸誌の作り手たちも既存の文学の枠を離れて個性を発揮し始めた。それが、今春の創刊ラッシュと言えないだろうか。

絞り込んだ「一人編集」が、文芸の読者を広げる?

 このようにして生み出された雑誌を前にすれば、読者の側も好みがはっきり分かれる。好きな人は好きだし、興味のない人は完全スルーという具合で、あっちもこっちもという重複はほとんどない。

 この流れでいくと、作り手のセンスと読者の好みを反映して文芸誌はどんどん細分化していくことになる。しかしだからといって必ずしも切り分けたパイが小さくなっていくとは限らない。

 作り手が楽しみながら作ったものなら、きっと読者も読んでいて楽しいはず。こういう楽しいことは自己増殖していくものだ。それはつまりマーケットの裾野が広がるということである。文芸誌が雑誌作りの原点に帰ることで、広く文芸全体への関心が呼び起こされる可能性はおおいにあるのだ。

 さてあなたも、物語を読む楽しさと好きな作家を発見する面白さを味わってみたくはないか? 以下のデータを見てほしい。書店には文芸誌と名のつくものがこんなにあるのだ。きっと1誌ぐらいは好みの雑誌が見つかるにちがいない。

キャッチコピー 最新号(月刊誌は6月号)に執筆している人、
登場している人
公式サイトの特徴
◆ニューウェーブ文芸誌
パンドラ
講談社
思春期の自意識を生きるシンフォニー・マガジン ラノベ大御所:ともひ、西尾維新ほか。ミステリ:北山猛邦、島田荘司(インタビュー)ほか。コミック:衿沢世衣子、シオミヤイルカ、小林エイ、やまさきもへじほか。ノンフィクション:大友克洋(イラスト&エッセイ)ほか。映像自習テキスト:松江哲明、河田拓也。音楽自習テキスト:阿部真大。その他、創作に役に立つ読み物:流水大賞選考座談会ほか。 作家と編集者のコメントや、表紙イラストなどが少しだけ載っている。
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Story Seller(ストーリー・セラー)
新潮社
面白いお話、売ります。
読み応えは長編並、読みやすさは短編並
誰のから読み始めても他のも読まずにいられなくなる読み切り中編小説群:伊坂幸太郎、近藤史恵、有川浩、佐藤友哉、本多孝好、道尾秀介、米澤穂信。 目次のみ。
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monkey business
ヴィレッジブックス
柴田元幸責任編集 ちょっとお茶目なスーパー編集長はどこにでも登場:柴田元幸(対談*小川洋子、エッセイ、翻訳小説3本)。世界が広がる詩:田口犬男。巧さ抜群のエッセイ陣:ジェームズ・T・ファレル(アメリカ)、川上弘美(連載)、岸本佐知子(連載)、川上未映子。旧いもの新しいもの取り混ぜて翻訳小説:シェリー・ジャクソン(アメリカ)、バリー・ユアグロー(アメリカ)、ハーマン・メルヴィル(アメリカ)、ダニイル・ハルムス(ロシア)。今だから読みたい小説:小野正嗣(連載)、尾崎翠(抄)、古川日出男。とっておきの文芸コミック:西岡兄妹(フランツ・カフカ)。 ウェブオンリーの翻訳エッセイ連載(「ハルムスの世界」:ダニイル・ハルムス<ロシア人作家>)、柴田編集長の編集後記付録、クラシックコミックスいずれも月1回更新でそれほど頻度は高くない。
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真夜中
リトルモア
言葉は真夜中の星、
写真は光、
絵はともしび、
デザインは夢。
コラムには意外な人も、ナルホドな人も登場: 古川日出男、内田也哉子、松尾スズキ、高野文子、市川実和子、大竹昭子など。 ぞっとするほど美しいフォト&エッセイ: 瀧本幹也&堀江敏幸。連載小説陣: いしいしんじ、保坂和志、秦早穂子、伊佐山ひろ子、小野正嗣、東直子。 フィナーレは鮮やかな絵画連作:高木紗恵子(イラスト)。 作家一覧のみ。
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メフィスト
講談社
特になし 読み切り:田中芳樹、西尾維新、山口雅也、歌野晶午ほか。豪華な連載陣:竹本健治、篠田真由美、佐藤友哉、巽昌章、道尾秀介、恩田陸、綾辻行人、有栖川有栖、法月綸太郎、霞流一、喜国雅彦、衿沢世衣子。 懸賞つきパズル小説『織姫パズルブレイク』(矢野龍王)、立ち読みコーナー、あとがきのあとがき(篠田節子、高里椎奈)、占い、谷川流のエッセイ。
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ウフ.
マガジンハウス
読んで美味しいリトルマガジン。 こんな人も書いてる連載エッセイ:宮崎あおい、三砂ちづる、柴崎友香、斎藤美奈子ほか。当代人気作家の連載・連作・読み切り小説:唯川恵(連作)、井上荒野(連載)、吉田篤弘(連載)、夏石鈴子(読み切り)ほか。こんな人も書評を:長嶋有ほか。漫画もあるのだ:玖保キリコ。 10ページぐらい「立ち読み」できる。
