―そう考えてみると、ディランはいろんなことしているんですね。

みうら 普通に見えてるけど、意外と誰もしたことないようなことをたくさんやっているんです。それに早くから気づいたジョン・レノンが、ビビッてどんどん影響を受けていったっていうのは分かります。ビートルズが全米で1位になっていた頃、ディランは1位にはなったことなかったけど、ビートルズができなかったことをやっていた。だからジョンは怖かったんだと思うけどね。ジョン・レノンとボブ・ディランがロンドンのタクシーの中でしゃべってるフィルムがあるんだけど、それはブートレッグで出回ってて。ジョンがまだマッシュルームカットの頃。ディランは完全にクスリをキメてて。もう全然オーラが違うんですよ。ディランがブワーッてしゃべりまくってて、やっぱりすごいオーラが出てる人だったんですよね。

―ジョン・レノンはディランのすごいファンだったと、何かの本で読んだ記憶があります。

みうら ジョン・レノンの曲で「ワーキング・クラス・ヒーロー(労働階級の英雄)」(『ジョンの魂』収録)っていうのがあるけど、これはもろボブ・ディランの歌い方を真似してたし、後にジョン・レノンが『ゴッド(神)』(これも『ジョンの魂』収録)っていう歌でも「僕は神も信じない。ジンマーマン(ディランの本名)を信じない」って歌ってる。それほどディランのこと思ってたっていうことですからね。

―英語の詩を理解するにはどうされてるんですか?

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みうら それは片桐ユズルさんとかが訳されたやつを読んでました。でも日本語の訳をした人って抜群に上手い人。『風に吹かれて』のタイトルもそうだし、『時代は変わる』も後の『血の轍』も抜群に上手いですよね。それでも歌詞の内容なんて意味分かんない。でも、分からないくても好きだっていうのはすごいことですよね。日本語の歌って、分かっても好きじゃない曲がいっぱいあるのに、ディランは分かんないけど好き。声が楽器みたいな状態だったから。

 後に井上陽水さんとしゃべってて、陽水さんもディランがすごい好きで。「アイ・ウォンチュー」って曲を聴いたときに思ったっていうんだけど、ディランの詩って面白いなって思うのは、夢を見たような話がずっと続いてて、くず屋が円を描いてナントカをするみたいなわけ分かんない話ずっとあって、サビの部分だけ「アイ・ウォンチュー」って言うんだよねって。誰でもが分かるようなサビが来て、そこがぐっと目立つように作られてあると思うんですよ。ディランの歌ですごく印象に残ってるのはサビの部分で、あとの部分はサビに来るためのものかもしれない。だから、歌がよくできてるんですよね。全然英語が分からない人間としてもぐっとくるのがやっぱりサビの部分で、すごくいいですよね。