(監督:トッド・ヘインズ/出演:クリスチャン・ベールほか/配給:ハピネット、デスペラード/4月26日(土)よりシネマライズ、シネカノン有楽町2丁目他全国ロードショー/公式サイト:http://www.imnotthere.jp/) (C) 2007 VIP Medienfonds 4 GmbH & Co.KG/All photos - Jonathan Wenk(画像クリックで拡大)

 半世紀近くにわたって第一線で活躍を続け、現在もロックやポピュラー音楽に多大な影響を与え続けているボブ・ディラン。この偉大なアーティストの音楽と半生に発想を得たのが、『アイム・ノット・ゼア』である。

 ドキュメンタリーを除けば、ディランが公認し、製作を認めた初めての映画だ。とはいえ、これはいわゆる伝記ドラマではない。むしろ“ディランの映画”という固定観念を捨てて見るべきかもしれない。

 本作には6人のボブ・ディランの分身というべきキャラクターが登場する。異端審問を受ける19世紀の詩人アルチュール・ランボー、ギターケースを抱えて貨物列車で放浪する11歳の黒人少年ウディ・ガスリー(*1)、社会的なプロテスト・ソングで一世を風靡(ふうび)するも突然、謎の失踪を遂げたシンガーソングライター、その伝記映画に主演してスターになると同時に結婚生活が破綻してしまう俳優、フォーク・ソングを捨ててバンド・サウンドに転向し、ファンやマスコミに非難されるミュージシャン、開拓時代の米国西部で宿敵の権力者に立ち向かう隠遁者ビリー・ザ・キッド。彼らの主張や、それぞれがたどる運命が交錯しながら、映画は進行する。