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本が好き!
光文社
特になし 連載小説:小池昌代、片山恭一(最終回)、佐藤正午、盛田隆二、坂木司。エッセイ:福岡伸一、槇村さとるほか。小説論で取り上げている作品:谷崎潤一郎『痴人の愛』。一風変わった誌上ヴァーチャル鼎談:松尾スズキ、室井佑月、枡野浩一。 目次のみ。
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asta*
ポプラ社
夢中が待ってる ストーリー&エッセイマガジン
ポプラ社新小説誌
出会いや喪失を日常の中に描く小説群:森見登美彦、小川糸、小路幸也、中島京子ほか。食べたり買い物したりのエッセイ:池上永一、夏石鈴子、西川美和ほか。ほっこりイラスト&エッセイ:大田垣晴子。紙工作:高野文子。ブックガイドのコマ割漫画:藤臣柊子。 目次のみ。
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yom yom
新潮社
じっくりヨムヨム、ぱらぱらヨムヨム、晴れの日も、雨の日も、楽しくヨムヨム 文庫になる前に読めちゃう小説:小野不由美、沢木耕太郎、川上弘美、角田光代、重松清、金原ひとみ、嶽本野ばら、恩田陸ほか。エッセイもヨムヨム:堀江敏幸、本谷有希子、あさのあつこほか。翻訳をヨムヨム:トルーマン・カポーティほか。 編集者からオススメの1冊(メルマガ連動)、小説検定(本誌連動)、キャラクター(yonda?くん)の壁紙ダウンロード。
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Feel Love
祥伝社
100%恋愛小説誌 リレー小説:石田衣良→佐藤江梨子→唯川恵。連載:桜井亜美。切なさいっぱい短編読み切り:豊島ミホ、小手鞠るい、三浦しをんほか。恋愛相談:ピーコ。J-WAVEとの連携企画:石田衣良、古内東子、谷村志穂(鼎談)。 なし。
●読書情報誌、文芸・読書情報混合誌
ダ・ヴィンチ
メディアファクトリー
新しくなった本とコミックの情報マガジン 巻頭に新作映画対談:大泉洋、内田けんじ。新刊旧刊取り混ぜてアノ人のオススメ本:田中麗奈、石井竜也、山瀬功治。特集はギャグマンガ『デス・メタル・シティ』:名越康文、若杉公徳、嶋田隆司。ジャンル不問の著者インタビューがごっちゃり:よしもとばなな、小川糸、小路幸也、小澤征良、東直子、矢口敦子、北方謙三、中川李枝子、松井今朝子ほか。中綴じ付録:山岸涼子。連載小説の続きはウェブで:山本幸久。 森博嗣のウェブ日記。以下は連載エッセイなど:蒼井優、さとう珠緒、竹山隆範、土屋礼央、大槻ケンヂ、ほしのゆみほか。
携帯専用コンテンツもあり(有料)。
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en-taxi
扶桑社
超世代文芸クォリティマガジン 文芸から社会時評まで評論充実:坪内祐三、すが秀実、吉田司ほか。特集はオヤジたちの憧れ「永井荷風」:福田和也、湯浅学ほか。対談・座談会も男だらけ:橋口亮輔、リリー・フランキー、島田雅彦、さだまさし、立川談春ほか。第二、第三特集:吉田拓郎、磯崎新。 目次のみ。
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ファウスト
講談社
闘うイラストーリー・ノベルスマガジン ラノベ四天王?:舞城王太郎、浦賀和宏、北山猛邦、西尾維新。新伝綺:奈須きのこ、竜騎士07、錦メガネ。ロングインタビュー:村上達朗。巻末コミック:ウエダハジメ、toi8。 ファウスト賞応募原稿への編集長コメント、本誌立ち読みコーナーなど。
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きらら
小学館
新文芸「きらら」 本誌連載小説:辻仁成、小池昌代、東直子、瀧羽麻子、吉田篤弘、野中ともそ。乙女なエッセイ連載:嶽本野ばら。書店文芸担当が最近気になっている著者にインタビュー:五十嵐貴久。 ウェブ限定の小説連載:小池昌代、東直子、瀧羽麻子、中村佑介ほか。
携帯メルマガで携帯メール小説大賞の選考過程を速報。
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papyrus
幻冬舎
まったく新しい“ペーパー・カルチャー・エンタテインメント”の誕生 グラビアとインタビューで特集:ゆず。作家たちのナマ手紙:島本理生、せきしろ、前田司郎。映画公開記念対談:是枝裕和、阿部寛。インタビューやらなにやらの追っかけフィーチャー:須藤元気、Cocco、道尾秀介、木梨憲武ほか。こんな人のエッセイも:中谷美紀、北野武、銀色夏生ほか。連載小説:東野圭吾ほか。旬の読み切り小説:川上未映子、大崎善生ほか。 目次、プレゼント付き読者アンケート。
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