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―映画『アイム・ノット・ゼア』では、記者会見で質問に答えるシーンがあって、ディランは相手をはぐらかすような答え方をしてますよね。これは『ノー・ディレクション・ホーム』や『ドント・ルック・バック』などのドキュメンタリーにもまったく同じシーンが出てくるので、本当の話ばかりなんですね。

みうら 昔の伝記には「よくマスコミ陣を煙に巻いた」と書かれてあった。煙に巻いてないんだよね、一生懸命しゃべってるんだよ今見ると。記者の質問もひどいもん。彼らは、ディランをつぶそうと思ってしゃべってる。それに対していちいち怒ったりしてるのは、すごく正直に答えてると思ったけどね。「煙に巻いてニヒルな感じで」って昔の伝記には書いてあった。でも動いたところ(映像)を見たことなかったからね。映画『ドント・ルック・バック』見たときに、正直だなと思った。あんなこと言われたら、本当だったら立ち去ってしまうかもしれないことを記者に質問されてんだよね。

―取材する立場からすると、何か引き出したいとか言わせたいっていうのは絶対あるんですよね。

みうら 答えがインタビュアーにあって、それを言わせたい感じにはめられたくないボブ・ディランが必死で答えてる感じはしたけどね。

―「今プロテストソングをちゃんと歌うプロテスト歌手は何人くらいいますか?」なんて質問されていて、そんなの答えようがないですよね。

みうら でもそれをユーモアを加えながらちゃんと答えてるボブ・ディランって正直だと思ったけどね。

「ディラン」は「ちくわ」なのかもしれない

―ディランはザ・バンドと一緒にいろんなアルバムを出していますね。

みうら ザ・バンドとやってるライブ盤があるんだけど、邦題が『偉大なる復活』とかって、一回倒れた人が復活するようなタイトルにしてある。原題は“Before The Flood”っていうアルバムでまったく意味が違う。でもこれだとアルバムは売れないって考えたレコード会社がそうしたんでしょうね。

―確かにそうですね。作り上げたっていう。

みうら 原題が“New Morning”ってのも『新しい夜明け』って書くと、何かディランが変わったってことにしたかったんだろうなと思いますけど。けど一貫してるんですよね。昔からやってることなんですよ。

―なるほど。じゃあディランは変わらないと。

みうら 世の中はディランは変わるってことにしたいけど、実はディランは変わっていないってことがすごいんだけどね。

―なるほど。逆なんですね。

みうら ディランは、いろんなものに影響を受けてる感じはあるし、すごく正直な人ですからね。でも最近思うのは、ディランは「ちくわ」みたいに、中はないのかもしれない。空洞なのかもしれない。そこにいろんなものが詰まるようになってるのかもしれないなって思うようになりました。