第2部 出版2強に聞く「映像化の舞台裏」

 原作本から大量のテレビ作品がここまで作られていく背景には、出版社とテレビ局の連動なくしてはありえない。原作提供に積極的な小学館と講談社に映像化の舞台裏について聞いた。

 原作提供では、『世界の中心で、愛をさけぶ』(片山恭一)などの純愛路線で成功してきた小学館。コミックス原作でも、映画『三丁目の夕日』(西岸良平)、実写ドラマの『Dr.コトー診療所』(山田貴敏)、『医龍』(原案/永井明、医療監修/吉沼美恵、作画/乃木坂太郎)など数々の話題作を提供してきた。原作提供に対して、意欲的に仕掛ける姿勢は、この秋のドラマ『モップガール』にもはっきりみてとれる。『モップガール』の原作者である加藤実秋は、2003年に『インディゴの夜』で第10回創元推理短編賞を受賞してデビューした若手作家。実力はあるが、知名度的にはまだこれからという作家の作品がドラマ化された背景には、出版社と制作会社(東宝)、芸能プロダクション、スターダストプロモーションの関連会社、スターダストピクチャーズ(以下SDP)のコラボレーションがあった。

小学館

▲東宝やSDPと組んで、小学館が作り上げた加藤実秋著書の『モップガール』

 小学館出版局文芸編集長の菅原朝也氏によると、そもそもの企画は、SDPと小学館が「シリーズ化できる女性キャラ主役のエンタテインメント作品」を共同開発しようという話からはじまったという。

 これまでにも小学館は『世界の中心で、愛をさけぶ』や『いま、会いにゆきます』『県庁の星』といった映画作品で、東宝やSDPと組んできた。2005年には、東宝を通して正式に提案があり、小学館側が原作の開発に入った。

 設定として「群像劇」という要素を加え、小学館としてもおもしろい作品にしたいということで、白羽の矢が立ったのが、加藤実秋。『インディゴの夜』は一風かわったホストクラブを舞台に、個性的な登場人物が事件を解決する「チャーミングな作品」(創元推理短編賞の選考委員の、綾辻行人の言葉)で、「群像劇でキャラの魅力」を描ける実力がある、と判断されたのだ。

 作品が小学館の小説雑誌「きらら」で連載されていく中、2006年には東宝がテレビ朝日にこの企画を提案し、2007年に回答がきて今回のドラマ化が実現した。もちろん、主演の北川景子はスターダストプロモーション所属である。

 小学館は、これまでの映像化の経験から、ドラマ化にあたり設定やキャラの変更も、折り込み済み。お互いにおもしろいものを作ることができれば、相乗効果につながるとして、原作からの改変にも柔軟に対応している。大御所作家に依頼しなかったのは、そういったことへの配慮もあるのだという。

 「実感として、ただ原作を提供しただけでは、成功はむずかしい。売れている原作だから映像化しようという“便乗”ではダメ。むしろ、作品の骨格は生かすが、映像としておもしろいものを作ろうという挑戦があるほうが、良い結果につながっている。原作を提供することは、明日の読者を作ること」と、タイアップに力を注ぐ目的を語る。

 こういったコラボレーションやメディアミックス的展開は、マンガ作品では珍しくなくなったが、小説でも行われていることが分かる。通常考える原作提供とはかなりちがう流れのようにも思えるが、現在、さまざまな出版社に、メディア事業部などといった名称の部署が設けられ、コンテンツ制作に力が注がれているのだ。